第17話 尊い犠牲
数日後、王宮より魔法陣が発表され、その便利さが知れ渡ると、爆発的に広まった。魔法陣は無料で公開され、羊皮紙や木の板に印刷され、無断複製も許可され、誰でも手にできるように配慮された。これにより、王家や宮廷魔術師団の名声は高まり、この功績はすべて、例の徴税官に全て注がれた。徴税官は無事准男爵の爵位を賜り、引き続き宮廷魔術師団に在籍することとなった。
クリーンの魔法陣は邸にも逆輸入され、メイドたちにたいそう喜ばれた。そもそもアレクシス様とベルント様が、宮廷魔術師団でクリーンのスキルを研究していたのは、
なお、クリーンのスキルを使えば大体綺麗になるが、普通に洗濯や掃除は継続して行われた。いきなり雇用を打ち切ると、経済的に問題が出るし、また幾分作業は楽になったとはいえ、水洗いや天日干し、換気など、スキルの効果では補えない部分がある。何より多くの使用人を抱えるのがステータスという貴族のメンツもあるし、メイドなどは行儀見習いの側面もある。こういったことから、魔法陣が失業を生み出すことはなかった。
一方で、庶民の生活は劇的に改善された。掃除や洗濯に割かれていた時間やエネルギーがカットされ、その分庶民の生活に余裕ができた。産業の生産性が上がり、経済は潤った。そして何より、庶民の生活の衛生面は劇的に向上。衣服や住居も清潔になり、大規模な設置工事が検討されては立ち消えていた下水道が不要となった。そのうち、教会などの慈善事業により、スラム街にまでクリーンの魔法陣が配布され、不潔な場所も人もすっかりいなくなって、疫病もほとんどなくなった。魔力がほとんどない平民でも、クリーンのスキルが使えるため、街の清掃は孤児の仕事となった。非力な孤児でも、道や側溝をピカピカにできる。じわじわと、みんなの生活が良くなっていった。王家の支持率は上がって行った。絶対王政においても、民衆の支持は大事だ。
なんか、あの古文書に鑑定をかけただけで、こんな大騒ぎになるとは思わなかった。俺が生まれたのが、つくづくあの辺境の村でよかった。王都に生まれて、いろんなスキルを顕現させていたら、とっくに攫われるか○されていただろう。アレクシス様とベルント様には散々言われてきたけど、何気なくやってたことが、とんでもない影響を生み出してしまうものだ。もう遅いかもしれないけど。
魔法陣については、アレクシス様が教授から「あれを読み解いたのか」と羨ましがられた。アレクシス様は、「徴税官が使ったクリーンのスキルと呼応して、偶然魔法陣が光ったのです」などと吹聴して、教授の疑いを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます