第8話 黒幕は……
キャスパルが
ペディウスの手配により、デリルたちは帝都城にあるゲストルームに待機していた。
「こんなに物々しいと帰るに帰れないわね」
デリルは落ち着かない様子でゲストルームのソファに座っている。この部屋の入口にも武装した兵士が警備のために配置されている。
「ま、そのうちあの大臣も目を覚ますだろ」
エリザは楽観的に言う。しかし、ネロは真剣な表情で考え込む。
「黒幕はキャスパルでは無かった……。では誰が……?」
ミゲイルの国家反逆罪の容疑が晴れた事で、
「これが将校たちの首です」
ミゲイルは広場から撤去された首を1つ1つ確認していった。
「無念であっただろうな。まさか晒し首にされてしまうとは……」
ミゲイルは1人1人に別れを告げるように手を合わせる。最後の首を見た時、ミゲイルは弾かれたようにまた最初から首を
ミゲイルは
コンコンコン。
突然、ゲストルームのドアがノックされた。
「どうぞ」
デリルが声を掛ける。
「久しぶりだな、デリル」
そこには
「ア、アストラ!?」
デリルは
「お前、どうやってここまで来たんだ?」
エリザが
「ん? 普通に入口から入ってここまでやってきたぞ」
アストラは平然と答える。アストラにとっては厳戒態勢のこの部屋まで来る事などだだっ広い野原を散歩するのと変わらないのだ。
「そもそも入口にも見張りが立ってたでしょ?」
デリルがドアを開けて外を見る。そこには二人の兵士が幸せそうな寝顔を浮かべて壁に寄りかかっていた。
「ん? 寝てたぞ」
アストラはのんびりと答える。
「あんたが眠らせたんでしょ!」
デリルが突っ込む。「やっぱりあんたが黒幕なの?」
「あのなぁ……。どこにこんな登場をする黒幕がいるんだよ」
アストラは
「はぁ? なんで私が黒幕なのよ!」
デリルが訳が分からないという表情でアストラを見る。
「強いて言えば、だ。帝都がこんな状態になっている原因の一端はお前にある」
アストラは断言する。
「ひどい言いがかりだわ! 私は帝都なんて来たこともないのよ?」
「本当か? 本当にこの辺りに来た事はないか?」
アストラが問い詰める。デリルには全く心当たりがない。徐々にアストラを恐れるような目で見始めた。
「だって……本当に心当たりが……」
「もしかして、魔王の封印と関係がありますか?」
ネロが言うとアストラが驚いたようにネロを見る。
「ほう、
「どういう事?」
デリルはネロに尋ねる。
「ほら、先生は帝都領に魔王を封印したって言ってたじゃないですか」
「確かにそうだけど、どこだったか分からないわ」
デリルの言葉を聞いてアストラが大きなため息を
「お前……、魔王を封印しておいてその場所を覚えてないってのか?」
アストラは顔を右手で覆って頭を振った。「お前は
「悪かったわねぇ、どうせ記憶力は悪いですよ」
デリルは舌を出してべーっとアストラに向ける。
「……しかも、お前、ちゃんと手順通りに封印してないだろ」
「え? な、何の事かしら?」
「
アストラに
「でもしょうがないのよ、もともと封印するつもりなかったんだから」
デリルは弁解する。何しろ急を要したので慌てて封印したのだ。
「ここのところ、魔の波動が強くなっている」
アストラがふっと外を見る。「帝都の郊外から邪悪な気が
「まさか、その悪しき波動のせいで帝都が混沌としているんですか?」
ネロが言うと、
「君、こんな奴の弟子は止めて私の弟子になれ」
アストラは察しの良いネロが気に入ったらしい。デリルが鬼の
「ネロくんは私の大事な弟子よ。あんたなんかに渡さないんだから!」
「バカ、冗談だ。私は弟子など取らん」
アストラは呆れた顔でデリルを見る。「私は三年前にこの地にやって来た」
アストラが語る。三年前、魔王の悪しき波動をいち早く察知したアストラは、帝都を訪れていた。奇しくも帝都が王都を攻めようとしていた時期である。
人間には察知できないほど微弱な波動だったが、確実に帝都の人々を
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