第3話 装備と準備

パーティー登録を終えた翌日、ミカは悠斗に新たな提案をした。「さて、これから本格的に冒険に出るわけだから、装備を整えた方がいいわね。」彼女の言葉に、悠斗は少し驚きつつも「でも、装備を買うお金がないんです…」と気まずそうに答えた。彼は冒険者としての登録料さえまだ支払っておらず、装備を新調する余裕などなかったのだ。


するとミカは軽く肩をすくめ、「心配いらないわ。私が君の装備を買ってあげるから」と、あっさりと申し出た。「私のパーティーに入ったからには、しっかりした装備が必要よ。」


その申し出に感謝しつつも、悠斗は少し戸惑いながら「本当にいいんですか?装備なんて買ってもらってしまって…」と遠慮がちに尋ねた。


「気にしないで。君が快適に冒険できるようにするのが私の役目だと思ってるの」とミカはにこやかに言い、「さあ、装備を見に行きましょう」と悠斗を引っ張るように商店街へと向かった。


商店街の冒険者用装備店をいくつか巡り、ミカは悠斗に装備を見せながら、どれがいいかを一緒に選んでくれた。彼女の知識と経験に基づいたアドバイスは的確で、悠斗にとって心強いものだった。


「この軽鎧が君にぴったりだと思うわ」と、ミカはある軽鎧を指さし、「軽くて動きやすく、耐久性もあるから冒険には最適よ」と説明した。


悠斗はその鎧を試着し、鏡に映る自分の姿を確認した。「確かに、これなら動きやすそうです」と感心した様子で答えた。


さらにミカは「これに追加の防具を合わせれば、もっと安心よ」と、他の防具や道具も薦めてくれた。


その時、悠斗はミカの装備について気になっていたことを率直に尋ねた。「ミカさんは、自分の装備を買わないんですか?今の防具って…失礼ですが、下着みたいで、耐久性が心配なんですけど…」


ミカはその質問に軽く笑いながら答えた。「ああ、この装備のことね。実は、これで十分なの。私の戦闘スタイルにはこれが一番合ってるから。それに、お金があれば装備よりお酒を買いたいわ」と冗談めかして言った。


悠斗はその答えに納得しつつも、「それでも、これからの冒険では万全の準備が必要だと思います。安全のためにも、他の装備も考えた方がいいかもしれません」と提案した。


ミカは優しく微笑んで、「確かに君の言う通りね。でも、今は君の装備を整えるのが優先よ。私のことは心配しないで」と応じた。


結局、ミカは悠斗の装備一式を購入してくれることになった。悠斗はその厚意に心から感謝し、「ありがとうございます、ミカさん。これで自信を持って冒険に臨めます」と感謝の言葉を述べた。


「どういたしまして。これからの冒険が楽しみね。君がどんな風に成長していくか、私も楽しみにしているわ」とミカは微笑んだ。


新たな装備に身を包んだ悠斗は、ミカと共に未知の冒険に挑む準備が整った。彼は期待と不安を胸に、どんな困難が待ち受けているのか、どんな仲間と出会うのかを思い描きながら、決意を新たに一歩を踏み出した。

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