第35話 錬成
その夜、早速錬金術でミスリルやオリハルコンが作れないか、試してみた。結果は散々だった。まず、土魔法で適当な形の粘土を作り、いつものように他の物質に変えようとしたのだが、手始めにミスリルに変換しようとすると、膨大な魔力を吸い取られ、魔力が足りずに失敗した。数え7歳の時に自分のステータスが見られるようになって、当時既に2,000万を超える最大MP値を叩き出していたのだが、それでもまだ足りない。この年になって初めて、魔力切れでダウンした。たったコイン1枚分のミスリルも作れなかった。
粘土をミスリルに変換しようとした時、錬金術は確かに発動したし、途中まで金属に置き換わる手応えはあったので、錬金術で作成可能なのは間違いないだろう。試しに、銀にしてからミスリルに変換しようとしたが、同じように魔力切れで失敗した。そもそも、原子の中の電子が
そもそも、土や銀から電子を置き換えるのは難しいのかも知れない。元の材質の電子を霊子(魔素)に置き換えるのではなく、最初から魔素がたっぷり含まれていて、魔素と親和性の高いものをミスリルに変えるのはどうだろうか。
アレクシス様とディートリント様、ベルント様の三人は、学園に戻る子弟と一緒に王都に戻ることになっている。実際は転移陣からいつでも王都に帰れるので、頻繁に往復しているようだけど。デルブリュックさん家にいると、お酒いっぱい飲まされるんだよなぁ。みんなお酒に弱いわけじゃないけど、ああいう濃い付き合いは三人とも苦手っぽい。
そんなアレクシス様に、「魔素と親和性の高い物質はありますか」と聞いたところ、いきさつの説明を求められた。「というわけでミスリルが作れないかなと」と言うと、頭を抱えてつぶやいた。
「君ねぇ…。いろいろやらかすとは思ってたけど、ミスリルかぁ…」
呆れながらも、
「それならほら、こないだ散々作ってたじゃないか、記憶水晶」
なるほど記憶水晶か。
「一般的に、宝石類は魔素と相性がいいよね。ほら、僕の杖にも水晶が仕込まれてるじゃない?」
アレクシス様が指揮棒のような杖を懐から出してくる。この杖が、某魔法使い映画に出て来そうで、ついワクワクしちゃうんだよな。あ、その魔法使い映画も既にアレクシス様たちと王家に献上してある。
「水晶は魔法を正確に撃ち出す指向性と制御力があるんだよ。光の屈折と関わっているのかもしれないけど。そして君が記憶水晶を作る時に失敗作として生み出した赤い
というわけで、まず錬金術でダイヤを作ってみた。ソイルで土を出し、粘土状にして固めて、錬金術でダイヤに変換。記憶水晶を作りまくった俺は、これをものの秒でこなす。アレクシス様は「君ねぇ…」とため息をついている。そういえば、自動でタブレットもどきをインベントリに作る仕組み、ずっとオンにしたままだった。インベントリを開いてみると、「タブレット(仮)」のところに「9,999+」と表示されている。見なかったことにしよう。
さて、手の中に出来たダイヤモンドだが、主に炭素で出来ているので、思ったよりも魔力の消費が少ない。ここに聖属性の魔力を込めていく。記憶水晶に魔力を通して映像や音声を込めるのと同じ要領だ。
やがてダイヤの結晶が光を帯び、これ以上聖属性の魔力が入らない感覚がする。容量いっぱいになったのだろう。これでようやく、ここからミスリルに加工できるだろうか。出来上がった結晶に鑑定をかけてみる。
種別 アダマンタイト
材質 アダマンタイト
状態 良好
・聖属性
・自動修復
・不壊
俺は頭を抱えた。頭を抱えた俺に何事かと尋ねたアレクシス様、「アダマンタイトが出来ました」というと頭を抱えた。とかくこの世はままならぬ。
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