第2話:90番目のシスター。
遠い過去から今まで多くの神に仕えるエクトシストたち・・・数えて89人が
人々に不幸をもたらす、すべての悪魔の頂点に立つ魔王ルシファーに挑んだが
誰一人彼を倒すことはできなかった。
その中でキャトルヴェンディスは90番目にして初めて魔王ルシファーをカオス
「地獄」に封じ込めた唯一の修道女だった。
彼女がそんなツワモノなシスターだったなんて僕は知らなかった。
そのことと、なぜキャトルヴァンディスがメイドのようなことをしているかって
ことも僕がもっと大人に成長してから知ることになる。
そして僕が高校生になるのと同じくして、子供の頃最初にきた悪魔ベルゴルスが
またやってきた。
ベルゴルスは僕が寝てるベッドの正面の壁に現れた。
目だけが光ってる黒い物体は、そこにあぐらを組んで座っていた。
あまりに黒すぎて闇に混じって、顔もよく分からなかった。
「久しぶりだなピーター」
「前に俺が言ったようにおまえの心の闇をもらいに来た」
ってベルゴルスは言った。
たぶん、こいつはまだ下級の悪魔なんだろう。
なんとくだけど、そんな気がした。
でも、なにもできない人間の僕には悪魔が来たって、なすすべがなかった。
悪魔払いができるわけでもないし封印できるわけでもない。
ベルゴルスが来た時、僕はヤツに気をとられて気づかなかったが、
いつの間にかキャトルヴァンディスが僕の横に立っていた。
もしかしたらキャトルヴァンディスは今夜の出来事を前から予知していて、
僕の家に来たのかもしれない、そう思った。
「キャトル・・・いつの間に・・・」
「さっきから、ずっといましたよ」
「この悪魔が現れた時からです」
「ん、おまえは?」
悪魔ベルゴルスは言った。
「なんだ?・・・メイドか?・・・
「たかだか1匹の女、ビビったりしないぞ」
「俺は、ピーターに用があるんだ・・・だからおまえなんかに用はないわ」
「いいえ、あたなの好きにはさせません」
「ピーターの心は奪わせませんよ」
「まあ、そんなにムキならなくていいだろう?」
「俺はさ、ピーターを取って食おうって訳じゃないんだからさ」
「ほんの少し、心の闇を分けてくれたら退散してもいいぜ・・・」
「悪魔の言うことなど信用できません・・・」
「一度でも気を許したが最後、ピーターの心を全部持って行く気でしょ」
「あんた、気づいてないかもしれないが・・」
「このままだとピーターの心の闇は、どんどんデカくなって最後は押しつぶされて
それこそ地獄に落ちるぜ」
「そうなる前に、俺たちが持って行ってやろうって言ってるんだよ」
「それはピーターを救うためでもあるんだぜ・・・」
「いいかげんなことを・・・そうやって、ピーターの心から何もかも奪って
生ける屍にするつもりでしょ、でもそうはいきませんよ」
「ベルゴルスあなた・・・私のことご存知?」
「一介のメイドのことなんか知らねえよ」
「そうですか?・・・そうそうルシファーはお元気?」
そう言うと、ベルゴスは驚いた様子で
「おまえ・・・なんだ・・・なんであの方の名前を出す・・・」
「もしかして・・・おまえ・・・」
「あなたのような下級悪魔が私に勝てるとでも?」
「ふん、そうか・・・おまえがあの・・・」
「なるほどな、そうと分かれば、おまえと戦うなんてバカバカしい」
「悪魔ってのは元来、平和主義者なんだ・・・揉め事が嫌いなんだよ」
「とくに俺はなんでも、すみやかに済ませたいタチでな」
「お前とやりあってカオスに堕ちるのはごめんだからな・・・」
「だから俺は消えることにする」
「でもな・・・明日も、明後日も、その次も違う悪魔が次々やって来るぜ」
「数え切れない数の悪魔たちがな・・・」
「いずれは俺なんかより強い奴がやってくるさ・・・」
「せいぜい、その小僧を守ってやるんだな」
「お前がボロボロになって行く姿を闇の中から見てるからな」
「あばよ・・・」
そう言ってベルゴルスは壁の中に消えていった。
つづく。
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