第九話 大和訓練と月灯の暗躍
「それでは、会議を始める」
大和司令部公室内で、この世界についての説明を行った。
それ以外にも様々な会議を行い、会議をしては一度辞め、会議をしては一度やめ、っと、2日の時が流れた。
「……そんなむしの良い話がありますかね……」
機関長は小難しい顔をしながら呟く。
そう、砲身劣化と燃料の問題である。
疑問に思うのもおかしくはない。
「そうでもないな。此処は異世界。何があっても可笑しくはない……だが、そうだな。一応調査をしておくほうがいいだろう。藤野艦長はどう思う?」
山本司令が大祐に言った。
「そうですね。機関長、一応調査を頼みたい。よろしいか?」
「はい。そういうことならお任せください」
機関長は俺に真剣な眼差しを向ける。
「よし。ひとまず解散とする。それでは、解散!」
俺の声が響く。
全員敬礼をして出ていく。
「それでは、また後でな」
山本司令は長官公室へ入る。
俺もある目的のためエレベーターで艦橋に戻る。
◯
じゃ、始めるか。
「……訓練開始」
そうだ。
ラッパ音が鳴り響き、乗員はかけていく。
戦艦大和、武蔵、空母信濃の同時訓練を会議にてすることに決めた。
最近は清掃ばかりだったな。
訓練結果がどうなるやら……。
俺は最近訓練をしてないため、鈍っているかもと心配していた。
「対空戦闘用意良し!」
「三番高角砲用意よし!」
「二番高角砲用意よし!」
「主砲装填よし!」
対空戦闘、高角砲の発射用意、主砲の発射用意終了の報告を艦橋にて受ける。
そして成斗が秒時計を停める。
「総員配置終了!時間、6分26秒!」
「……落ちたな」
前の最速は4分51秒だった。
遅くても5分20秒だったのに、まずいな……。
「訓練をもう一度行う。物を元の場所に戻せ」
俺の命令により全員配置前の場所に戻る。
時間が短縮されるまで休憩なしで1日何度も繰り返し訓練をする。
それが
因みに何故「日本」と書いて「やまと」と読むのか、それは英雄
全員息を切らしている。
そりゃそうである。
機銃弾箱の重さだけでも200kgはある。
「……開始」
もう一度、乗員達はさっきより速く駆ける。
そして装填、配置場所につく。
「対空戦闘用意よし!」
「二番高角砲用意よし!」
「主砲装填良し!」
成斗が秒時計を停める。
「総員配置終了!時間、5分48秒」
まぁ、二回目にしてはよく出来たな。
「よし。訓練終了、各員兵装整備を行え。終了後、試験運転を行う」
「各部、兵装整備」
伝声管を伝い各班各部に整備の命令がくだされた。
俺は艦長室に戻って会議の内容をまとめるべく艦橋を降りる。
通路を歩いていた時だった。
「機銃の弾倉内の弾を誤ってバラすとは、どういう精神しているんだ!貴様!!」
上官が海兵の胸ぐらを掴み上げる。
海兵は苦しそうに胸ぐらを掴んでいる上官の手を掴む。
「今は非常事態だ!弾の補給もままならない中、弾一発一発貴重なんだ!それを分かっての行いなのか!?」
海兵の胸ぐらを床めがけて思いっきり投げ飛ばす。
海兵は床に叩きつけられる。
「お前みたいな奴がいるから周りもたるむんだ!!腰だせ!!!」
「は、はい!!」
半泣きの海兵が壁に手を置き腰を出す。
そして、「海軍精神注入棒」で思い切り腰をぶん殴られる。
海兵は苦痛の声を漏らす。
弾倉の弾をバラしたのか……まぁ、叱られて当然だな。
俺は其処を通らないと艦長室には行けないので、止まっていた足を再び動かす。
でも、包帯や薬の数も限られている。
此処はもう辞めさせよう。
俺は彼等の間に割って入る。
「ッ……!?艦長!」
上官が敬礼をする。
倒れ込んでいた海兵もそれに連れ痛みを我慢しながら立つ。
俺も敬礼をし、先に手を降ろす。
そして彼等も敬礼を辞める。
「すまない。盗み聞きだが、話しは聞いていた。確かに弾倉の弾を誤ってバラしたのはアレなんだか、弾薬同様今は薬や包帯などの治療を何度も行える訳ではない。一発でやめてやれ」
「はい。わかりました!」
上官は敬礼をする。
「そこの海兵も、以後気をつけるんだぞ」
「は、はい!」
海兵も敬礼をする。
俺は通路を通りそのまま艦長室に向かった。
そう、会議の内容をまとめる為だ。
2時間、様々な会議をしたため、まとめる必要がある。
会議内容は以下の通りである。
〜〜会議内容メモ〜〜
問題
① 砲弾、治療品の補給問題。
② 主砲砲身劣化、燃料補給問題。
③ 食料、水問題。
④ 周辺国家問題。
⑤ 現世帰投問題。
⑥ 艦修理問題。
⑦ 異世界人交流問題。
解決方法(話し合い結果)
① 周辺海域を調査し、鉄を収穫する。または周辺国家との貿易。鉄に関しての問題は深刻である。
② 異世界の物質「魔力」により解決。しかし調査が必要。
③ 島の調査が必要。または他国との貿易。
④ 周辺国家については「カスミ」に情報共有を求める。
⑤ 原因不明。帰投問題については他国貿易が可能となった場合他国に調査する。
⑥ 砲弾問題と同様、貿易か収穫。
⑦ (今は)他国貿易が可能時に、行事時にのみ交流。
である。
はぁ……全くもって面倒くさい。
これについてどの様な経路で、どのような事を言って他国の者に説明するのか考えなければならないのだ。
クソ……「全艦帰投計画」第一責任者なんてやらなければ良かった。
俺は頭を抱えながらも鉛筆を手に取った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はい……はい……いいえ、それは大丈夫です」
小さな水晶に向ってカスミが話している。
「しかし、姫様。いち早く姫様達を国に連れ戻さなければこの「ゲンブ」心配で心配で……」
糸目でイケオジ感のあるちょび髭を蓄えた着流しを着た男が涙を拭く。
「ここの『漂流者』の者達はとても優しくしてくれます。心配いりません。それより……」
カスミはすこし沈黙する。
「その乗っている『漂流物』のことですか?」
ゲンブは勘付き応える。
「はい。ここまで状態のよい『漂流物』は始めてです……。やはり『幽闇』が関係しているのかと」
「『幽闇』ですか……。最近『漂流物』の漂流率はかなり上がっておりましたが……まさか……。その『漂流物』にはなんという名が?」
「この艦の名は「大和」と申すそうです。そう、
ゲンブは勢いよく立ち上がった。
「なんと!?しかし……あの「モノ」は状態が……」
「他にも計三隻あります。それもコレと同じ位綺麗ですよ」
ゲンブが沈黙する。
「……
「それは厳しいですね……漂流者の人数が多すぎます。「霧」を使っても厳しそうです」
「ふむ……。我々の精鋭艦隊を派遣しましょう。女帝様も欲しがっている者がおります」
カスミが訝しむ。
あの女帝が欲しがる「者」はどのような者だろうか。
「……
「はい。どうやらフジ……」
コユキの声がゲンブの声にかぶる。
「あぁ///貴方様ぁ!///なんとたくましいですのぉ!!」
「「……………」」
「はぁ、お母様も物好きなのですね……『漂流者』を、すきになるとは……。この
「そうですか……ともかく、姫様達が乗っている『漂流物』に一度訪問させて頂きます。それでは、コレにて」
水晶に映っていたゲンブが薄れ消えた。
カスミは長椅子にもたれ掛かる。
そして呟いた。
「ふぅ……。この
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます