説得(2)


 衝撃の事実。ナミミ様はヒモ。

 そう言いきって、ツーシさんはニコリと笑った。


「いいですかコガネさん。深刻なことは何もありません。ナミミ様ぐらいの年頃のバニーが一度ぴょんぴょんを覚えてしまったら、もう頭の中それしかなくなりますからね? 多分ナミミ様は今INT8.2です。どう屁理屈こね回したところで、どうやったらぴょんぴょんできるかしか考えてませんよ」

「えっ」

「そ、そんなことはないですよ!? 信じないでくださいコガネさん!」

「いや魔力の動きでバレバレです。どんだけ下腹部に貯めてるんですか、それ毎秒コシコシ状態ですよね? せめてハサミ様くらい取り繕えるようになりましょう」


 ハサミ様、取り繕ってたの!?

 あ、でもバルオウさん離さなかったりで片鱗は見えてたな……


「……まさか母様がいつも全身魔力みなぎってるのって……!?」

「ハサミ様そうだったの!? し、知りたくなかった英雄の裏側……!」


 驚愕するナミミ様とサナチ様。娘世代にはしっかり取り繕えていたらしい。


「そりゃ私だって好きな人と一生イチャイチャできるならそれ選びたいですよ。コガネさんみたく私を本気で『可愛いね、綺麗だね』って言ってくれる人と何も考えずに毎日ぴょんぴょんしてクイパシして働かずに過ごせるなら。ね、ナミミ様もそうなだけでしょう? 色々考えるの、めんどくさいですもんね?」

「え、っと」

「その生活を手放せ、って言えば、そりゃあ未練があって当然ですよねぇ」

「……はい」


 容赦ない正論パンチがナミミ様を殴りつける!

 おいこれサナチ様のビンタよりダメージあるぞ!?


「では大人らしくナミミ様の未練をサクッと解決しましょう」


 ぽん、と手を叩き、ツーシさんは俺に向かってニコリと笑う。


「コガネさんに質問です。働いててカッコいいナミミ様と、コガネさんのヒモになって自堕落へこへこウサギなナミミ様。どちらがお好みですか?」

「え? えーっと、そりゃまぁ、どちらのナミミ様も好きですけど……やっぱり働いていてカッコいいナミミ様、ですね。流石に今の堕落っぷりが続くのはマズイかなぁとは思ってました」


 いや、まぁ、身体がもつのであれば今の生活は俺にとっても最高なんだけど、ツーシさんからの「空気読んでくださいね」というアイコンタクト従って大人しくそう答える。


「こんな生活してたら当然子供出来ますよねぇ。このままだと将来子供に『ママはどんなお仕事してるの?』と聞かれたら、『パパのヒモよ』と説明する羽目になりますね? ねぇママー? ヒモってどんなお仕事かしらー?」

「ぐふっ」


 日本では専業主婦とか専業主夫とかあるけど、こっちだとそうなるのか、特にバニー視点で……!

 これは次期辺境伯領主として育ってきたナミミ様の価値観的には――クリティカルスマッシュヒット!!


 もうやめてツーシ! とっくにナミミ様のライフはゼロよ!?


「ちなみに領主になれば領地にこういうお店を作ってコガネさんにプレゼントもできますし、跡継ぎ作るのも仕事の一環なのでお店に通って真昼間からぴょんぴょんしても誰も文句言いません」

「ツーシ! 私、ムーンフォールに戻ります! 色々と片付けがあるので2日待ってください!」

「ちょっと!? 私との熱い友情は!? あと1日延びてる!」

「どうしたって1日じゃ終わらないので最低限必要な時間です! そしてコガネさんに好かれる方が重要に決まってるじゃないですか!!」


 うわぁ。一瞬で立ち直ったぞこのナミミ様。

 大人ってすごいや。俺はまだまだ未熟だった……!



―――――――――――――――――――――――――――――――――

(ここまで読んでいただいてありがとうございます!

 ★★★、フォロー、レビュー、❤で応援、感想等も頂けたら嬉しいです!

 X(旧Twitter)ボタン等で広めてくださると喜びます! ボタン↓↓)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る