10.アナテマの獣/灰原アシカ
https://kakuyomu.jp/works/16816452218395059165
【私がこの作品を手に取った理由】
ジャンルは異世界ファンタジーとなります。まず、タイトルにある「アナテマ」という耳慣れない言葉。これはよく分かりませんので飛ばし、キャッチコピーを確認しますと、「ダークソウル、ゲームオブスローンズに憧れて」とあります。私はいずれも内容を分かっていませんが、名前だけは知っているような状態であり、この企画を機会に雰囲気に触れてみようかと、完全に興味本位で作品を手に取っています。
ちなみに「アナテマ」はWikipediaから引用ですが、「聖絶」「奉納」「滅ぼす」「捧げる」「殺す」「呪われる」「呪われたものとなる」などと訳されるギリシア語の言葉。とのことです。
【私がこの作品から読み取ったあらすじ】
・この世界には九大災禍と呼ばれる呪いがある。呪いの根源ははるか昔の九人の賢者であり、この世界の創造主たる三神の力を奪おうとしたためにその逆鱗に触れ、人としての姿を失って九大災禍と化した。
・九大災禍のうちの一つ、死門は命を吸い取る嵐である。主人公カウルの住む村は、ある理由により死門の移動経路から外れており、逆に獣などの死骸から素材を安全に収集できるという恩恵にあずかっていた。
・ある理由とは、太古からの大きな呪い「刻呪」を封印した上で村が作られていることである。その強大な呪いにより、死門のような別の呪いを跳ねのけている。
・ただし、「刻呪」の封印を維持するために、定期的な生贄をささげる必要があると言われていた。カウルはその生贄に選ばれることになる。
・祭壇での儀式で本来ないはずの事態が発生した結果、カウルは「刻呪」に触れてしまい、呪いを解き放ってしまう。
・「刻呪」はいずこかへ去ったが、その余波で大きな傷跡を村に残していった。カウルは自らの罪を償うため、自らが解き放った呪いの獣を追う旅に出る。
現時点で公開されている58話中、18話まで読み、以降のレビューはそれを前提としたものとなります。
【私がこの作品に感じた良い点】
この作品は重厚な設定がなされた本格派ダークファンタジーと思います。やや説明的内容が多めですが、これは本格的なファンタジー作品の宿命だと思っています。それでも、実際に死門による災禍を通して、その設定を登場人物に語らせたりするなど、すんなり物語に入っていくための工夫は十分になされていると感じました。
物語の最初の見どころは、カウルが村の生贄に選ばれるところになると思います。その展開は読めるのですが、秀逸だと思ったのはその後の村人の反応です。気持ち悪いような清々しい表情を見せ、カウルを祝福します。自分が生贄に選ばれなかったことを良いことに、手の平返しのようにそのような反応を見せるのは人間の業の深さを感じました。同時に、この作品ではそういったことをこれから表現していくという意思表示にも感じられ、そこに到達するまでのテンポは非常に良いと思いました。
異形の物に対する恐怖の描写も必見です。カウルが解き放った呪いは正体がよく分からない状況でただ凄惨な事態を引き起こしつつ、しばらく物語は進行していくのですが、得体の知れないものだからこそ恐怖を覚えるのであり、見事な展開だと思います。
また、ダークファンタジーではありますが、読んだ範囲では主人公は前向きな印象でスプラッタ感やグロ感も割と控えめと思います。少々腰を据えて読む必要があるものの、本格派ダークファンタジー入門におすすめできる作品と感じています。
【私がこの作品に感じた悪い点】
私はこの物語をかなり楽しむことができました。しかし、タイトルとキャッチコピーについて、それを知らない人間が目にすると作品の内容が全く分からないものとなってしまっています。すなわち読む以前に手に取ってもらえないのではないかと思いました。ダークソウル、ゲームオブスローンズを知っている読者層には訴求力がありますが、それをよく知らないけど読み出せばハマる可能性がある読者層を逃がしている状況ではないかと私は考えます。
ただ、それはダークソウル、ゲームオブスローンズを知っている読者層よりもずっと少数なのかもしれません。しかし、他の作品のネームバリューを借りたキャッチコピーでもあり、分かりやすくはありますが二番煎じ感が出てしまうのは少々もったいなく感じています。僭越ながら申し上げますが、もっとこの作品らしさを取り入れた、オリジナリティのあるキャッチコピーで勝負してはどうかと感じました。
また、その本格さの裏返しにはなりますが、文字はぎっしり、専門用語は多め、進行は非常にゆっくり、主人公の派手な活躍もなかなかないため、カジュアル層は読まないだろうなと思いつつ、作者さんもそこは割り切っていらっしゃるとは思います。
【カクヨムに公式に投稿する場合のレビュー内容】
・ひとこと紹介
本格派ダークファンタジー。これは呪いを解き放った罪を償う少年の旅路。
・レビュー本文
この物語の最初の見どころは、主人公のカウルが村の生贄に選ばれるところになると思います。秀逸なのはその後の村人の反応です。気持ち悪いような清々しい表情を見せ、カウルを祝福します。自分が生贄に選ばれなかったことを良いことに、手の平返しのようにそのような反応を見せていて、人間の業の深さが表現されています。
異形の物に対する恐怖の描写も必見です。カウルが解き放った呪いは当初、正体がよく分からない状況でただ凄惨な事態を引き起こしていきます。得体が知れないゆえに恐怖心をより煽るものとなっています。
重厚な設定がなされていますが、比較的読みやすく残酷描写もマイルドであり、本格派ダークファンタジー入門におすすめできる作品です。
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レビューは以上となります。全く個人の感想なのですが、このレビューを見られた作者さんは【カクヨムに公式に投稿する場合のレビュー内容】を公式に投稿してよいものか、ご意見をいただければ幸いです。ちなみに私がレビューする時の星は必ず★★★です。
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