もふもふもふりん♪ モフモフだらけのPTでこの世界の美味しいものを食べ尽くして、期間限定の商売で女神化を阻止する!
udonlevel2
私は人間国のダンジョンで生を受けてモフモフ探しの旅に出る!
第1話 転生しまして、死にまして
雨の日の学校の帰り道、自転車で移動しながら家路を急いでると、逆走してきた車に跳ねられて地面に叩きつけられた。
痛みは一瞬、その後襲ってきたのは恐ろしい寒さ。
逆走者からは一人の老人が出てきたが、何も言わず去っていった。
雨の降る中、冷たい身体からはドンドン血が抜けていくのが解る。
途中気づいた車が停まって救急車を呼んでくれたようだけど、もう遅かった。
――嗚呼、今日誕生日だからお母さんがケーキと美味しい料理作って待ってくれたのになぁ……。
高校に入って年若き16歳で、私の人生は幕を閉じたかのように思えた――。
次に目を覚ますと、とてもきれいな場所に綺麗だけど緩い真っ白なドレスを着て座っていて、南国のお嬢様になったかのような気分を味わっていると、奥からコツコツと歩いて来たのはとんでもなく綺麗な女性だった。
「ああ、気が付いたのね」
「貴女は?」
「私はそちらで言う所の異世界の女神。貴女の死に方が余りにも残酷だと感じたから転生させようかと思って魂を連れてきて貰ったのよ」
「はぁ……転生ですか。異世界に?」
「異世界に」
そう笑顔で答えた女神に私は眉を寄せる。
異世界物の小説は多種多様読んだけれど、基本的に命の危険が伴う事が多いからだ。
その事を踏まえて女神に話すと「確かにどこに転生しても大体は命の危険には晒されるわねぇ」と呑気な事を言っていて、げんなりする……。
「ニューゲームでも転生して命の危険に晒されるくらいなら、大人しく殺させて貰っていれば良かった!」
「そ、そんなこと言わないで! ちゃんと、ちゃんと命の危険が少ないのに一応選ぶ予定だから!」
「一応でしょ!? 絶対じゃないじゃん! 私が欲しいのは絶対的に命の危険がないものなの! もうあんな思いはしたくないの! 生き返って直ぐ【ステータスオープン】とか言えるようなタイプの頭の可笑しい転生者じゃないの! 解る!?」
「は、はぃぃ!」
そう女神にドスのきいた声で喋ると、女神は背筋を真っ直ぐにして聞いてくれた。
「で、転生するのは人間? それとも魔物? どっちよ」
「あ、そこは聞いてくれるんですね? 一応一番命を狙われない様にと思って、フェンリルに、」
「嫌よ。レジェンドフェンリルにして。昔読んだ小説に出てきたレジェンドモンスターには憧れがあるの!」
「そこまで要求しますか」
「そうでもしないと生きていけないでしょ」
「うう……貴女はとてもか弱い人間ですものね……。いいでしょう、レジェンドフェンリルに転生させます。でも、子犬からスタートですよ?」
「スキルツリー」
「へ?」
「無論くれるわよね? 後は加護も」
「い、至れり尽くせりが欲しいのね」
「当たり前でしょ? それくらい無いと割に合わないわよ転生なんて。しかも異世界でしょ? 好きで異世界転生する馬鹿がいるとでも思う訳?」
「ひ、酷い……。皆喜んで転生するから好きなものとばかり」
「嫌いな人もいるのよ。どっちかというとタイムリープさせて貰った方がうんとマシだわ」
「うう……。私でも流石にそこまでは……。解りました! 貴女の願いは叶えましょう! でも、本当に貴女が困った時に、スキルツリーは与えますから、それ以外は一応女神の加護は与えます」
「私、レジェンドフェンリルになっても最終目標は人間だから」
「くう! 獣人で許してください!」
獣人でも一応は人間枠。どれくらいのケモナー率かによるけど、そこは自由に選べるらしいので頑張ろうと思う。
何はともあれ転生だ。
子犬のうちは記憶が無いだろうという事だったが、ある程度大きくなると記憶が戻るらしく、そうなったら私の独擅場となるのだろう。
それなら何とか、まぁ……なりそうかな?
「最初からレジェンドフェンリルとして生まれるのはとっても稀なので、両親も限られますけど……大丈夫ですよね?」
「命を狙われない限りは……」
「そこは……運次第で、」
「は?」
「ううう……ごめんなさい! そこは運次第です!」
「最低女神!」
「うわああああん! もう色々ごめんなさあああい!」
最後にもう一発文句を叫ぼうとしたら転生させられ――気づけばふわっふわのもふもふの姿になっていた。
他の子は目がとても綺麗な青や赤なのに、私だけ真っ黒……日本人の血よね……。
兄弟は私を入れて6匹。
皆コロコロぷにぷにで、兄弟姉妹達と転がりながら遊ぶのはとても楽しかった!
中でも長男は優しくて、毛づくりを沢山してくれたし、私も沢山甘噛みしたり毛づくろいをしてあげた!
兄の優しい目が大好き。大きくなったらお兄ちゃんについて行こうかな?
そんな事を思っていたある時、ミルク期間が終わった頃合い……と言ったところだろうか?
そして母親であるフェンリルが捕まえてきたのは……恐らくレッドドラゴン。
え、これを食えと?
無理無理無理無理。こちとら生肉なんて食えませんわよ?
無理やり母犬に尻をズズズズズッと押されて、渋々噛みついたが不味い……。
ベッベッとえずいていると母犬はおろおろし始めた。
それからは、何を食べてもえずいて食べられず、私はみるみるやせ細っていった。
最後は動けなくなり、母犬が必死に顔や体を舐めているがどうしようもない。
(これはまた、早い退場だなぁ。まぁ、食えない物はしょうがない。このまま餓死と言う形で死を受け入れよう)
そう思い意識を飛ばした瞬間――。
「あか――ん! 食べられないからって死ぬの一番女神がさせちゃいけない事~!」
「出たな駄女神」
「駄女神……そうですね、貴女の言う通り私は駄女神ですね……。女神ともあろうものが転生者を餓死させそうになるなんて前代未聞です」
「でしょうね。仕方ないのでこのまま餓死させてください」
「ううう……私女神剥奪されます」
「されれば? 無能」
「ひ、酷い」
「じゃあアンタは生肉血抜きなしを目の前に出されてウマイウマイって食べられるのね」
「…………無理です」
「それを私に強いた時点で駄目女神だし失格者だよ」
「うわああああん!」
恐らく私は仮死状態なのだろう。
人間の姿として出てきてるので恐らく仮死。
人生二度目の死亡である。
「うう……。生肉がえずく程とは……舌が人間のままなんですね」
「恐らくね」
「なら、肉から魔力を食べるという方法に切り替えましょう」
「出来るの?」
「魔力には色々な味があるので、それこそ、貴方の考える魔法が料理の味になるというか」
「ふむふむ」
「魔法陣を思い浮かべて、真ん中に知っている魔法になりそうな漢字を入れ込むと攻撃魔法や回復魔法にも、死んだ魔物なら魔力を食べて力にする事も可能ですし、食べた分だけレベルも蓄積されます。食べ過ぎた魔法はMPタンクと呼ばれる所がありますから、そこに只管埋蔵できるので暫くご飯を食べられなくても大丈夫ですよ。魔法を使えば減りますが」
なるほど。
それなら今のうちにドンドン食べまくって魔力を貯めておくのが良さそうだ。
「青年期になると親元を離れますから、それまでが勝負ですね。ただ、貴女は此処迄やせ細ってしまったので、旅立つのは一番最後になるでしょう」
「そうして欲しいわ。そう言えば父親は見てないけど、どんなフェンリルなの?」
「ええ、オーディンを殺したフェンリルって知ってます?」
「ああ、神話の」
「そのオーディンを丸のみにしたフェンリルの子です」
「おお……それってオーディンの息子に殺される運命じゃない?」
「……無事逃げてください」
「腐れ外道女神」
「そうなる前に、獣人になれるようしますから!」
「死んだら生き返らせろよ!」
「女神の加護は付けてあります!」
「死亡保障かよ!」
そう叫びながらも今度は『スキルツリー』も貰い、再度命を返して貰った。
母犬と言うと可笑しいが、この世界の母は愛情深い犬の様で私をとても大事にしてくれて、餌も新鮮なものを次々運んでくれてはMPに変換して食べていく。
あ、これなら食べられるわ。
気分を変えてお菓子の味にも出来るし味に飽きが来ない。
でも、魔力を食べてるからシッカリ味わってる感じがしないのよね……。
空気だけ味わってるっていうか……まぁ、文句は言えない。
生き残る事とMPを増やしていく事が大切だわ。
その反面、女神から貰った『スキルツリー』をじっと見つめると、随分先に獣人化があった。
最初はMP倍増かHP倍増しか選べなくて、でも、MPの量次第では殆どを網羅できる初期。そこから上は獣人化に向けて突き進んでいかないと行けない。
その為には、多くの獣の犠牲が必要なようだ。
ピーキーなキャラになりたいなら真っ先に【獣人化】をとって良いだろうけれど、ピーキーは強い分死にやすい。
私は出来れば死にたくないので、順当に初期スキルを得てから強くなる道を選んだ。
そして有難い事に、駄女神はこんなスキルを用意してくれていた。
【アイテムボックス(∞)】【居住空間】【MPタンク(特大)】【空中飛行】【テイム】。【女神の加護】は言う迄も無く死亡保障である。
【アイテムボックス】は言う迄も無くなんでも入る異空間の事だろう。
【居住空間】に関して今は使えないらしい。と言うのも独り立ちした時に使えるようにアンロックされていた。
【MPタンク(特大)】は先ほど言っていたMPを貯めておくタンクで、今のうちからドンドン貯め込んで行こう。
【空中飛行】は小さいうちからでも使えた。母犬は目を潤ませていた所を見ると、父親が使えたのだろう。
最後に【テイム】だが、獣が獣をテイムしていい事はあるのか? 否、敵によるがあり得る。これでもふもふもふりんPTを作ればいいのだ。
全員がもふもふ。そして最高最強のPTともなればどこに行っても恐れられたり、舐められたりはしない筈。
何より私は動物が大好き。
獣PT絶対叶えて見せたい。
自分以外に一匹でもモフリがいればOKとしよう。
そう考えつつ今日も今日とて母犬が取ってきた巨大なモンスターをMP変換して食べる私がいて、不思議そうに見ている母犬には申し訳なかったが、これはこれで腹が膨れるんだよ……霞を食ってるような気分だけど……と思ったのは言う迄も無く、更に――。
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