第7話
「大変良く出来ました♪」
「ごろにゃ~ん♡」
白黒猫の頭を撫でると口から木針を奪い取った。
簡単に逃げられると思って油断していたら、あやうく捕まるところだった。
「くっ、この悪魔の使いめ、いったい俺に何をした!」
金縛り状態の騎士団長が睨んで言ってきた。さっきまでは怖かったけどもう怖くない。
コイツのことは使用人と兵士達の噂話で知っている。『おっぱい騎士団長』だ。
国王や王子や貴族達からは清廉潔白、豪傑、騎士の中の騎士と呼ばれている。
でも、それは表の顔で本性を隠しているからだ。コイツには裏の顔がある。
自分の騎士団に所属する団員の妻や恋人、姉や妹、時には母親のおっぱいさえも揉ませろと要求している。
断れば訓練と称しての暴行。悪びれる様子もなく「抱かせろと言ってるんじゃない! 揉ませろと言っているんだ! 減るもんじゃないだろ!」と逆ギレする始末らしい。
「フフッ。するのはこれからよ。さあ、今日の餌は偉~い騎士団長様よ。たっぷりお食べ」
「「「にゃ~ん♡」」」
「ふ、巫山戯るな! 俺にこんなことしてただで済むと思うなよ! おい、お前達! さっさと助けに来い!」
騎士団長の質問にニヤリと笑って予告すると、すぐに恐ろしい真顔を作って猫達に命じた。
よだれを垂らした猫達が騎士団長の身体を一斉によじ登っていく。
騎士団長が顔を青くさせながらも強気に脅し返すと、団員達に早く助けろと命じた。
「「「……」」」
頭の中で1、2、3、4、5と数えたけど足音一つ聞こえてこない。
噂話通りのおっぱい騎士団長だった。完全に団員達に嫌われている。
というか恨まれている。
「ゔがああああ! や、や、やめろ! やめてくれ! お前達、何してるんだ! 早く来い! うわああああ!」
うん、やっぱりめちゃ恨まれている。誰も助けに来ない。
鎧を全て外された騎士団長が猫達にかじられている。
金縛り状態で必死に暴れて、バランスを崩して背中から地面に倒れてしまう。
これは痛いが食い殺されるまでずっと痛い。
猫と違って調教するつもりはないので、回復薬で治療するつもりもない。
とってもエロ~イ騎士団長の始末は猫達に任せて、私は透明マントの回収だ。
透明マントは黒曜石のような光沢を放つ伸縮自在の黒い布で、頭から被って「消えろ」と唱えるだけで透明になれてしまう。そんな便利な布を失うわけにはいかない。
「ゔがああああ! ゔあぁあああ!」
騎士団長の悲鳴をBGMに聴きながら、白煙の中から見つけ出した。
あとは猫を回収して、こことこの町から脱出するだけでいい。
騎士団長の処刑を見逃してくれたから、きっと逃げるのも見逃してくれると思う。
「「「にゃ~ん♪」」」
もういいみたいだ。猫達に近づくと騎士団長から離れてやってきた。
団長肉が不味かったか、いっぱい食べて満足したか。とにかくBGMは止まっている。
これで団員達の家庭のおっぱいに平和が訪れた。めでたしめでたし……じゃないよね。
「あ~~」
騎士団長が最後の力を振り絞って、地面に血文字でダイイングメッセージを遺している。地面には『ネコ』と書かれている。確かにその通りだけど、それがどうした?だ。最悪捕まるのは猫だけだ。
「雑巾、これ足して」
「ニャ~ン」
とりあえず雑巾みたいな猫に命令して、1足しておいた。
これで誰も捕まらない。さっさと透明マントを被って逃げるとしよう。
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