アザラシ幼稚園の園長さん!
ねこ沢ふたよ@書籍発売中
第1話 イカれた奴らに拉致られました
卵を割って、フォークで黄身に穴を開けたら、お水を入れてラップして。
これで電子レンジ入れて一分間、とてもお手軽な簡単レシピだ。
「できたぁ!」
絶妙な半熟の黄身に心は踊る。
これをマヨネーズをかけたトーストの上に載せて、ハーブソルトを少々かけて。
かじりつけば、トロリとした黄身がこぼれ落ちそうになって、松子は慌てる。
パクりと黄身が落ちる前にさらに口に入れれば、卵のコクが口に広がる。
美味しいトーストがあれば、そこそこ幸せな
ピンポーン!!
軽快になるインターフォンに富永松子三十二歳……(松子「ちょっと……次、年齢言ったらぶっ殺すわよ」)。
……
軽快になるインターフォンに富永松子は、「はーい」と返事して、応答ボタンを押す。
「え、誰?」
誰どころの騒ぎではない。
どう見たってヤバイ奴らがモニターに映っている。
三十◯歳独身フリーターのダメ女の家に来るには、物々し過ぎる集団。
迷彩服、ガスマスク、銃らしき物まで持った集団が、マンションの共用廊下を占拠し、ゴミ出しに出たのであろう、首周りの伸び切ったTシャツ、ボサボサ寝癖頭の隣人男性が、目を丸くして、二度見三度見しながら、迷彩服の男達の後ろを通り過ぎていく。
受け止めきれない現実に、一旦、インターフォンを切ってみる。
何? 何かした? 私。
自分の行動を反芻してみても、松子に身に覚えはない。
インターフォンの黒い画面を見れば、先ほどの光景は、夢だったような気がしてくる。
賢い人ならば、そこで録画を確認したり、警察に連絡したりと考えるのだろうが、残念ながら、松子は……まぁ、そう細かいことを考えて行動するタイプの女ではないのである。
寝ぼけていたのであろうと現実逃避して、考えるのをやめてしまった。
席について、渾身の美味しいトーストに手を伸ばした瞬間に、当然の結果として、再度インターフォンがなる。
ピーンポーン!!
松子の手がピタリと止まる。
流石に、これは何かおかしいと、松子が怯えながらなり続けるインターフォンに近づけば、けたたましい音を立てて窓ガラスが派手に割れる。
え、銃撃されてる?
ダダダダダ……。
何度もな鳴る映画やドラマでしか聞いたことのない銃声がするたびに、可哀想な窓ガラスは粉々に砕けていく。
「あ、トーストが!」
砕けたガラスが、独身フリーターダメ女の唯一の楽しみであるトーストの上にトッピングされていく。
キラキラと綺麗に輝くガラス片は、お口の中で、とんでもないハーモニーを醸し出すことだろう。
いや、無理。食べられないから。
いやいや、トーストの心配をしている場合ではない。
割れたガラス戸から、ワラワラと数名のゴツイ迷彩服の男達が侵入してきて、松子はあっさりと拐かされたのであった。
……良いから早くあざらし出てこい。あざらしを語りたいんだよ!
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