恋は病なりや?
石ころ
0日目
私はどうも、18歳になって初めて恋の病に罹ったようだ。恋の病に薬は無く、いかんせん自力では治しようもない様に感じる。
これまでそのような経験をした事が無かった。中高一貫校の共学に進学したにも関わらずである。私が無口であるのが原因だろう。今まで可愛い人がいるな、で止まって18歳になった。勿論異性と流暢に喋る事などできない。悲しいものだ。
私は男子校に進学したかった。あの特有の身内ネタや異性の話などに憧れていた。だが、第一志望校であった所を落としてしまい、一通り受けて受かった中学校の中から選んで進学した。その時からのコンプレックスからだろうか。クラス全員と仲良くなんて出来なかった。
静かな人間は相手にされない。学校は社会の縮図と言われているからには、きっと社会でもそうなのだろう。
私は現代的に言えば陰キャ(陰気なキャラクター)なるものの典型例だった。どこぞの漫画では陰キャがクラス1の美少女とあるきっかけによってお近づきになるといったシチュエーションがあるが、私からすればロマン主義者の絵画と同じ様なものである。美少女よろしくマリアンヌが女神となり、我ら平民に等しく接し、我らに立ちこめたる暗雲を払うような事などあるはずがない。
私はお分かりの通り、良くも悪くも写実・自然主義的である。石を割っている姿や落穂を拾い集める姿の絵を見て育った訳ではないが、現実を現実のままでしか捉えられない人間だった。
クラス1の美少女で無くとも、そもそも女性から話しかけられた事がない。イケメンであれば、私も漫画のような展開に遭遇したのかも知れないが、現実そんな都合よく行く訳がない。
私には少ないなりにも友人がいる。友人を作る場合は"狭く深く"がモットーである。そのうちの1人は中学1年生の時に出席番号が近かったため、近しい仲になった。彼は私と同じく無口であった。近しい人間性は引かれ合うのだろうか。あの時出席番号が遠ければ、私も彼も関係性を持たずして中学高校と過ごしていただろう。まさに一期一会であっただろう。
彼を深く知れば知るほど、飽きさせない面白い人間だと思った。
私は彼のことを十分に知っているつもりだった。私は高校3年生の時に彼から衝撃的な告白をされた。
彼が中学1年生の時に、同学校同学年の女子から告白されたそうだ。彼はその時に女性が怖くなって、何も言わずにその場から逃げ出したそうだ。
十分に知っていても、まだ飽きさせない人だ。ガムはいつか味が無くなるが、彼はずっと噛んでも味が無くならない。
その様な告白をしておいて、彼は別の日にこんな事を口にした。
彼の席の隣の奴が他校の女子と付き合っている話を耳にしたそうだ。その話を聞いて彼は、この世の中には他校の女子と付き合うような人がいるんだと思ったそうだ。
私からすれば笑い話である。彼は間違わなければ、その隣の奴と同じ様な人生を、中学1年生から始められたはずであった。彼は私のこの持論を否定するが、私から見れば、彼は隣の席の奴の事を嫉妬に近い感情で見ているはずである。それを踏まえても彼は否定する。図星なのか本当に違うのかは未だに分からない。だからこそ彼は面白い。
だが、そんな彼を小馬鹿にして笑っていた自分にツケが回ってきた様だ。笑えない状況になってしまった。
小学校の時の友人が、女性として私の前に現れたのである。名前はEとしておこう。
私は小学生の時は、自ら知識をひけらかす様な馬鹿者であった。今では考えられないほど自信があったのだろう。飽くなき承認欲求に飲まれていたのだろう。いつの間にかクラスのTOP3の賢い奴だと思われていた。小学校まではそれで通っていた。
問題は中学校からだ。あんなに出来た算数理科が全く出来なくなった。舐めていた。数学になった途端に、それまでの比ではないものが要求された。小学校では周りのレベルが低かったが、中学校になれば私と同じもしくはそれ以上に賢い奴らしかいない世界だ。そんな中、小学校の時と全く同じお花畑な私は、最初の中間考査で分からされた。
小学校の時のプライドは今では微塵も無く、ひたすらに現実逃避に明け暮れる日々。そうして女性と話すこともなく高校3年生である。つまらない人生だ。
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