真『ざまぁ』……魔王になって『復讐ざまぁ』したはずが、返り討ちされて逆ざまぁ
楠本恵士
第1話・魔王になってオレを追放したパーティーのヤツらに〝復讐ざまぁ〟してやる
異世界の荒野を、勇者パーティーから追放されたオレは、
「ちくしょう! 何がパーティーから追放だ! オレにはたぶん秘められた、最強のチートスキルがあるはずなんだぞ! そのオレの覚醒していないチートスキルを怖れて追放したのに違いない」
オレは前方に見える赤い岩山を向って、オレを追放したパーティーのヤツらの顔を思い浮かべながら、呪詛に近い言葉を吐いた。
「ちくしょう、ふざけやがってパーティーの雑用係の村娘姉妹を続けて孕ませただけじゃねぇか! それで追放なんて冗談じゃねぇや!」
荒野を歩くオレの隣を、風で丸まった枯れ草がコロコロと転がっていく。
「まるで、オレの今の心みたいに荒れた平原だな……絶対、オレを追放した連中に何年かかっても『復讐ざまぁ』してやる」
オレは、ざまぁされたヤツらが泣きながらオレに詫びて許しを乞うている姿を想像して、一人悦に入って笑った──その時に謝っても、もう遅い。
立ち止まったオレは、腰に差していた黒い木の棒を引き抜いて眺める。
(オレに追放したクソリーダー、なにが『旅のはじめに国王さまから頂いた、名剣は没収する……おまえには、その木の棒で充分だ』だぁ! ふざけやがって、時期を見て剣を売っぱらって、金銭に変えるオレの計画がメチャクチャだ)
オレが向っているのは、現在の魔王がいる洞窟だ。
「そこで魔王と手を組んで、数年かけて成り上がって。オレを追放した勇者パーティーに『ざまぁ復讐』してやる……へっへっへっ」
なんとか、魔王と魔物が巣窟にしている洞窟に、オレはたどり着いた。
入り口はモノが散乱していた。
「なにか、様子が変だな?」
ヒカリゴケで照らされた洞窟を進んでも、魔物は一匹も現れなかった。
「どういうコトだ? 魔物はどこだ?」
洞窟内には折れた槍や、火炎魔法で岩が焼けた痕跡もあった。
オレが奥へと進んでいくと、炎の揺らぐ明かりが見えてきて。
そこに、荷物の整理をしている若い執事姿の魔物がいた。
額に一角獣のような角を生やした、人型の魔物がオレを見て言った。
「おや、お客さんですか……ここには、何もありませんよ。宝箱は持ち去られてしまいましたから」
「魔王はどこだ?」
荷物整理をしながら、執事魔物が言った。
「三日前に勇者パーティーの襲撃を受けて、魔王さまは倒されてしまいました。魔物たちも逃げて散り散りバラバラです」
オレは驚く。
「なにぃぃぃぃぃ、魔王が倒された?」
執事魔物から話しを聞くと、どうやらパーティー構成からオレを追放したパーティーとは、別の紋章パーティーらしい。
「聖騎士さまや女性僧侶も、いましたから……相当レベルが高いパーティーだったのでしょうね、生き残った魔物への残党狩りが行われなくて幸いでした……あなたさまは、この洞窟になにをしに?」
「オレを追放したクソパーティーに、復讐ざまぁするために、魔王に近づいて……ゆくゆくは、自分が成り上がりって魔王になる」
荷物整理をしていた、執事魔物は手を止めてオレの方を微笑みながら見た。
「なかなか、興味深い……もう少し、お話しを聞かせてくれませんか」
オレは、オレを追放したパーティーの悪口を、あるコトないコト、魔物にぶちまけた。
オレの話しを聞き終わった執事魔物は、数回うなづくいてから、オレに言った。
「見返すざまぁをするなら、政治家になって出世するとか。大金持ちになって見返すとかでも良くはないですか? もしくは、田舎で大地主になるとか」
「オレにそんな、器量のスキルがあると思うか……手っ取り早い方法が魔王になって、追放したパーティーの連中をビビらせるコトなんだよ」
「わかりました……わたしも、新しい魔王さまが必要だと思っていたところです。あなたの〝ざまぁ〟に協力します。魔物たちを集めて新しい魔王軍を結成して、この世界の侵攻に乗り出しましょう……少し時間はかかるかも知れませんが」
「追放したパーティーに復讐ざまぁするためなら、なんでもする近隣の町や村の焼き討ちも平気でやってやる」
「町や村を襲うのはやめておいた方がいいですよ、あまり非道な噂が広がると。あなたが〝ざまぁ〟する前に、別のパーティーが魔王討伐で動き出しますから……計画は水面下でジワジワと」
「わかった、おまえに任せる」
オレは追放したパーティーへ、復讐ざまぁするコトを人生の目標とした。
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