Sランクパーティーでスキル《抗老化》持ちの俺を口封じのために殺そうとしたクソババアども並びに腐った貴族諸君に告ぐ、断罪の日は近いぞ?
ハチシゲヨシイエ
第1話 6人のクソババア
拝啓。親愛なるあなたへ。
なんて。
親愛なる人なんて、この人生で一度も巡り合えなかった僕が使う言葉じゃないんですけど、すみません、聞いてほしくて。
あなたは、ノスカント大陸が一国、皇族エルアーティー家が統治する、『聖トーチラス皇国』をご存じですか?
いいとこですよ、トーチラス。
皇国を、西と東に分断するように流れる大河「デモノ・コレロ」は清く美しい。
小鳥たちはさえずり、鮮やかな草花しげる豊穣の地が広がっている。
名産の「トーチラスベリー」は甘酸っぱく、練乳との相性は抜群なんです。
チューカボアのボア肉を、刻んだ野菜とまぜ、小麦粉を水でといた皮に包んで焼いた「焼きジョウガ」、「翼付きジョウガ」なんてのもオススメです。
もちろんこのご時世、モンスターはたくさん出没します。でも、モンスターが皇国近隣の森に押し寄せれば、皇国自慢のギルド『
え?説明している僕?
ああ、まだ親愛どころか他人でしたね、すみません。
何を隠そう、この僕は、トーチラス最強のSランク勇者パーティー『
……すみません。パーティーの名前で自慢して、情けないですよね。
いや、……はぁ、……すみません。マジで、情けない。
男とか女とか、そんな古い価値観にとらわれた世界じゃないのはわかってます。
でも、僕は男だから、勝手に自分を情けないと思ってしまう。
なにせ、僕が属する『
「白の烏」の絶対リーダー、チャーチャル=プライド(職業:勇者)
「白の烏」の№2、マーサー=エンヴィオ(職業:戦士)
「白の烏」の治療師ヒーラー、フィーノ=アヴァルロ(職業:僧侶)
「白の烏」の頭脳、ソクテナ=グラトニー(職業:魔法使い)
「白の烏」の暴れん坊、ガクロ=スロース(職業:武道家)
「白の烏」の真打ち、シータィ=ラスト(職業:召喚術師)
『
一人一人はBからAランクかもしれない。
けれど、彼女たちのチームワーク、絆の強さが相乗効果を生み出し、トーチラスの五本指に入る最強パーティーになったんです。僕は言うなればお荷物、荷物持ちのお荷物。何の役にも立たない。
強いて言えば、固有スキルが≪
たったこれだけ。
――この世界では、誰もがそれぞれの固有スキルを持っている。――
≪火炎≫、≪筋力強化≫、≪霊獣召喚≫とか、生まれながらにモンスターを蹴散らし、勇者や戦士になることを宿命づけられている人がいる中、僕の固有スキルは≪
あ、ちなみに固有スキルは遺伝子とは一切無関係のガチャですからね?
うちの父親は≪模倣≫、母親は≪神速≫という強めなスキルでしたし。
若いころはA級ランクの勇者として、結構有名だったんですって。そのおかげで、僕のスキルが≪
「こんなクソ雑魚スキルの息子がいるなんて、世間の笑いものだ!!」
「なんで生まれてきたの!?そんなに悪いことした私!?本当に死んでくれない?」
「死ねよ。死んでくれたらちゃんと墓を作ってやるからさ、頼む、頭下げるから、死んでくれ。本当に恥ずかしいんだ」
「産んでごめんね、そんな雑魚スキルに産んでごめんね。私が全部悪いでいいから、お願い、死んで」
……14歳になった誕生日に家を出て、浮浪者のようにさまよっていた僕を仲間に入れてくれたのが、リーダーのチャーチャル様だ。
≪
僕の力は、皆さんのシワやニキビを完全に消したり、老化を抑え、ある程度若返らせるだけのスキルにすぎないのに。ただの荷物持ちのお荷物、美容部員にすぎないのに。
≪一生みなさんに恩返しがしたい!≫
僕は毎夜毎夜、感謝の気持ちを胸に床についていた。幸せだったんだ。
「今日で解散よ」
「……はい?」
「解散するのよ」
「命落としのダンジョン」と呼ばれる禁域へ踏み込んだその日、危険度Aの凶悪モンスターがオンパレードのフロアにて、「白の烏」のリーダーであるチャーチャルが告げた。
なんて勇者らしいんだ。
凛々しく清々しく、神々しい眼差しを僕に向けていった。ブロンドの髪をなびかせて。
綺麗だ。そんな彼女の言うことは、何といっても絶対だ。他のメンバーもみんな納得済みのようで、うんうん、うなずいている。
「えっ、……え?…………えっ、……すみません。えっ、あ、…え、えっとぉ、……なぜですか?Sランクになれて半年、今が全盛期といってもいいくらい皆さんは最高です。」
「今が最高だからよ」
色黒い肌が魅惑的な№2のマーサーが、豹のような好戦的な双眸を細めて、猫なで声で言った。
「ユナ君には言ってませんでしたが、先月ガクロさんが結婚しました★」
最年少の、明るく元気なツインテールの召喚士、シータィがオレンジ髪を揺らして言った。
「ええええええ!!!?ご結婚なさってたんですか!!!!おめでとうございます!」
「おおきにやでユナ」
赤髪ショートカットのガクロが、汗をかいた胸元をカリカリかきむしりながら、気にも留めないようにお礼を言った。
「それで、それが?あ!もしかして、妊娠されているとか?それで活動休止とか?」
「たわけ。検討違いもはなはだしい」
白装束の僧衣に身を包んだフィーノがたしなめる。
「これで全員既婚者なんだ★」
「キコンシャ?」
「結婚してるってことだ、坊や」
眼鏡をくいっと直し、「白の烏」の頭脳、ソクテナがつらつらとしゃべりだす。
この2年以内で、僕以外の6人は大恋愛の末に結婚したということ。
相手は王侯貴族、全員が玉の輿であること。
相手が全員二十代の高身長イケメンであること。
そして、彼女たちの実年齢を告げていないこと!
「え?」
嘘だろ。皆さん本当に御綺麗で魅力的だ。だけど、
「白の烏」の絶対リーダー、チャーチャル=プライド(実年齢:41)
「白の烏」の№2、マーサー=エンヴィオ(実年齢:39)
「白の烏」の治療師、フィーノ=アヴァルロ(実年齢:45)
「白の烏」の頭脳、ソクテナ=グラトニー(実年齢:40)
「白の烏」の暴れん坊、ガクロ=スロース(実年齢:40)
「白の烏」の真打ち、シータィ=ラスト(実年齢:37)
実年齢を言わないのは詐欺じゃないか!!!!!!
本来、僕の固有スキルの効力は、激しょぼだった。が!当代屈指の魔法使いであるソクテナさんの指導のおかげで、≪
一緒にいる人たちが若く美しくいるのは気分がいいし、僕のスキルを頼ってくれるのは心底うれしかったから、ただただ≪
「……王族を騙したんですか」
「人聞きが悪いな坊や。惚れさせただけだ、我等の本来の魅力で」
「いやいや!嘘はダメじゃないですか!?」
「そう。嘘はダメなんだよ実際★ばれたら婚約破棄は必定なんだ★」
「だからうちらはきれいさっぱり隠し通すことにした」
「我が国で婚約破棄の異議申し立てが認められるのは、婚約してから満三年。バレずに耐えしのげば、それ以降はいかなる申し立ても棄却できる」
「それで私たちは、これまで私たちの実年齢をしるものは、両親であっても全員葬ってきたんだ」
笑顔でチャーチャルが言う。他の5人も同様の細め笑顔でにっこり微笑む。
いやいやいやさらっと親殺しカミングアウトー!!!!!!やっば!!!!!!!まじのまじで、きんもっ!!!!!!
恩人たちとはいえ、心の底から軽蔑した。気持ち悪すぎだろこのオバハンたち。
「ソクテナの見立てでは、あんたの効力が完全に切れるのは4年。あんたが今死んでも、うちらの若作りは3年以内にはバレない」
「今死んでもって……?え?」
「ユナ君が死んだあとは、自分たちで若作りがんばるからね★」
「たとえ嘘がバレても、3年後なら正式な離婚手続きがされて、慰謝料もたんまりもらえる。一生分の財産は十分手に入る」
「14歳のころから面倒も見てきたユナがいなくなるのは本当につらい。だけど、私たちは、ちゃんと前を向いて生きていくから」
「「「「「「だから、お願い、死んで」」」」」」
ダンジョンで僕は、信じていた仲間に、口封じのために殺される。
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