機械問答【短編SF小説】

HIkosiki with ふたつぅ。

とある朝方

静けさが心地よい朝方。

汗がじっとり気持ち悪い朝方。

喉がカラカラ口内色々培養中の朝方。

要するに


ライコ「最悪…」


端末の時刻を確認すると午前5時まで後30秒程。

ため息をついてうな垂れながらもう一度


ライコ「最悪…」


ライコの悪態を合図として午前5時のアラームが鳴り響いた。

そしてドミノ倒しのように、アラームの次にライコの眠る寝室へ至る唯一の扉が開かれる。


ズラム「おっっっ!はよーーーーーっ!ライコお姉ちゃん!

    ホントお姉ちゃんは僕がいないと駄目だなぁ。

    僕がしっかりメンテナンスしてあげるからね♪

    はい!お口アーンしてアーン」


ライコ「んあ”」


掠れた呻き声を少し上げて抵抗終了。

後は野となれ山となれ

お口に棒を出し入れ出し入れ

時折、棒の先端が喉奥を押しつぶす。


ライコ「おえっ」


ズラム「ライコお姉ちゃん!」


心配するような声とキラキラした眼差しを携えたズラムが目の前に現れた。


ズラム「出るもの出し切ってもなお、胃液をひり出してるライコお姉ちゃん…はぁ、はぁ…」


ズラムの欲望がライコに降りかかろうとした瞬間、彼は吹っ飛んだ。

吹き飛んだ身体は壁にぶつかり、その衝撃で部品が一つ床に落ちた。


ズラム「ひどいなぁ、ライコお姉ちゃんは。

    僕みたいな献身的なショタ、同人誌を探してもいないのに~!」


ズラムの何気ない一言がライコのライコを引きずり出した。


ライコ「ショタがショタを自称した時点でショタの価値は無い

    同人誌の方がもっといいショタしてる

    そもそも、ショタが直Sという奇をてらう時点で逃げてるの

    ショタはね基本受け、いや、基部が受けなのよ

    そこから派生として天然ジゴロの誘い受け無自覚Sショタは有りよ、大有り

    でもね…」


ズラム「はいはいはいーーー!!!」


ライコ「では、そこのショタもどきに弁明権を与えましょう」


ズラムは綺麗なフォームで額を床にフィットさせて言った。


ズラム「勘弁してください!」


ライコ「か、勘弁ってなによ!」


わーわーきゃーきゃー騒がしい朝方。

それが二人の朝。


そして一瞬の静寂。


いつも通りの繰り返される静寂に対して彼はいつも通り繰り返し言った。


ズラム「お姉ちゃんは機械なんだよ」


ライコ「また?もう聞き飽きた」


ズラム「だからお姉ちゃんは機械なんだよ…」


ライコ「その因果関係はわからないけど、そうなんだ」


ズラム「え!自分が機械って事受け入れた!?」


ライコ「受け流したのよ

    なんだっていつもいつも、私がなんで機械なのよ」


ズラムがおもむろに立ち上がる。自然とライコを見下ろす形となった。


ズラム「だって…ライコお姉ちゃん頭にネジみたいなもの付いてるじゃん!!!」


ライコが顔を上げる。必然として二人の目線がぶつかる。


ライコ「いやいやいや、頭にネジが付いてるから機械て!

    いやいやいや、東雲なのかよ」


ズラム「でも、僕も頭にネジが付いてるよ」


ライコがズラムの頭頂部に目線を向ける。

そして、目線を戻した。


ライコ「そうだな、だからどうした」


ズラム「僕は機械です」


ライコ「そうだな、だからどうした」


ズラム「なのでライコお姉ちゃんも機械です

    三段論法ドヤピース」


ライコが床に転がった部品を手に取る。

細くて華奢な掌の上で部品を弄ぶ。


ライコ「それはない

    なぜなら私は人間だから」


ズラムはライコの返答が解りきっていたかのように

真っ直ぐな笑顔を放ち、ライコに返した。


ズラム「そっかぁ!じゃ、ご飯食べよっか!ライコお姉ちゃん!」


ライコは寝起きの不機嫌が無かったかのように足取り軽くズラムに引かれて自分の寝室から遠ざかっていく。


ライコ「朝ごはん何~?」


ズラム「六角ボルトと~、重油と~」


ライコ「機械じゃないんだからさー

    もっと軽いものにしてよ~」


ズラム「六角ボルト食うんかい!って突っ込んでほしかった…」


ライコ「よしよし、もっとショタっぽいボケを用意してね」


二人仲良く朝食だ。

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