2.
そう思ってしまうのも彼女にもこの彼女の優しさから産まれたハニワ達にも申し訳ないと、抱きかかえたまま、うだうだごろごろしていた姫宮は、ハッと飛び起きた。
そうだった、今は朝だった。
ハニワを元にあった場所に丁寧に置いた後、身支度もそこそこに足早とダイニングに向かった。
「姫宮様、おはようございます」
入るや否や、リビングにいた安野がとびっきりの笑顔で挨拶をした後、ダイニングの方にいた他の人達もそれぞれ挨拶をしてくる。
「あ、お、おはようございます⋯⋯すみません、寝坊してしまいました」
「全然寝坊ではありませんよ。ですから、慌てず身支度を整えてもいいんですからね」
「ここ、髪跳ねてますよ」と微笑ましげに安野に髪を触られて、「すみません⋯⋯」と頬を赤くして、手ぐしで無理やり直そうとした。
「あの、朝早くからありがとうございます」
「いえ、当然のことですよ! 姫宮様達のためならば、朝が早かろうが、何とも思いませんよ!」
鼻息荒く言う安野にいつもと変わらないなと苦笑のような顔をする。
いつも通りの朝。いつも通りに接してくれる世話係達。
この人達と出会う前は信じられないぐらい穏やかで安心できる環境。
それでも姫宮の顔には陰を差していた。
途中過程がどうあれ、代わりに産む子どもを死産させ、仕事を放棄をした上に、突然行方をくらませ、御月堂にも多大なる迷惑をかけたにも関わらず、安野達と共に温かく迎え入れてくれた。
必ずしもまた会えるとは限らない相手に対して、どうしてそのようなことができるのかと驚いたぐらいだ。
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