第5話 お母さん助かって!
どうやらこの灼熱世界は3つの層に別れている様だ。
一番最下層は強いドラゴン密集地。確かに強そうな敵がうじゃうじゃいる。
多分母フェンリルは此処からお肉を調達してきていたんだろう。
母……無事だといいけど。
ちなみに、蜘蛛倒し中にレベルが上がり、三文字までの魔法なら描けるようになった。
つまり【全回復】とか出来ちゃうわけですよ!
凄くないですかね!?
四文字になったら四字熟語とかかけるようになったりとか!?
ちょっとワクワクしますね此れは!
しかし暑い。火山地帯だから暑いのは当たり前だけど暑い。
たまにマグマがボコンと音を立てて弾けるというか爆発するというか、それが当たると熱いったらない!
「流石にこのエリアにお母さんはいないか……」
「カオル母 ああ この世界の」
「そう、オーディンの息子にやられてないといいけど」
「神殺し は 神々でも ご法度。 だけど 仇討の場合 許可される」
「うん……」
「でも カオルたち 兄弟姉妹 殺したのは 今 天界で 審議されてる」
「そうなの?」
「ヤリスギ いけないって 審議中」
やっぱりね! やりすぎだと思ったのよね!
まだ生後一年経ってないうら若き子供相手に「斬鉄剣!」ってないと思ったわ。
大人げない。やるせない。世知辛い。
愛しのお兄ちゃんを殺した罪は重い……絶対苦しい目に遭って貰うんだから……。
とは言え、最も安全たるはオーディンの息子がこれ以上フェンリルに執着しなければ問題はない訳で。母も安全な所に居てくれればそれでいい訳ですよ。
生きていてくださればだけど……。
「ただ」
「ん?」
「カオル の お父様フェンリル あっちこっち メス いたから……」
「……」
「同じ 腹の 兄弟姉妹は 死んでるかも だけど」
「別の腹の兄弟姉妹は生きてそうね」
「うん」
ん――この! 複雑!
所詮は獣畜生め! パパ様の節操なし! いや、強い最強フェンリルの雄ゆえの本能たるものなのかな!?
その娘として生まれた私も私だけど! 選んだのは私! そう、仕方ない!
それにしても暑い……やっぱり自分の回りに霧雨でも作ろうと思いつき【霧雨】と魔法陣を自分の周辺にしたらミストっぽくて良かった。
直ぐ蒸発するけど無いよりはマシ。
四文字書けるようになったら【範囲霧雨】とかできるようになりそう。
早く使えるようになりたいなぁ。その前にレベル上げか。もう少しで上がりそうなんだけどな。
蜘蛛を倒した経験値では、スキルポイントが足りずに【世界の基礎知識1】とかが取れなかったのだ。
それも、もう少しすれば取れるようになる。
この異世界の基礎知識は獣人の姿になってからも絶対に役立つからね!
「そう言えばこの火山地区で戦っちゃいけないっていうか、絶対私たちでも勝てない相手っているの?」
「いるね キメラ」
「キメ……」
「アソコ 立ってる まだ 気づいてない」
その言葉に即岩陰へ隠れる私。
確かに巨大なキメラがいる……しかも群れで。
え? キメラって群れ作るの? マジで? マジか?
「キメラって、子供作れないんじゃ……」
「長い時間経過して 繁殖能力 持つ個体 できちゃったの」
「わ――……」
「見つかったら 死ぬ から 見つかったら直ぐ 居住空間」
「そうだね……やり過ごすしかなさそう」
「右の通路 から 上に いければ いいけど このエリアに キメラの群れ 珍しい」
「どういう事……」
コッソリキメラの奥をジッと見つめていると、真っ赤になった元は白い毛が見えた。
息も絶え絶えのその姿は正に――お母さん!
そう思ったら耐え切れず一気に飛び出してキメラの頭を踏みつけながら悶えている母の元へと駆けつけた。
「回復魔法!【全回復】!」
パアアアアア! っと光り輝くとお母さんの身体は一気に光輝き、キメラたちは慌てふためいていたし地響きも怖かったけれど、お母さんは真っ白な体に体の欠損もなくなり立ち上がった!
「お母さん! 良かった、無事だったのね!」
「ああ、なんて事! カオル……助けてくれたのは嬉しいけれど……私一人ではとても」
「このままお母さんも連れて【居住空間】!」
そう叫ぶと光りが発している間に空間を作り出し母のお尻を頭突きしながら空間の中に消えていき、外と中がシャットアウトすると大きく息を吐いた。
巨大ワンコが居住空間に……。でも、母は凄かったのだ。
パァッと光ると真っ白な美しい獣人の姿になったのだ!
凄い! お母さん美人の獣人さんになれたのね!
「凄いわお母さん! 獣人さんになれるのね!」
「ええ、この姿になるのも久しぶりだけれど……。カオルも【言語理解】を取っていたのね」
「うん! 私の最終目標は獣人だから」
「そうなの……。私に出来る事なら何でも教えるわ。でもその前に、貴女のスキルは一体」
こうして、フェンリル母に私が女神の加護を貰っている事や、その為のレアスキルなのだと伝えると驚かれていたけれど「だからお肉を食べてえづいてたり、MPに変換して栄養を食べていたのね」と言われて頷く。
「私はちょっと特殊な子なの」
「それは前々から気づいていたわ。嗚呼、でも命を助けてくれてありがとうカオル」
「えへへ……」
「でも、オーディンの息子はそれでも追いかけてくるでしょう? 私の時はキメラに襲われていたから放置して去っていったけれど」
「私もズバーンと斬られて死んだけど、女神の加護のお陰でなんとか」
「おのれオーディンの息子め……。私の可愛い子供たちを……っ!」
「もう、生き残ってるの……私だけになっちゃったね」
そう言うとお母さんは抱き着いて涙を流し、私もホロホロと涙を零しながらお母さんに甘えるようにスリスリして悲しみを分け合った。
これから先、親子二人、そしてスライム一匹……どうやって生きていこうか。
外はキメラが珍しく降りてきていると言っていた。
暫くはうろつくだろうからやり過ごさないと。
「へへへ、でもお母さんが生きていてくれて良かった」
「それは私もよ……貴女がいてくれて良かった。貴女が生きていてくれて良かった……」
親子で慰め合う時間……それはとても大切なことで、死んだ兄弟姉妹の冥福もお祈りして……私たちは暫く体を寄せ合い涙を流したのだった――。
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