第25話 復讐と銃撃とゲリラ戦
「だけど、俺にはもうなにも無いんだ。アンジュもエマももう死んだんだ。」
「大丈夫。まだエマは死んでない。」
その言葉に顔を上げる。抱きしめていた腕を離し、蒼依は言う。
「彼女の魂はまだ還元されていない。多分あの男が保存している。それが磔の能力だから。」
「ということは……」
「ええ。あの男を倒せばエマは返ってくる。」
視界が少し明るくなった気がする。絶望という暗闇の中に一筋の希望が差し込んできたかのように。
「まだ間に合うか?」
「うん。だけどあんまり悠長にはいられない。」
「なら、行こう。」
悠斗はヘルメットを被り、バイクに跨る。鍵を差し込み、セルボタンを押した。
ブォンと咆哮を立て、エンジンが始動する。
蒼依はノーヘルメットで後ろに座る。クラッチを握りながらアクセルを吹かせる。
ギアをニュートラルから1速へ、クラッチを徐々に解放させる。
動き出したバイクが向かうは教会。
ギアを一気に上げる。加速したバイクは一直線の道を走り去っていった。
久光は離れの実験室で座っていた。
「まさか器と契約者が融合しているとは。銃撃に当たる器が存在していないのはこれが原因だったとは。」
手帳に記しながら一人呟く。椅子を回転させ、背後の地面に描かれた魔法円を恍惚とした顔で眺める。
「やっと自分の研究ができる。まさかこんなにも早く好きなことができるとはね。」
手元の紅茶を啜りながら、ノートパソコンに打ち込んだ文書を転送する。自分の研究はいずれまた他の研究員の糧となる。
それが西園寺の名字を持つ者の掟だ。
「さて、彼らも来る頃合いだろう。準備を始めたまえ。」
無線に飛ばした声は孤独な部屋に静かに反響した。
教会に集められた黒服の男たちはいわば”裏の人間”だ。西園寺家から出される莫大な報酬のために仕事を受けたヤクザ、チンピラ、etc。
「これから敵が襲ってくると思われる。数は一人。心してかかるように。」
「一人殺すだけでウン百万か……。」
「余裕だな。」
「怪しい商売かもしれないが、生きるためだ。」
各々教会の座席に座りながら話し合う。こちらの数は150人以上。
一人殺すなど造作もない話だ。
一人が煙草に火を付けようとした瞬間だった
ステンドグラスが砕け散った。それは盛大に。外からの衝撃で割れたガラスの破片は月光を反射し、星々のように煌めき夜空を彩る。そして月光をバックに一台のバイクが教会に突撃してきた。
バイクの跨る青年の片手にはHK416が握られている。
アクセルグリップだけを右手に、銃口を足元の黒服に向け、引き金を押し込んだ。
セレクターはもちろんフルオート。
金色の空薬莢が排出される。同時に爆音とマズルフラッシュが視界と聴覚を麻痺させ、血の海を生み出す。
シート後方に座った少女も両手に握ったMP5Kをばらまく。芯材がタングステン鋼の徹甲弾は男たちのボディーアーマーを貫き、確実に殺し尽くす。
飛び跳ねたバイクが地面に着地する。200㎏近い車体に轢かれた死体は骨が飛び出し、内臓をぶちまける。
少女が男たちの頭に目掛けて、引き金を絞る。排出される弾丸が頭に吸い込まれていくように命中し、脳漿があふれ出る。
バイクから降りた二人が同時に口を開く。
「「開放‼‼原罪を償いし者よ。愛するものを守る銃となれ、全てを貫く魔弾の引金を引け‼
二人の黒い瞳が青く輝く。ステンドガラスの明かりを失い、宵闇に落ちる教会に4つの青い光が朧げに輝いた。
二人は全く同じモーションで右腕を前に付きだす。手は銃を構える指の形。気が付けば青年の手にはベネリM4スーパー90が、
少女の手にはサイガ12が握られている。
即座に二人は引き金を引く。
発射された12ゲージショットシェルの緑の空薬莢が横から排出。目の前の男たちはミンチとなっていた。
側面から男が日本刀で斬りかかってきた。袈裟切りを横に回避し、悠斗は脚を引っ掛ける。へっぴり腰で突撃してきた男はバランスを崩す。目の前には銃口。頭蓋骨ごと脳ミソに鉛弾が沈み込んだ。
少女は駆け出し、男たちの群れの中に滑り込む。
男たちはそれぞれ持った武器を構える。あるものは拳銃を放つ、あるものは斬りかかる。
蒼依は小さな体躯でそれらを回避し、接近する。
男に接近した瞬間、手に持つサイガを急所に打ち込んでいく。8発撃った時点でそれを捨て、両手を横に突き出す。
両方向から襲ってきた敵を両手の引金を引くことで撃ち落とす。
片手にはモスバーグM500、片手にはレミントンM870。どちらもソードオフタイプを握っていた。
正面に両銃を向け、目の前の男を殺す。
再び駆け出し、拳銃弾を悉く躱す。そして壁を蹴り上げ、一気に天井近くまで身体を飛ばす。同時に双方のレバーを操作し排莢。上空での一瞬の停止状態。重力と上への力が釣り合った状態。一気に散弾の雨を降らす。
男たちにある程度ダメージを与え、着地する。
ショットガンを放り投げ、新しい銃を生成する。
全長一メートル、横に並んだ弾帯を左腕に巻き、二脚を足で蹴っ飛ばし折りたたむ。
引き金を引くと同時に左手の弾帯が機関部に吸い込まれていく。7.62㎜の大型弾が男たちの身体を貫き、壁に弾痕を残していく。M60軽機関銃の掃射はその場を制圧するのに十分だった。
撃ち切ったベネリM4を捨て、拳銃を生み出す。
ポリマーの感触と共に手に大きな重みを感じる。グロック34TTIカスタムを胸の前で構える。左肩を敵の方向に向けながら、低い体勢で狙う。相手に急接近し、その金色の引金を数回引く。
ボディーアーマーが入っていないような脇腹、首を優先的に撃ち込む。
向かってきた相手の太ももを狙う。弾を打ち込み、動きが止まった相手の頭を狙い引金を絞る。糂汰かどうか確認する間もなく即座に次の相手を狙う。流れ作業かのように淡々と処理していく。
スライドがオープン状態でホールドしたグロックを向かってくる敵に投げつけ、次の銃を生み出す。H&K P30Lの一発一発を
リズムよく撃ち、怯んだ相手を黙らせる。目指すはあの魔法円が描かれた部屋。
真っすぐな廊下に続くドアが開き、増援が入ってきた。
悠斗はP30Lのマガジンキャッチを操作し、残弾を確認する。そしてC.A.Rシステムで構え、その軍団に向かって走った。
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