混迷
遊星視点・2
※
「何、だよそれ……」
暁の話を聞いて、遊星は怒らずにはいられなかった。
事実を知った今となっては、召還は誘拐と同意である。自分達で何とかするのではなく澱みを魔王に押しつけ、更にその魔王を異世界人である勇者に殺させるなんて、どこまで他力本願なのかと思ったからだ。
「驚いたか?」
「むしろ、怒るだろ!? 俺はともかく、暁は普通に生きてたのに……何であっさり受け入れて、殺されようとしてんだよっ!」
「……ともかくじゃない」
「えっ?」
「お前の死は、ともかくなんて軽く済まされるものじゃない! たとえ、お前自身だとしてもだっ」
納得出来なくて、思わず目が潤む。
そのまま睨みつけて怒鳴った遊星に、暁もまた声を上げた。先程までの笑みが消え、遊星同様に悔しそうな表情になっていたおかげで遊星の頭も冷えた。
「……悪い」
「いや、多分俺のせいだから……だけど、だからこそもうお前に死んで欲しくない。この世界で、遊星が生きていく為には……ティエーラの澱んだ魔力を宿した魔王、つまりは俺が勇者に討たれないといけない。そうしないと、世界が滅ぶ」
そこで一旦、言葉を切って暁はふ、と自嘲するように赤い瞳を細めた。
「友達に、こんなことを頼むなんて酷いと思うよな……だけど、遊星は友達じゃないから」
暁の言葉に、胸が痛む。
そして自分から突き放しておいて、傷つく自分に呆れながらも何とか暁に笑って見せた。
「っ……そう、だよな。でも、お前がどう思っても、暁は俺にとって大切な友達だから」
「違う、そうじゃない……お前のことが好きだから、愛してるから……忘れてほしくない。俺をその手にかければ、俺は永遠にお前に刻み込まれるだろう?」
「……えっ?」
好き? 愛してる?
男友達には本来、使われない言葉のチョイスに遊星の頭の中は疑問符が大量発生した。
そんな遊星にとどめを刺すように、暁が吐息の触れそうな距離まで顔を近づけてきて――抵抗するのではなく、けれどどうしていいか解らずにギュッと目を閉じたところで。
「初対面ですが、あなたとは意見が合わなそうですね」
冷ややかな第三の声が届き、ハッとして目を開けると――暁同様に唐突に現れたアルバが、声同様に冷ややかな視線を暁へと向けていた。
「僕なら、愛する存在は……遊星は、大切にして守ります。だから、離れろ!
そしてアルバは、光の障壁で遊星を包むと共に光属性の攻撃魔法――光で覆い尽くし、闇属性の敵を殲滅する呪文を唱えようとする。
暁もだが、アルバにも告白のような言葉を告げられて遊星のキャパシティは限界だった。とは言え、とにかく二人が戦うのを止めなくてはいけないことだけは理解出来た。
「待てっ……俺の為に、争わないで!」
「「っ!?」」
「って、何言ってんだよ俺っ! ヒロイン気取りかっ!?」
そして暁とアルバが止まってくれたのは良かったが、己の発言に遊星はたまらずツッコミを入れて頭を抱えた。
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