第16話 ダンジョン協会に行ってみた

雑談配信の翌日、俺はのんびりと街を散策した後、ダンジョン協会に赴いた。

特に理由はない。あえて言うなら暇だったんだ。


探索者なんだから探索しろよって思われるかもしれないが、今は叔父さんからダンジョン協会内を改造するから遊んでてくれって言われている。

改造と言ってもダンジョン協会の建物が空を飛べるようになったり、ロボット化するとかではない。


逮捕された葛野を筆頭に、横領など様々な不正を行っていた職員を粛清して新しい人員を採用して配置して行っているみたいだ。

皆川さんは受付リーダーから受付係が所属する部門のトップになったらしく、めっちゃ忙しそうに目の前を通り過ぎて行った。


絶対に見せつけてるだけだろ、それ。


まぁ忙しそうなのは確かだから邪魔をする気はない。

本当に猫の手も借りたいくらいに忙しかったら、俺の配信に『ぼけぇ!!!!!』とか打ち込んでられないだろうしな。

おかしいな。綺麗系淑女さんで少し憧れるなぁなんて思ってた頃の自分は記憶の彼方に蹴り出しておこう。


とはいえ、俺も探索者だ。

探索をして、アイテムとかをドロップして、日銭を稼がないといけない。

なんて真面目なんだ俺は。


「今ダンジョン入れる?」

「えっ? あぁ、沖田様ですね。少々お待ちください。確認してまいりますので」

「あぁ、よろしく~」

はじめて見る可愛らしい受付の女の子……なんで巫女さんの格好してるのかはわからない……が応対してくれたので、ロビーの椅子に座って待つ。


ここはAランク以上の探索者のみが使える専用ロビーだから人が少なくていいな。

無料でジュース飲めるし。最高だ。コーラ♪コーラ♪ジンジャーエール♪コーラ♪


「沖田様~!」

「ほいほい」

4杯ほどジュースを飲んだころ、受付の子から呼ばれた。


「大変申し訳ないのですが、今は探索は控えて欲しいと……その……協会長から」

「叔父さんが? そっか、まだダメか~」

そもそもなんで俺が探索に行っちゃいけないんだろうか?


もしかして粛清で大変な時期に最高到達階層突破とかしたら処理が追い付かないからとか?

それなら……


「101層以降には行かない。なんなら98層とかで遊んでるだけでもいいんだけどな……?」

「あのとんでもないドラゴンが何百匹も転がってたという96層よりも先で遊んでるとか……」

試しに提案してみたら、斜め下を見ながらぶつぶつ言うだけの置物になってしまった。

あれ?

なにかまずかっただろうか?


一応また何杯かジュースを飲んでいたら受付巫女さんが復活して改めて問い合わせてくれたようだ。


コーラ♪コーラ♪ジンジャーエール♪コーラ♪


「すみません、東京ダンジョンには今は入らないでくれと言うことです」

「うぇぇ!?」

「ごっ、ごめんなさい。殺さないでください」

「いやいや、なんでそんなに物騒なんだ?」

そんなに怯えさせるようなことしてないよな?


「紘一君。そんなところで受付の子を脅してないで、こっちへ来てくれ」

つい、アワアワしてたら叔父さんがやってきた。助かった……。

と思って横を見たら、同じような顔を受付巫女さんがしていた……。解せぬ。


「すまんな」

「何か理由でも?」

「あぁ。先日お前たちが東京ダンジョンの100層をクリアしただろ。そうしたら世界ダンジョン協会にある石板に色が付いたんだが、黒じゃなかったんだ。中国は黒くなってて100層で終わりだったんだがな。それでさらに先があるダンジョンは黒にならないんだろうとなって、実は今、派遣された調査員が東京ダンジョンに入ってるんだ。それが終わるまで高位の探索者には東京ダンジョン探索を申し訳ないが控えて欲しいという申し入れもあってな」

「なるほど。俺だけじゃなく、高位探索者全員なんですね。つまり東京ダンジョンに入るのが問題だっただけですか」

「あぁ。どっかに入るか? 札幌とか?」

「寒いの嫌だなぁ。どうせ行くなら北京とかどうですか?」

昨日の雑談配信でのアンケートを思い出しながら話したのが失敗だった。


「国際問題を起こす気か!?」

皆川さんと同じような文句を言われたが、さすが叔父さんは紳士なだけあって『ぼけぇ!!!!!』とは言われなかった。


でもやっぱりダメらしい。

どうせクリアされてるんだから問題ないだろうと思うんだが、メンツとかプライドを刺激するなと言われてしまった。


だったら太平洋ダンジョンに行くかな。


そんな話をしていたら叔父さんの部屋の備え付けの電話が鳴った。

つまり日本ダンジョン協会長直通電話だな。


お偉いさんだったら面倒だからさっさと行こう……としたら叔父さんに肩を掴まれた。


なんでだよ。俺にも関係ある電話なのか?


「神谷です(英語)」

『世界ダンジョン協会のリーヴェルトだ。久しぶりだ、神谷君(英語)』


相手は世界ダンジョン協会会長のフローレンス・リーヴェルト。俺でも名前を知っている大物だった。

なお、聞き取れたのはこれだけだ。


叔父さんは俺が英語がわかると思ってここに残したんだろうけど、舐めるなよ?

なにもわからなかったぜ。


「というわけだ、紘一君。頼めるか?」

「なにを?」

「ん?」

「俺、全く英語わかんないんですが……」

「そうか……」

なんでそんなに残念な表情を……仕方ないだろ、ダンジョンに籠ってて学校そんなに行ってないし。

そんな俺に呆れながら叔父さんが説明してくれたところによるとこうだ。


・世界ダンジョン協会が保管している石板には高ランクのダンジョンを示していると思われる絵が描かれている。

・その石板には7つの絵があるとされているが、実際には10を超えている。

・恐らく100層で終わりのダンジョンと、先があるダンジョンが入り乱れていると思われる。

・太平洋ダンジョンに挑んでほしい。それで2項目が確定するし、そこが100層で終わりなのかどうかを見て来てほしい。


ふむふむ。

俺のやりたいこととも合致するから全く問題ないな。


よし行こう。


「ちなみに報酬は?」

「金銭的にと言うのは厳しいが……」

「ドロップアイテムの買い取りはしてもらえるんですよね?」

「それはもちろんだ。あとはそうだな。D7と太平洋以外の現在わかっている高位ダンジョンの場所の情報とかはどうだ?」

「北極にあると知ってるけど、やっぱり他にもあるんですね」

「あぁ……君は行ってみたいと思うだろう?」

「もちろんですね」


全部で10以上ある。太平洋と北極がそのうち1つで、D7も除くとして、あと最低でも1,2か所はあるな。大陸じゃない北極にあって、南極にないってことはないだろうし……それだけ未知の楽しい場所があるってことだ。

そもそも101層より先っていうのもあるしな。


カッコいいモンスターとか、宝物とか、凄いアイテムもまだまだいっぱいあるんだろうな~。

楽しみだ!

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