13.

「また騒いでますよ、ぽんぽこたぬきの安野さんが」

「私のせいで、すみません⋯⋯」

「安野さんが姫宮さまのことで異常に心配してぎゃーぎゃー騒いでいるのはもはやテンプレで、見ていて滑稽ですよ。大河さまも見てください、安野さんが三点倒立してますよ」

「えっ」


思わず振り返った。

が、すぐにそれが小口の嘘だと分かり、しかし、安野が土下座をし、今井に説教されている様子を見てしまった。


「姫宮さま、引っかかりましたね」

「安野さんがどういう状況で、そのようなことをしているのかと思いまして⋯⋯」

「確かにどういう状況でそんなことをするかと思いますけど、三点倒立する安野さんはただ見てみたいですね」


思いきりではないが、面白いと小口が笑うのを姫宮もつられて控えめに笑った。

安野が実は意外とできるのかもとか、できないけど一生懸命やろうとしている想像を安易にしてしまい、彼女には失礼だが面白いと思ってしまった。

と、小口と話が盛り上がっている間でも、大河はそれらを見向きもせず、目の前に置かれたおにぎりをちまちま食べていた。

ハニワのプレートをじっくりと見ているようなその視線に、本当にハニワが大好きだなと目を細めた。


「大河、ハニワのプレートを見ているの? 大好きだね」

「⋯⋯」


相変わらず、何の反応をしない息子にそれでもめげずに話を続けた。


「あ、大河。朝ご飯食べ終わったら、ママと遊んでもらってもいいかな」

「⋯⋯」


次にフォークで差した玉子焼きを食べる動きが止まった。


これはどういうことなのか。


目を丸くしたまま姫宮も固まっていると、大河は何もなかったかのように食べ続けた。

一瞥すらしないということは、姫宮とは遊びたくはないのかと思った。

大河の照れ隠しだとは小口は言っていたが、そうであっても反応してくれなければ落ち込む。

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