第19話 チームアップ

「まさかここまで大所帯になるとはなぁ」


 俺の目の前には大勢のプレイヤーが集っていた。

 彼らは俺へのチームアップ依頼を申し込んできた者たちだ。


「各ギルドのリーダーは集合してください」


 俺が風属性魔術で声を拡大して呼びかけると、複数人のプレイヤーが現れた。


「『タケミカヅチ』のタケだ」

「『バスタード』のセイバーです」

「『猫娘にゃんにゃんクラブ』のキャシーでーす」

「『スカイたんファンクラブ』のミュートです!!」


 一つ変なのが混ざっているが、まあ、今は置いておこう。


「それじゃあ皆さんには、俺とチームアップしたい理由を教えてください。それじゃあ『タケミカヅチ』さんのところから」

「俺らは単純に、もっと人手が欲しいからだな。おこぼれ狙いの連中に負けるつもりはねぇが、それでも消耗は避けられねぇ。だからアンタのところの組織力に、あやかりたいってわけだ」

「わかりました。では次は『バスタード』さんのところから」

「久しぶりですね。オーマ君。今回はあの時の恩を返すためにやってきました」

「ありがとうございます。セイバーさん」


 金髪の剣士の男性は俺の顔見知りである。

 迷宮で助けたことがあったのだ。

 といっても彼らのような主力級の高レベルプレイヤーではなくて、彼らのところに所属している新米プレイヤーたちだが。


「報酬は山分けしていただきたいですが、ユニークアワードに関してはなるべく譲るつもりですよ」

「そう言ってくれるとありがたいです」

「次は私だね。ひっさしぶりー、オーマ君」

「お久しぶりです。キャシーさん。といっても分体は昨日も会ってますが」


 彼女たちはネコミミをキャラメイクの際に設定した女性プレイヤーで構成されている。

 キャラメイクは結構自由がきく。

 翼や角を生やすこともできる。最も飾り以上の効果はないが。


 そんなにゃんにゃんしている彼女たちは、中央都市でも相当な実力者であり、人気者でもある。

 そんな彼女がトラブルに巻き込まれている時に、俺が助けたのもあって、こうして縁ができたというわけだ。


「分体くんたちもこんにちわー」

「「「こ ん に ち は !!」」」

「相変わらず元気だねー」

「まさか猫娘クラブとも繋がりがあるとはな」


 この場にいるギルドで知らないのは一番最初のタケミカヅチと……。


「それで、その、そちらは?」

「『スカイたんファンクラブ』です!!」


 そっかぁ。

 聞き間違いじゃなかったかぁ。

 スカイに小声で聞く。


「彼らは大丈夫なのか?」

「まあ、はい。たぶん、大丈夫です。あの人たちは、その、はい」


 苦虫を噛み潰した、という形容がピッタリの顔で彼女は渋々と頷く。


「何か嫌なこととかされなかったか?」

「はい。それは大丈夫です。その、彼らだけは人には迷惑をかけない人たちですから」

「そうか……」


 迷惑かけた奴もいたってことね。

 

「スカイたんのお役に立つために参りました! 報酬はスカイたんの笑顔です!!」

「あははは……、ありがとうございます」


 うぉぉぉぉおおおお!! と沸き立つ彼ら。

 思いっ切り苦笑いなんだけど、いいのか。


「オーマさん!」

「はい、何でしょう」

「スカイたんの夢に協力してくださりありがとうございます!!」

「……知ってるんですか? 彼女の夢を」

「はい!! 彼女が色々なところに勧誘を掛けていたのを聞いていたので!」

「なるほど」


 そこで俺に対して、嫉妬心や恨み言をむき出しにするのではなく、お礼を言えるあたり、実際に何らかの迷惑を人にかけるタイプの集団ではなさそうだ。


「俺たちは根っからの戦闘職なので、協力はできませんが、それでもお礼を言わせてください!!」

「どういたしまして?」


 スカイが微妙な顔をしている。

 たぶん彼女はアイドルのように扱われること自体に慣れていないのだろう。

 だから彼らにも塩対応なのだ。

 

「塩対応萌え」

「スカイたん可愛い」

「すぅぅぅぅはぁぁぁぁ、グッドスメル!」


 いや、単純にきもいからだな。

 でもまあ邪険にするのもかわいそうだろう。


「それで、どんな形で、報酬を山分けする?」

「オーマ君に決定権を委ねるよ」

「私もー」

「俺もチームアップを依頼した側だからな」

「僕たちでそれで構いません」


 成るほど、満場一致で俺に丸投げか。

 となると答えは一つだな。


「均等に分けよう。俺を含めて五つのグループだし、十億ずつでいいだろう」

「オッケー。それで大丈夫」

「了解した。十億ありゃあ問題ないな」

「それで、ユニークアワードは?」

「それに関しては……」


 どうしようか?

 正直俺が欲しいところだけれど、あんまり主張するのもなぁ。


「じゃあ、ユニークアワードに関しては、討伐した人の物ってことで」

「そこはリーダーのお前さんが持っていけよ」

「そうよー、お姉さんたちはただ乗りさせてもらう立場なんだから」

「そうだね。不慮の事故の場合は除いて、オーマ君に優先的に撮ってもらうことにするべきだね」

「いいんですか?」

「問題ないよ。むしろこう言うところこそ、ちゃんと一本に決めておかないと、混乱してしまう」

「それじゃあチームアップの意味がないからな」

「じゃあ遠慮なく狙わせてもらいます」


 さて、これで俺一万五千人に、四つのギルドの構成員、合計千名が加わって、一万六千人の人員を投入できることになった。

 これはこのユニークアワードを狙っている人々の中で、最大クラスの勢力だろう。


「それじゃあ、ユニークス討伐目指して頑張りますか!」

「えいえいおー!!」


「「「えいえいおー!!」」」


 ちなみに『えいえいおー!』と言ったのは分体だけである。

 他の人たちは戸惑っていた。

 



——―――


新作公開いたしました。



『万病の覇王 ~ジョブ『キノコ農家』の俺、菌の力で無双する。燃料確保・食料生産・消毒治療・環境保全・疫病攻撃、何でもできます。え、美少女たちが次々に恋の病に罹っている? 何それ、知らん。怖……~』


という作品です。

本日中に話の序盤である5話まで一時間おきに投稿し、それ以降は毎日更新で元日まで予約投稿してあります。

ぜひお楽しみください。

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