僕と戦争とカラス

@atsugikoukou

第2話


「あー、なぜこんなことになってしまっのだろう。あの時、あのことをしてしまったばかりに。」と、「僕」はこの景色をただひたすらにみることしかできなかった。そう、とても高いところから。

2xxx年、ここ何百十年で世界は大きく変わってしまった。第二次世界大戦が終わり、ひとときの平和が流れていた何十年前。ひとときと言っても人間の寿命で言うととても長いものだ。今の周りの景色を見てみると、窓が割れ家は土砂崩れ似合ったかのように破壊されいる。そこらに落ちているゴミをカラスが突いて咥えている。子供がわんさか泣いている。おそらく、親と離れ離れになったか、あるいは親は帰らぬ人となってしまったのか。着ている服もあちらこちら破けている。この街が昔どのようであったかはこの風景からは何もわからない。そう思いながらも「僕」は走って向かった。いつもの空き地に。

着いた頃には誰かの話し声が聞こえていた。いつも通りだ。友人たちが楽しそうに話していた。「僕」もその会話の中に入って話した。話し続けて2時間、太陽が消えて月の光が出てきた頃に会話を終え、僕たちは帰路に着いた。帰路に着いたと言っても僕たちの向かう場所は同じところだ。数分歩いたら大勢の人がいるでっかい広場についた。何か祭りがあるからこんなにたくさん人がいるわけではない。帰る家がないのだ。その後、親と妹と合流したのち配られていた豚汁とおにぎり一個をもらい空いている場所を見つけて食べた。あっという間に食べ終わった。ぐーとお腹がなっている。その後は寝るスペースを見つけすぐに寝た。これが今の日常である。今までの街は壊れ、することもなく空き地で友達と話し、広場でお腹を膨らまさずに寝る。そう、こんなことになってしまった。前までは想像もつかなかった。自分たちが戦争難民になるなんて。

そう、このような生活になってしまったのは戦争が原因だ。何百十年前から世界では第三次世界大戦が起こってしまい、各国で戦争が増えた。この国もまたその一つである。のちに世界での戦争は終わったが、この国は隣国の国との戦争を続けていた。現在は、隣国の支配を受けながら停戦しているが、前回の戦争の影響がまだ残っていたのである。

このような日常が続いて早一年、その生活にも慣れ始めていたが、とても不憫な生活である。大人たちもフラストレーションが溜まっており、生活の物資が不足していたり、支配された生活にとても嫌気がさしていた。しかし、戦争をもう一度繰り返すことによってさらなる被害が出ることを恐れ今まで通りの生活をおくっていた。そんな時、「僕」は昔の本を見つけた。それは戦争がない平和な時代の日本の話であった。第二次世界大戦後日本は平和主義を唱えることによって平和な暮らしが続いていた。たとえ周りでロシアとウクライナの問題やパレスチナ問題が起こっても戦争とまでは行かなかった。そんな平和な暮らしに「僕」は憧れを抱いていた。しかし、周りの人たちにはそのことを伝えることはできなかった。できなかったと言うより、言わせて守られる雰囲気ではなかったのだ。ある日、「僕」と弟はいつも友人と話していた広場に向かっていた。弟はまだ小さく一人で走って向かってしまった。そこで事件は起こってしまう。弟は走ることに夢中になるが故に前を見ておらず隣国の偉い人とぶつかって怪我をさせてしまったのだ。「僕」はすぐにしてしまったことの重大さに気づき謝りに行ったが、その頃には手遅れで弟は殴られ続け、息をしていなかった。「僕」は怒りに震え殴りかかろうとしたが、親がタイミングよく来て、泣きながら「僕」を押さえた。そのうちに隣国の偉い人はどこかに行ってしまった。残されたのは「僕」と親、そして弟の亡骸であった。空高くカラスが鳴いていた。

その夜、僕は親から色々なことを言われた。自分たちの国は戦争に負けてしまい、支配されている。そんな隣国の偉い人に抵抗したら、また戦争になってしまうと。僕はそれは弟を殺した理由にはならないと言ったが相手にされなかった。僕はその時気づいてしまったのだ。自分だけが平和を求めているということに。

あの事件から数週間、僕は昔の本にあった平和について周りの大人に説いたが相手にされなかった。しかし、このことを友人たちに伝えると友人たちも平和を望んでいることがわかってきた。また、他の子供にも伝えていくと多くの子どもは平和を願っていることがわかった。次第に考えを共にする仲間が増えてくると、今まで心の中でしか平和を願っていなかった大人たちもこの考えに賛成するようになってきた。そして、その人たちは平和のために隣国からの支配を逃れるべきだと訴えはじめた。僕も同じように感じていた。隣国の支配があることによって僕たちの暮らしが苦しくなり、弟も殺されてしまったと。その翌年、この国は隣国からの支配の脱却のために立ち上がった。夕日が沈みかけた赤に染まった空の上にはカラスの群れが鳴いていた。

時が流れ、戦争が開始され、友人を含めた僕たちが前線で戦争を始める時となった。僕はその時、自分が平和を目指したことによってみんなが一心一体となってまとまり平和を目指し始めたと心の中が熱くなっていた。この戦争を終えて自分たちで平和な世の中を作ろうと。そして僕たちは敵に向かって走り出した。その時ピカっと光り僕は目を閉じた。その後気づくと人がとても小さく見え周りを見ると雲がすぐ近くにあった。自分を見てみると黒い翼が生えて飛んでいた。その時気づいた自分はカラスになったのだと。その時僕はとても嬉しかった。カラスは戦争の神オージンを表す聖鳥であるからだ。自分がカラスとなってこの戦争を導こうと。下の方を見ていると友人たちを含めた僕たちの国の人たちは相手に向かっている。みんな走ることだけに夢中になっており、自分がいないことに気づいていないのは悲しいが、自分がカラスとしてみんなを見守っていようと。数刻後、戦争は終わった。結果は自分たちの国の勝利であった。カラスは賢い生き物であり自分が平和を求めて、戦争を仕掛けたことが何よりも賢く、自分がカラスとなり勝利へと導いたのだと。僕はそう思っていた。戦争が始まった時までは。しかし今は違う。何がカラスは聖鳥だ。何が平和のための戦争だ。僕は自分がしてしまったことの重大さに気づいた。遅すぎる。気づくのがと僕は思った。戦争を空の上から見て感じた。戦争とはなんて恐ろしいものだ。カラスとなった僕は飛ぶのをやめ、地上に着いた。そして目の前に広がる景色を見て愕然とする。友人達と自分の国の人たちの死骸である。僕はカラスの意思に反することができない。カラスとなった僕は友人達の死骸を突くのである。

その後、戦争によって支配から脱却できたが、それだけでは気が済まない大人も多くいた。2度と支配されないためにも自分立ちが力をつけなくてはならないと言う考えである。僕は必死になってそれを阻止しようと鳴き叫ぶ、平和を訴えた時と同じように。しかし、誰も気づいてくれない。もしくは、戦争をしたい人が聖鳥のカラスもないていると利用するだけである。そして数年後、僕たちの国は他の国に侵攻し始めた。僕たちの国の人々だけでなく多くの他の国の人たちも死んでいく。「あー、なぜこんなことになってしまっのだろう。あの時、あのことをしてしまったばかりに。」と、僕はこの景色をただひたすらにみることしかできなかった。そう、とても高いところから。何が一体正しかったのだろうか?

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