魔王(仮)の人間〜魔王になんてなりません!〜
東雲晴日
追放編
第1話「記憶」
神を見た、と言われて、貴方は信じるだろうか?
僕は信じない。いや、信じたくない。だが信じざるを得ないのだ。この目で見てしまったから。
目の前に広がる光景に、理解が追いつかない。白髪の儚い少女とは対照的に、足元には赤々とした血溜まりができている。
「な、んで、どうして」
目の前の少女に訴えかける。
「ロベルト・アシュトンはこの世界に必要のない存在と判断した。」
凛とした声が響く。だがその声はどこか機械的だった。少女は続ける。
「私の名はシヴァ。破壊神シヴァ。喜べ。お前を次の魔王に任命する。」
色々なことが起こりすぎて処理しきれない。ただその場に、呆然と立ち尽くした。
夢を見た。昔の夢、いや、記憶だ。夢であってほしいが、事実なのだ。
「失礼致します。ルイス様、お召替えのお手伝いに参りました。」
扉をノックして執事、ルドが入ってくる。
主人の起床時間を把握しているとは、本当に有能だ。
着替えの間に、
「ルド」
「何でございましょう」
「お前は、神を見たと言ったら信じるか?」
「…宗教勧誘ですか」
人を何だと思っているんだ。だがその軽口は嫌いじゃない。
「純粋な疑問だよ。神を信仰している人たちは、本当に神が存在すると思っているのか、ってね」
「神はあくまで神話上の存在、ですか。坊ちゃんもそんな高尚なことを考えるようになったのですね」
「褒めているのか貶しているのかわからないな」
「褒め言葉ですよ」
「皮肉にしか聞こえないよ」
ルイス・ランバート。ランバート伯爵家長男、だが養子である。創造神ミナイザ様からなかなか子を授からない父上に引き取られた。
と言うのは嘘で、本当は僕が匿ってもらったのだ。実家、アシュトン家を追放されて間もない頃、ランバート伯爵、伯父上に。
※初投稿です。よろしくお願いします。書き溜めてあるのでしばらくは毎日更新します。
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