しゃーないしゃーない!



「うにゃ……?」

「あ。おはようございますナミミ様」


 俺もひと眠りして、朝になって、それでもまだナミミ様は起きていなかったのでそっと寝顔を眺めていたのだが、ようやく目を覚まされた様子。


「……身体が、重いです……? はっ!?」


 ここでナミミ様は自分がバニースーツを着ていないことに気付き、ばっと体を起こす。

 すなわち下着姿の上半身や背中が見えて大変ご馳走様なのだが、それは一旦置いといて。


「……こっ、コガネ? 私はコガネにバニーを預けたのですか?」


 顔を真っ赤にして、布団で口元を隠しつつ俺に尋ねてくる。

 もしそうだったら――バニーを預けるって、多分レオタードひん剥かせて預けるとかそう言う感じの奴だろう――どれほどよかったことか。俺は、なるべく悲壮な面持ちで首を横に振った。


「ナミミ様。落ち着いて聞いてください。……ここは魔王国。俺達はイロニムに誘拐されました」

「!?」


 一転して、今度は顔をサァッと青くするナミミ様。


「そ、そんな……いえ、うっすらと覚えてます。コガネとコシコシをした後、イロニムに不意を突かれて」

「してませんしどちらかと言うと不意を突いたのナミミ様でしたよ? その上で負けてました」

「……私の記憶と現実に乖離があるようですね。夢を見ていたのでしょうか」


 ホントだよ。替われよナミミ様とコシコシした世界線の俺。


「あ、ナミミ起きたー?」

「!? イロニムッ!? あだっ!」


 バッ、と立ち上がろうとして布団に足を取られ盛大にこけるナミミ様。

 お尻が可愛らしいですね。ありがたや。


「無理しないでー。今のナミミはもうバニーガールじゃないんだから。ほら、朝ごはんできたよ、一緒に食べよ?」

「バニーガールじゃ、ない……」


 ぎゅ、と自身の腕を抱き、身を震わせるナミミ様。

 バニーガールであったなら、布団に足を取られることもなかったはず。自身の能力値の低下を実感しているのだろう。


「……というか、なんでイロニムは普通に私達と朝ごはんを食べているのですか!? 敵ですよね!? むしろ私の仇ですよね!?」

「え。だってバニーガールじゃなくなったナミミは敵じゃないもん。むしろ戦いを通じて何度も語り合った友達みたいな? あ、ご、ごめんね。勝手に友達だなんて!」

「えぇ……!? えーっ、と……」


 ナミミ様が俺をチラッと見る。


「あ。当面はイロニムにお世話になるっぽいので、機嫌は損ねない方がいいですよ。今のナミミ様、いわば捕虜ですし」

「あ、はい。確かに……わかりました、友達で良いです」

「目の前で相談されたうえに仕方なしに友達ってのもなんかちがくない!?」

「仕方ねぇだろ、お前がナミミ様のバニーを奪ったのが悪いんだぞ。人権奪った相手なんだから嫌われて当然だろうが!」

「そ、それはホントゴメンって。私だって四天王じゃなかったら普通に友達になりたかったよぉ!」


 俺とイロニムの気安いやり取りに、ナミミ様は困惑している。


「コガネはどうしてイロニム相手にそんなに気安く話せるのですか?」

「まぁ友達ですし。なんやかんやナミミ様の命までは取らないでくれたんで」

「いや、その。……今の私たちの生殺与奪は、彼女に握られているんですよ? 分かっていますかコガネ?」

「ん? それ、今までと何か変わりあります?」


 イロニムにかかれば、転移魔法を使っていつでも俺を殺しにこれたと言ってもいい。

 それなのに今更臆してもしゃーないしゃーない! ねっ、切り替えていきましょうナミミ様!

 俺がそう言うと、ナミミ様は「あっ……」と気まずそうに下を向いた。


「そ、そう、ですね……」

「とりあえず朝ごはん食べる? 冷めちゃうし。あ、ナミミの服用意してきたからこれ着てね。いつまでも下着って訳にもいかないでしょ」

「えっと、ありがとう、ござい、ます……」


 そう言ってナミミ様に清楚なワンピースを渡すイロニム。

 分かってんじゃねえか。こういうのでいいんだよこういうので。清楚なナミミ様にピッタリ過ぎてグッジョブだぜ!




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