四度目は睡眠コアラ
@kyosoyo20
四度目は睡眠コアラ
ドン!
塾から帰ってきてすぐにベッドにダイブする私。疲れた、と思いながら明日のアラームを設定する。夏休みが終わり、再び学校が始まってから一週間がたった。夏休み中は学校が始まるのが憂鬱だったが、始まってしまえば友達にも会えて、部活もなんだかんだ楽しい。でも一番の問題、それは睡眠時間が短いこと。睡眠がとにかく好きな私にとって、それは学校を憂鬱にさせる最大の原因。またもや六時起きの毎日。毎日好きなだけ寝られれば良いのにと思うが、そういう訳にはいかず、また今日も寝落ちする。
ふあああ〜〜〜、よく寝た。
大きく伸びをする。呼吸をするとともに、風が吹き抜けるかのような透明感のある香りがすーっと鼻に入ってくる。ん?そういえば、いつもは何十回ものアラームのスヌーズ機能との格闘を経ていやいや起きるはずが、今日はその記憶がない。とても気持ちよく朝を迎えてしまった。また大寝坊をしてしまったのかと焦って飛び起きる。木から落ちそうになり、慌てて枝にしがみつく。ん?木?またもや疑問を抱く。驚いて周りを見渡すと、時刻は昼下がりであろうか、そこには果てしなく森が続いている。私は木の上にしがみついていて、目の前には葉っぱがある。自分の体を見ると、灰色のフサフサした毛と、長い爪のあるザラザラでゴツゴツした前足。コアラか?ということは、目の前の葉っぱはユーカリか。ユーカリって毒があったよな、食べて大丈夫なのか?と思いつつも、そうだコアラだもんな、と謎の納得をして、躊躇いもなく口に入れる。再びスーッとした香りがする。さっきの匂いはユーカリの葉っぱだったのかと思い出す。あまり美味しくはないが、樹木の青さを感じられて爽やかな気分になる。そうか、私はコアラになってしまったのか、と思い、不思議な状況にも関わらず謎に冷静だった。独特の風味がクセになり、近くにある葉っぱを食べ漁る。コアラはユーカリの毒を解毒するために一日のほとんどを寝て過ごすことを思い出す。食べたらずっと寝てるだけでいいの最高だな、と笑みを浮かべる。満腹になったが、散歩がしたくなったので木を降りて地面を歩いてみる。他の木の上に一匹のコアラを何度か見かける。集団のコアラは見かけない。コアラって単独行動をするのかな、なんて思いつつまた木の上に登り、枝にもたれかかった。
ウヴォヴォヴォヴォ~ビィー
突然、鳴り声のような、唸り声のような音が聞こえてきた。怖いと思ったのに、その変わった鳴き声を聞くと不思議なくらい急に睡魔に襲われて、気がつくと枝にもがれかかったまま眠ってしまった…。
ジリリリリリリリリリリ!!!!
ふあああ〜〜〜、よく寝た。
大きく伸びをする。寝起きもよく、気持ちの良い朝だ。また大寝坊をしてしまったのかと不安になるが、違う。今日はスヌーズ機能との格闘はなく、一回目のアラームで起きることができた。たまにこんな朝もある。良い気分のまま支度をして学校に行く。
あ、きた!昨日どうしたの?
クラスの友達数人に囲まれる。昨日の記憶が全くない私は、キョトンとする。どうやら昨日、私はなんの連絡もなく学校を休み、友達だけでなく先生も心配していたらしい。クラスの友達といつものように他愛のない会話をする。確かに、友達と会うのも、会話を楽しむのも、どこか久しぶりな気がする。楽しいな、とふと思う。
昨日のプリント全部机の上に置いてあるよ!
あ、ありがとう!!
そう答えて、チャイムが鳴る。急いで自分の席につき、ほっと一息ついて机に目を向けると、そこにはニコッと笑ったコアラのキーホルダーが置かれていた。キーホルダーを持ち上げると、どこか覚えのある風が吹き抜けるかのような透明感のある香りがした。なんだかそのコアラの顔は私に似ているような気がした。私はそのキーホルダーを手に取り、自分のリュックにつける。チンパンジー、シャチ、ハシビロコウに続き、四つ目のキーホルダーだ。今日も楽しい一日が始まる。
四度目は睡眠コアラ @kyosoyo20
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます