信じるものは『俺』だけ ― いじめられた少年の無双劇

真辺ケイ

第1話 「絶望の果て」

俺は、ずっといじめられてきた。クラスメイトからの無視、陰湿ないじめ、教師の無関心――すべてが俺を追い詰めていた。毎日が地獄で、朝が来るのが怖かった。家族に打ち明ける勇気もなく、逃げ場なんてどこにもなかった。


そんな俺が、ある日とうとう限界を迎えた。放課後、校舎裏でまた殴られ、蹴られた。その度に心の中で「なんで俺だけが…」と叫んでいた。血の滲む口元を拭いながら、俺は心の底から誓った。「もう、こんな生活は終わりだ」と。


俺は決心した。強くなることを。誰も俺に手出しできないくらい強くなって、全てのやつらに復讐することを。その日から、俺は生まれ変わった。


まずは、体を鍛えることにした。夜な夜な街中を走り、毎朝早く起きて筋トレを繰り返した。どれだけ体が痛んでも、俺は止まらなかった。痛みこそが俺の友であり、俺を強くする糧だったからだ。誰にも見られたくないから、人目につかない場所を選んでトレーニングを続けた。


次に、知識を手に入れることにした。図書館に通い詰め、様々な分野の本を読み漁った。学校の勉強なんて表面的なものでしかない。本当の知識は自分で探し、見つけ出さなければならないことを知った。俺は、情報を武器にするために、あらゆるものを学び始めた。


そして、戦い方を身につけるために、道場に通い始めた。空手、柔道、ボクシング――あらゆる格闘技を学んだ。最初は体格の差で苦戦したが、次第に技を磨き、自信をつけていった。道場の先生たちは俺の執念を見抜いていたのだろう、特別に指導してくれることもあった。


だが、俺は誰も信じなかった。どんなに親切にされても、心の底では誰かが俺を裏切るのではないかという不安があった。だからこそ、俺は一人で戦う道を選んだ。誰にも頼らない、信じるのは自分だけ――それが俺の生き方だった。


そして、ついにその日が来た。ある日、また俺に絡んできたクラスの不良たちに対して、俺は笑った。彼らは何も知らない。今の俺が、以前の俺とはまったく違う存在だということを。


「おい、何笑ってんだよ?」


その言葉を合図に、彼らが俺に向かって殴りかかってきた。だが、俺は軽くかわし、逆に相手の腕を捉えて投げ飛ばした。驚愕する彼らの顔を見ながら、俺は一瞬の隙をついて全員を次々と倒していった。


「どうした? もう終わりか?」


全員が地面に倒れ、苦しそうに呻いている。その光景を見て、俺はついに力を手に入れたことを実感した。もう、誰も俺に逆らうことはできない。


だが、その時だった。俺の胸の中に、言葉では表せない虚しさが湧き上がった。復讐は果たしたはずなのに、心のどこかで何かが欠けている。だが、それが何なのかはわからない。ただ一つ言えるのは、俺はもう誰も信じないし、誰にも必要とされないということだ。


それでいい。俺が信じるのは、俺自身だけだ。それ以外は何もいらない。

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