キュンキュンアプリ〜10歳のイケおじ〜

ありんこるん

キュンキュンアプリ

 私、潮田みれいは、中学2年生。黒髪のロングヘアーをなびかせながら、毎日学校に通う14歳。特筆すべき特徴もなく、成績も運動能力も中の上。唯一の趣味と言えば、スマホいじり。そして、密かな夢は、漫画みたいな胸キュンの恋をすること!


 ある日の放課後。教室の窓際の席で、私はいつものようにスマホをいじっていた。そのとき、友達から教えてもらった新しいアプリ「キュンキュンキュン」をダウンロードした。


「このアプリ、AIが理想のお相手とマッチングしてくれるんだって!」


 友達の興奮した声が耳に残る。ドキドキしながら、プロフィールを入力。


 すると、突然のマッチング通知!


『キュンキュンキュン!理想のお相手が見つかりました!』


 画面に表示された相手のプロフィール写真は、まるで雑誌から抜け出してきたようなイケオジ。思わず、心臓が「ドキンッ」と跳ねた。


(まさか...これって、運命の出会い!?)


 数日間、アプリを通じてやり取りは続いた。相手は優しくて、面白くて、私の言葉にいつも適切な反応をしてくれる。夜中まで、スマホを離せなくなっていた。


 そして、ついに決断の時が来た。


『会いたい』


 相手からのメッセージ。私の頭の中で「キュンキュンキュン」と音が鳴り響いた。


(ヤバい...でも、行っちゃう...!)


 待ち合わせは休日の昼下がり。私は早起きして、3時間もかけて念入りにメイク。お気に入りのワンピースに、ちょっとだけヒールのある靴。バッチリ大人の女性!(のはず)


 ドキドキしながら公園に到着。ベンチに座っている人影が見えた。


(あ、あれが運命の人...!)


 近づいてみると...


「えっ!?」


 目の前にいたのは、完全なるイケおじだった。


 身長は170cm以上はありそう。スリーピーススーツに高級そうなネクタイ。髪は七三分けで、こめかみには少し白髪も。渋い顔つきで、目元にはしっかりとした笑いジワ。ポケットからは高級な懐中時計のチェーンが覗いている。まるで、大企業の社長か、はたまた外資系コンサルタントのエリート。


「やぁ、みれいちゃん。ボクが澤口純二ってやつなんだけどさぁ。『キュンキュンキュン』アプリの開発者でもあるんだよねぇ」


 低くて渋い声。完璧な大人の男性の声。しかし、その口調は妙にゆったりとしていて、どこか憎めない雰囲気が漂う。


 その瞬間、私の頭の中で「ガラガラガラ〜ン」と音が鳴った。まるで、パチンコで大当たりした時みたいに。


「はぁ!?ちょ、ちょっと待って!あなたが...私とずっとやりとりしてた人?しかも、アプリの開発者!?」


 純二さん(もはやくんとは呼べない)は優雅に立ち上がり、紳士的に会釈した。


「そうそう、その通りなんだよねぇ。驚いた?実はさぁ、ボク10歳なんだよね。小学4年生ってやつ。人生何があるかわかんないもんだよ」


「えええええええ!?」


 思わず大声を出してしまった私。周りの人が振り向く。


「冗談でしょ?だって、完全におじさ...いえ、素敵な大人の男性にしか見えないよ!?それに、アプリの開発者!?」


 純二さんは微笑んだ。その笑顔には、どこか子供のような無邪気さが。


「冗談じゃないんだなぁ。ボクはね、早熟な天才児ってやつでさ。心も体も大人並みに成長しちゃったわけ。でもね、戸籍上は確かに10歳。このアプリもボクが作ったんだよ。AIを使って理想の相手とマッチングさせる...でもね、みれいちゃんとは特別なんだ。AIじゃなく、ボク自身がみれいちゃんとやり取りしてたんだよね」


 私の頭の中で、歯車がギシギシと音を立てて回り始めた。10歳?イケおじ?アプリ開発者?


「ちょっと待って!これって詐欺?それとも隠し撮りカメラ?」


 純二さんは首を傾げた。その仕草だけが、かろうじて子供らしい。


「そんなことないよぉ。ボク、本気なんだよね。このアプリを作ったのも、みれいちゃんのような素敵な人に出会いたかったからさ。人生何があるかわかんないもんね」


 その言葉を聞いて、私はハッとした。確かに、私だってドラマや漫画の恋愛に憧れてた。でも、目の前にいるのは、その夢をはるかに超えた現実。


「でもさ...私、中学生だよ?見た目は完全に大人だけど、あなた本当に10歳なの?そして、このアプリって...」


 純二さんは真剣な眼差しで答えた。


「年齢はただの数字さ。大切なのは心だよね。ボクの気持ちは本物なんだ、みれいちゃん。そしてね、このアプリは人々を幸せにするために作ったんだよ。でもさ、みれいちゃんとの出会いで、ボク自身が幸せを見つけちゃったんだよね。人生何があるかわかんないよ」


その瞬間、純二さんの表情が妙に幼く見えた。どこか寂しげで、でも強い意志を感じる目つきに、私の心が揺れた。


(あれ...?なんか、キュンってした...?いや、待って。これはイケおじ姿に惑わされてるだけよ!でも、この気持ちは...)


「ねえ、純二く...さん。本当の気持ちは?」


 純二さんは少し躊躇してから、ポツリと言った。


「正直さぁ...ボク、寂しかったんだよね。周りの子供たちとは馬が合わないし、大人たちはボクを奇異の目で見る。だからさ、このアプリを作ったわけ。でもね、みれいちゃんとなら...本当のボクでいられる気がするんだよなぁ」


 その言葉を聞いて、私の中で何かが変わった。目の前にいるのは、大人の姿をした子供。その奥には、10歳の少年の心があるんだ。


「純二さん...私も、なんだか胸がドキドキしてる。これって...アプリの効果?」


 純二さんの目が輝いた。まるで、初恋の人を見つめる少年のように。


「いやいや、これは本物の気持ちだよ。アプリはね、出会いのきっかけに過ぎないんだよね。大切なのは、ここから二人で紡いでいく物語さ。人生は自分で作っていくもんだからね」


(うわ...なんか、カワイイ...!って、待って。これ、おじさんなのか小学生なのかどっち!?)


「みれいちゃん、ボクと付き合ってくれない?そしてさ、一緒にこのアプリをもっと素晴らしいものにしていかない?人生一度きりだしさぁ」


 突然のプロポーズと提案に、私は頭が真っ白になった。でも、口からは自然に言葉が。


「う、うん...いいよ。付き合うのも、アプリの開発も...一緒にやってみたい」


 その瞬間、純二さんが飛び上がって喜んだ。その姿は完全に10歳の男の子そのもの...なのに、背が高すぎて木の枝にぶつかってしまった。


「いてて...まぁ、こんなこともあるよね。人生山あり谷ありだよ」


(あ、やっぱり子供だ...でも、なんかキュン...)


 その日以来、純二さんと私は不思議な恋人関係に。年齢も見た目も違うけど、お互いの「変わったところ」を認め合える仲になれた。


 デートの合間に、私たちは「キュンキュンキュン」アプリの改良にも取り組んでいる。純二さんの天才的なプログラミング技術と、私の「女子中学生的感性」を融合させて。


「みれいちゃん、このアイデアいいねぇ。ボクたちの恋みたいに、みんなが素敵な出会いができるアプリにしていこうよ。人生、出会いが全てさ」


 周りの目は気になるけど、この気持ちは本物。小さいけど、確かな恋。


 そして今、私と純二さんは週末ごとに公園でピクニックをしながら、新機能のアイデアを出し合っている。彼の大人びた外見と子供らしい内面。その両方を愛おしく思う自分がいる。


「みれいちゃん、ボクね、大きくなったら...あ、もう十分大きいか。えーと、正式に大人になったら、ちゃんと結婚しようね。そしてさ、このアプリを二人で大きく育てていこう。人生何が起こるかわかんないけど、二人なら乗り越えられるよ」


 真剣な顔で言う純二さん。それを聞いて、私は思わず吹き出してしまう。


「もう、純二さんったら!まだ早いってば!っていうか、戸籍上は私の方が先に成人するんだけど...でも、アプリの方はどんどん良くなってるよね」


「そうそう、アプリは順調だねぇ。でもさ、一番大切なのは二人の気持ちだよ。アプリはただのツールさ。人生、テクノロジーに振り回されちゃダメだよ」


 これが私の「小さな恋」。イケおじな見た目の10歳の天才児と、普通の女子中学生。そして、二人を結びつけた奇妙なアプリ。


 みんなが認める恋じゃないかもしれない。でも、私たちにとっては、かけがえのない大切な恋。


 純二さんの横顔を見ながら、私は思う。


(やっぱり、恋に年齢は関係ないのかも...見た目も関係ないのかも...そして、きっかけが何であれ、本物の気持ちが大切なんだ)


 こうして、私たちの「小さな恋」と「キュンキュンキュン」アプリは、今日も進化を続けていく。


 おわり...


 と思ったそこのあなた!実は、この物語はまだ終わっていません。


 なんと、私たち...というか、主に純二さんの暴走で、この「キュンキュンキュン」アプリ、あなたの端末にもひっそりとインストールされちゃってるんです。


 え?気づいてなかった?そりゃそうですよね。だって、純二さんが作ったんですから。天才的なハッカー兼プログラマーの彼が作ったアプリが、普通に見つかっちゃったら、それこそおかしいです。


 でも、安心してください。このアプリ、悪いことは一切しませんから。ただ、あなたの心にそっと「キュン」を届けるだけ。


そう、あなたが今感じているその胸の高鳴り、顔のほてり、それこそが「キュンキュンキュン」アプリの効果なんです。


あ、でも焦らないでください。別に、イケおじな見た目の10歳の天才児があなたの前に現れるわけじゃありません(たぶん)。


このアプリの目的は、日常のちょっとした瞬間に「キュン」を感じてもらうこと。例えば、道端で見かけた可愛い犬、美味しそうなケーキ屋さんのショーウィンドウ、たまたま目が合った電車内のイケメン...。


そう、人生のあらゆる場面で「キュン」はあふれているんです。このアプリは、そんな「キュン」をちょっぴり強調してくれるだけ。


きっと純二さんならこう言うでしょうね:


「人生ねぇ、ちょっとしたことで輝くもんなんだよ。このアプリはそれを手伝ってるだけさ。キュンってするかどうかは、結局のところ自分次第なんだよねぇ」


だから、これからも胸がキュンキュンしたら、それは純二さんと私からの小さなプレゼントだと思ってください。


あ、もちろん、アプリを削除したければいつでも削除できますよ。でも...本当に削除しちゃっていいんですか?あなたの人生から、ちょっとしたドキドキ、わくわくを奪っちゃっても...?


なんて、冗談です(半分くらいは)。


このアプリの使用は自己責任でお願いします。そして、もし素敵な出会いがあっても、相手が本当に10歳のイケおじじゃないことを祈ってます。


それでは、あなたの「キュン」な人生を心よりお祈りしております!


追伸:

純二さんの誕生日プレゼント、最新のプログラミング書籍にしようか、それともネクタイにしようか迷い中。

この恋、やっぱりちょっと難しいかも...?でも、それも含めて「キュン」かな。


純二さんなら、きっとこう言うんでしょうね:

「プレゼントねぇ...なんでもいいよ。みれいちゃんの気持ちが大切なんだよ。人生、細かいことは気にしちゃダメだよ。それよりさぁ、一緒にアプリの新機能考えようよ。人々の人生をもっとキュンキュンさせちゃおうぜ!」


追伸の追伸:

もし、あなたの周りでも「イケおじな10歳の天才児」を見かけたら、それは...まあ、気のせいだと思ってください。絶対に純二さんじゃないので。たぶん。


純二さん風に言えば:

「人生ねぇ、時々奇妙なことが起こるもんさ。でもそれも、人生の味わいってもんだよ。ただ、ボクに会えたのはみれいちゃんだけにしておこうかなぁ。一つの奇跡で十分さ」

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キュンキュンアプリ〜10歳のイケおじ〜 ありんこるん @silcload

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