第9話 石打と再会と電気椅子
瞳と何度打ち合っただろうか、剣がぶつかり合いすぎて手がしびれているようにも感じる。
距離を取った瞬間、観客席が光った気がした。
その直後、悠斗の頬を飛翔体が掠めた。頬が切れ、血が垂れる。
「遠距離狙撃だと!?」
光った方向を向く。
「他所見する暇があるのかしら?」
瞳の環首刀が首元を狙い突いてくる。悠斗は首を頭ごと反らし躱すも、首の皮が切れる。
(意識を外に向けるのは厳しいな。)
瞳の追撃を躱そうと後方にステップした瞬間、後ろから猛烈な殺気を感じた。
咄嗟に旋回し、左側に向かって転んだ。
後方に待ち構えていたシルヴィアのククリの一撃が空中を切り裂く音が聞こえた。
「あらら、この器、勘がいいわね。」
首を傾げながら、、微笑する姿は不気味さを際立てていた。
「契約者の方はどうしたの?シルヴィア。」
「片方は気絶、もう片方は行動不能にしたわ。」
「よくやったわ。」
悠斗は立ち上がり、体中に付いた人工芝を払う。
(エマもアンジュも動けない状態なわけか。)
「一人で三人を相手とは、骨が折れるものだ。」
もう片手を突き出し、それの形を意識する。
それは悠斗の手を中心として形作られる。
真紅の槍と漆黒の日本刀を携え、その青年は二人を睨みつけた。
「名乗っていなかったな。かっこつけさせてもらう。古儀悠斗。参る‼」
地面を蹴り上げ、二人に突っ込んでいった。
日本刀を振り払う。二人は散解する。悠斗はまず瞳に狙いをつけた。
槍を彼女に向けて突く。バックステップで回避している瞳はその一撃を環首刀で弾き返す。
更に距離を詰め、蹴りを入れる。運動靴の先が裂け、日本刀の刃が先から飛び出す。
彼女の脇腹を軽く切り裂く。
「クッ。」
着地した悠斗は向かってくるシルヴィアに向き直る。
ククリと鉈の連撃が襲ってきた。
左右縦横、絡めるように繰り出される攻撃を体を反らせて回避する。
「はあぁぁ‼!」
一瞬の隙を見逃さず、日本刀を滑り込ませる。刃先が肩をなぞるように斬りつける。
「もう一撃‼!」
踏み込み、さらなる攻撃を加えようとした瞬間、再び観客席からの一撃を目視する。
悠斗は足を止め、右に移動した。
立っていた場所の地面が削れる。
「チッ」
やはり三人全員に意識を割くのは難しい。
瞳とシルヴィアのの連携の取れた攻撃が襲ってきた。
前衛にシルヴィアの大振りな攻撃でこちらの攻撃を抑制し、その隙を瞳の突きがじわじわとダメージを稼いでいる。
ククリが目の前に飛来する。槍の柄でその攻撃を止める。環首刀の攻撃が肩をを切り裂く。服が切れ、血が垂れた。
槍を平行に振り、二人おの包囲網を打開する。
しかしその瞬間、狙撃が右太腿を貫いた。
支える足を負傷し、バランスを崩す。片足を付いた。機動力を失われた今、間違いなく格好の的だ。
「万事休すか…」
その瞬間、死というものに直面した。
「終わりだ。」
環首刀の刃が太陽光を反射し、白く輝いている。この一撃が俺を殺す。もう何も考える必要はない。これですべてが終わるのだから。
振り下ろされる。悠斗はその目を閉ざした。
「諦めるな、後輩。」
遠くでそんな言葉が聞こえた気がした。
目を開けると、先程まで光り輝いていた白い刀身はそこにはなかった。
目に映る景色は折れた環首刀を握る倉持瞳の姿だった。彼女は右側を見ている。その隙に悠斗は飛び跳ね、その場を脱出した。
瞳の目線の先には観客席から見下ろす一人の男がいた。
180ほどの身長、白い服を着た青年はこちらに指先を向けていた。しかしその青年に心当たりはない。
「おい、石打。あいつは誰だ!?」
無線機に声を乗せるも返答はない。正面を向くとあの黒髪の青年の姿はそこになかった。
「シルヴィア!やつを‼」
その男、八重坂真一がドームにいるのは決して偶然ではなかった。
昨日、アンジュが感知した反応は2つ。一つは倉持瞳のもの。そしてもう一つは八重坂真一のものであった。同時にアネットも悠斗たちの反応を知覚していた。
そして街を歩き回り、たどり着いたのがこのスタジアムだった。
「アネット、頼んだ。」
名前を呼ばれた少女の目の輝きが強くなる。
「
少女は地面に手を付ける。少女の白に近い金髪が逆立つ。
足元の鉄筋を通った電撃は鉄筋を赤熱化させ、水道管を加熱する。意図的に止められていた水道管は水蒸気の膨張を抑えきれず、弾ける。
瞳の足元が盛り上がった。シルヴィアとともにその場を離れる。
直後、足元のコンクリートが割れ、巨大な穴を生み出した。
「なんて破壊力なの………!?アンディ、相手を頼んだわ。」
「
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