男のボクがメイドに?!
描空
男なのにメイド?!
ボクは
それは女装だ。ボクは小さい頃から女の子みたいな顔立で勘違いされる事が多くそして周りの人たちに女の子の格好をさせられボクの心が少し乙女になってしまったのだ。
そんなボクも高校3年生そろそろ就職か進学かを決めなければならない。でもボクは女装が好きであまり考えていなかった。
そんな時ボクは運命的な出会いをする。
ある日の放課後帰路についていると、とても綺麗な少女と目が合った。その瞬間その少女はこちらに向かって全力疾走してきたのだ。
ボクは変な人に目をつけられたと思い家に帰るのではなく公園に逃げ込んだ。それが間違いだった。
ボクは低木の後ろに隠れてその少女の動向を伺っていた。どこかに電話をしているようだった。
どこに電話をしているのだろうとボクが気になっていたその時どこから現れたのか分からないが黒いスーツを着たガタイのいい男の人たちが公園を取り囲むように立っていた。
ボクは今になって気づいた。完璧に包囲された事に。
公園の出入り口は2つあるがどちらも完璧に封鎖されている。ボクは袋の
何の目的でボクを捕まえようとしてるんだ!
ボクはもう限界だった。どうせ捕まるんなら正々堂々真正面から捕まってやる。ボクは覚悟を決めた。
ボクは少女の真正面に赴き《おもむ》男らしく一歩一歩踏みしめて歩いた。
遂に少女と対話できる距離にまで近づくと少女が先に口を開いた。
「貴女私のメイドになってくださらない?」
ボクはポカンとした。そもそもボクは男だしまだ社会人になってすらいないのにメイドなんてと困惑していると少女が立て続けにこう言った。
「
「いやあのちょっと待ってください!ボクはそもそも男ですしメイドになる事を了承していません」
ボクは反論しないと本当にメイドをやらされると思い精一杯反論した。
「性別なんて問題ありませんわ私はあなただからメイドになって欲しいんですの」
ボクはその少女の真っ直ぐな瞳に心が揺らいでしまった。
「ダメです!僕はまだ社会人にもなってないんですからそれとボクはメイドの仕事なんてしたことありません」
ボクはメイドにならない理由をきちんと説明した。少女はニヤリと笑った。
「おかしいわね普通男の人なら仕事の前に女装なんて出来るかと言ってきそうだけど、あなた女装した事あったり女装に抵抗ないのかしら?」
ボクが女装をしている事を見透かされたようで誰が見ても分かるぐらい動揺してしまった。
「図星ね」
少女は少し嬉しそうに言った。
ボクはその場から恥ずかしさのあまり逃げ出した。すぐ男の人に捕まった。動揺し過ぎて忘れていたがボクは包囲されていたのだった。
「さあ行くわよ」
少女は上機嫌に言った。ボクはもう諦めた。されるがまま高そうな車に乗せられ少女の屋敷に連れて行かれた。
「あなた名前は何と言うのかしら?」
「
ボクはもう絶望という文字しか頭になく何も考えられなかった。
「私のメイドになってくださる?」
「…はい」
ボクは自分が言った言葉にすぐ気づいたが遅かった。
「なってくれるですね!良かったわ正直言うと貴方に一目惚れでしたの。これからよろしくお願いしますね薫さん」
少女は満足げだった。
これからどうなるんだろと考えていると停車した。
「着いたわよ」
ボクは言われるがまま降車した。運転手さんであろう人がエスコートしてくれてボクは不覚にも少しドキッとしてしまった。
「ここが私の屋敷ですわ」
その屋敷はとても大きくそして豪華だった。左右を見渡しても敷地の両端が見えないほどだ。
「行きますわよ」
言われるがままボクは敷地内に入った。門から屋敷までは100m程あり屋敷は先ほどよりも大きく見えた。
「今日からここが貴方の家よ」
当たり前かのように言われた言葉にボクは理解が追いつかなかった。
「ちょっと待ってくださいどういう事ですか?」
「どういう事って貴方は今日から私のメイドになったんですから住み込みは当たり前でしょ」
「当たり前でしょってそもそもボクはメイドになんてなりません!さっきは言葉のあやというか取り敢えずボクはメイドにはなりません」
ここできちんと否定しないと本当にメイドにされると思い必死に説明した。
「別に私は強制的にメイドにさせようという訳ではありませんの。こちらが提示する内容で決めてもらって構いませんので。もちろん私は貴方の要望なら出来る範囲で実現させてみせますわ」
とても自信ありげに言ってきた。
「ま、まあ内容次第ではやぶさかではありません」
ボクの乙女の部分がメイドになってもいいやとなっていた。
「ご希望に沿えるようにいたしますね」
おそらくボクがメイドになってくれそうと思い少女はご満悦な顔をしていた。
「それではこちらが貴方に対する対価と業務内容をまとめた物になります。」
少女からではなくメイド長から渡された紙には目を見張った。まずは給料だ月給で100万と書いてあった。そして業務内容は私の命令に従う事それだけだった。
給料には目を惹かれるものがあったが命令に従うというのが引っかかる。
「あのこの命令に従うっていうのはいったいどういう事ですか?」
「文字通り私の命令に従ってもらうだけよ。私が掃除をしろと言ったら掃除をし、料理を作れと言ったら料理を作るそれだけよ」
それだけ聞くと聞こえはいいが要するにボクはこの少女が死ねと命令したら死ななくてはいけなくなるという事だ。
「その命令は絶対ですか?」
ボクは女装が好きだからメイドになる事はいいが流石にまだこの少女のためには死ねない。まだ素性もわかっていないのだから。
「絶対ではないわ。でも基本的には従ってもらう。流石に犯罪を犯せなどの無理難題は言わないから安心してちょうだい私はここに住んでいる皆んなを家族だと思っているから」
安心はしたがこの少女“の”メイドになるにはまだ足りない。
「条件は申し分ないのですがボクはまだ貴女の事をよく知りませんし、まだ将来の事で悩んでいるので貴方のメイドにはなれません」
ボクは今の気持ちを精一杯伝えた。
「わかりましたそれでは貴方に私の事を知っていただくために一緒に生活をしましょう」
「はい?なぜそうなるんですか?」
ボクたち市民とお金持ちでは価値観が違うのだろうそうに違いないじゃないとこんな提案してこないだろう。
「貴方は将来のことに悩んでいて私は貴方をメイドとして雇いたい。そしてメイドになってもらうためには私の事を知ってもらう事が必要。メイドになってくだされば将来的にはここに住むことになるし業務内容も知ってもらえる。一石二鳥じゃありませんこと?」
「いやでも…」
「もちろん貴方の意見が最優先ですわ。夢を見つけたり私の事を信用出来なかったりしたらこちらとしても諦めますわ」
「とりあえず両親と話したいので今日は帰っていいですか?」
このまま流れに流されて本当に一緒に住むことになりそうだったから逃げる事にした。
「わかりましたわそれでは手土産を差し上げますのでご両親にお渡しください。そしてこちらが私の名刺ですわ。良き返事をお待ちしております。」
その手土産はとても高級そうな茶菓子と紅茶とコーヒーだった。そして名刺には日本三代企業のうちの1つ四星株式会社と書かれていた。どうりでこんな豪邸なんだとボクは妙に落ち着いていた。
自宅まで送ってもらい家に着いた。
「ただいま…」
今日の疲れがドッときたようでボクはお母さんに手土産を渡し何も説明しないまま寝てしまった。
「おはよう」
まだ昨日の疲れが残っていて体がだるい。
「
お母さんはボクが疲れているのをわかっているのかいつもより優しい口調で言ってくれた。
「四星のお嬢さんにメイドになってくれって頼まれた。でもまだ何にも知らないからお母さんたちと相談してから改めて返事をするっていう事があったんだ」
ボクは包み隠さず言った。
「いいんじゃないか?父さんは薫に任せる」
「母さんも父さんと同じだわ自分の人生は自分で決めなさい」
てっきり否定するのかと思っていたが意外と好印象だった。
「四星なら給料もいいだろうからな」
「そうね」
ボクは今にも殴りそうになったが理性が働き踏みとどまった。
「でももし酷い事をされたり逃げ出したくなったらいつでも帰ってこい」
「そうよここはあなたの家だからね。いつでも帰ってきなさい」
2人がこんなにボクのことを想ってくれるのが嬉しくて泣きそうになった。
「ちょっと待ってなんで行く前提なの?」
「え?だってあなた小さい頃はメイドさんになりたーいって言ってたから」
「夢が叶って良かったなと思っていたが違ったのか?」
「え?そんな事言ってたの?何も覚えてないんだけど」
ボクは小さい頃から女の子の格好はさせられていたけどまさかメイドになりたいなんて言ってたとは自分のことながら信じられない。
「まあやりたいんだったら行ってきたらいいし、やりたくないんだったら断ればいいじゃないか」
「うん…ちょっと考える」
ボクはそのまま自室に戻った。
メイドになれば将来安泰だろうし女装を否定される事もないでも問題はあの少女だ。どのような性格かもまだ分からないし、次あそこに行ったら監禁されるかも知らない。
でもボクは少女が言っていた使用人を家族だと思っているという言葉を信じていいのか分からなかった。
ボクは名刺を取り出し電話をした。少女が嬉しそうな声色で出た。
「もしもし返事をお聞かせ願えますか?」
「貴女のことはまだ何も知らないので1週間だけ一緒に生活をして決めます。ですが1つ約束をしてください」
「もちろんですわ何でも言ってください」
少女はとても嬉しそうだった。
「ボクに嘘をつかないでください。それだけです。」
「分かりましたわ明日迎えを寄越しますので服や日用品の準備をして待っていてください。それでは楽しみに待っております。」
そこで電話は切れた。これからボクの生活がどうなっていくのかは神のみぞ知る。
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