第6話 【仙道 莉来】は決意する
あれから数日後、関野峰さんから連絡が来た。
『しました。どうやら最近彼女が相手にしてくれなくて相当溜まっていたみたいです。私的にも結構満足できました。もしかしたら、私と付き合ってくれるかもしれないとのことでした』
なるほど...。
作戦自体はどうやら成功したみたいだ。
仙道に言った通り、最近はキスもハグすらもなるべくしないように、されてもやんわりと拒否するように伝えていたのが功を奏した。
人間、そう簡単に変わったりはしないのだ。
これで作戦の8割は成功といった感じだ。
あとは、関野峰さんのほうに沼らせて、そうすれば最悪振られるまである。
このことを仙道に伝えたところ、流石に少し複雑な顔をしていたが、それでも良かったと安堵していた。
これでいい...これでいいはず。
その後、どんどん積極的になる関野峰さんに対して、やんわりと距離を作る仙道...。
この対比によって無事気持ちの差を作ることができ、2週間ほど経った頃には関野嶺さんにぞっこんになっていた。
元々幼馴染であり、好みも性癖も全てを押さえた上で受け止められる女の子と、性欲の塊であるあの男であれば相性がいいに決まっていた。
そうして、仙道の方から別れたいと伝えるとあっさりとこれを了承。
浮気を突きつけたりとかそんなのをするまでもなく、俺たちの作戦は成功し、全員が幸せになる形でこの一件はひとまず幕を下ろしたのであった。
◇バイト先のロッカー
「先輩!本当に...助かりました。きっとあのまま付き合ってたら私の方が精神的に参ってて...おかしくなっていたかもしれないです。本当にありがとうございました」と、頭を下げられる。
「別にいいって。結果を見れば全員が幸せになったけど、場合によっては全員が不幸になる可能性だってあった。たまたまいい方向に転がっただけだから」
「...そんなことないです。きっと、全員が不幸な道に進んでも、結果的に先輩はどうにかしてくれたはずです。少なくても私だけでも幸せになる道を...作ってくれたと思います」
「過大評価だな。まぁ、その気持ちはありがたく受け取っておくよ」
「あの...お礼なんですが...」
「そういうのはいいって。俺たちは先輩後輩であり同僚なんだから。貸しとか借りとかは無しにしようぜ」
「でも...」
「どうしても何かしたいって言うなら...そうだな。アイスでも奢ってくれよ。それでチョンチョンってことで」
「...本当、欲がありませんね。先輩は」
「そうか?いやー、そんなことないと思うぞ。俺なんか欲の塊だからな!」
「...そうなんですか?」
「おう!」
「...では美味しいアイスプレゼントしますね。だから、今度一緒に遊びに行きましょうね」
「そうだな!よし!仕事始めるぞ!」
「...はい」
ここで好きですなんて言うのはきっと傲慢だ。
それに先輩にはどうやら好きな人ができたらしいし、私はその恋を応援する。
それが、私にできる精一杯の恩返しだと信じている。
なのに、少しだけ自分に可能性を残そうとして、そんな浅ましい自分が嫌になる。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093083655252201
「...先輩の馬鹿」
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