伝説の剣じゃなくても日本刀で十分!

夜桜洋和

第0話 歴史の始まり

「ふぁ〜よく寝た〜」


そうやって、いつも通り彼、勇葉は起き上がる。でも、いつも通りなのはその起き上がり方だけだった。


「…うん?」


そして彼は周りの光景に驚いた。

木で出来た壁、床、天井、ベッド。どう見ても、彼はその場所に見覚えはなかった。


「ここは…何処だ?」


その問いに返される言葉は無い。

彼は目を擦り、もう一度、周りを見た。


周りには、木で出来た壁、床、天井、そしてドアがあった。

彼はそのドアに向かって行くことにした。ここがどこであるかを確認する為に。

床は彼の歩く力が強かったのか、少し軋んだ。けれど、決して崩落することはなかった。


ドアを開け、廊下に出た。

廊下には、等身大の鏡があった。そこに映し出されたのは、黒い髪に薄灰色のジャージ姿の、彼自身だった。

いつもと変わらない、自分自身の姿に彼は安心感を覚えた。


「周りが変わっていても、自分自身は決して変わらないのかな。」


その事実に彼は安堵するとともに、僅かな恐怖心を覚えた。いつまで経っても、この姿で生きていかなければならないことに。


「まぁ、いいか。来世にもなれば別の姿になるだろ。」


…彼は能天気だ。


廊下を歩き、手当たり次第に目に付く扉全てを開け、誰かいないか探したが、誰もいなかった。あったのは、日本刀だけだった。その刀には、こう彫られていた。


伝刀でんとう』と。


なぜ、この名なのか。それは誰にもわからない。否、名付け親しかわからない。けれども、彼は持って行くことに決めたらしい。


それが、"歴史の始まり"だ。

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