「死闘の幕開け」

 魔物達が迫っている。その報告を受けてからのアーケオ達の動きは早かった。すぐさま戦闘準備に取り掛かって、敵襲に備えた。


「ふん!」

 アーケオは木剣にマナを込めて、再び勇者の剣に戻した。


「なるほど、あの魔法に当たった瞬間だけで永続ではないんだ」

「レックスさんの魔法でしたっけ」


「そう。だからマシュロさんも気をつけて」


「かしこまりました」


「そうだ」

 アーケオはブレドの元に向かった。


「兄さん。剣を貸してください」


「ああ」

 ブレドが恐る恐る腰に携えた鋼の剣を差し出した。アーケオはそれを手に入れると見る見るうちに黄金の光を放ち始めた。


「これは」


「これで生存確率は上がるはずです」


「ふん。舐められたもんだな。まあでも助かる」

 照れ臭そうにするブレドを見て、少し笑みを浮かべた。そのあと、アーケオはマシュロやブレドと魔物達に迎え撃つため、ローゼン兵士のものに向かった。


 兵士達の元に向かった時、アーケオは瞠目した。既に争いが始まっていたからだ。ローゼンの兵士達と魔物の交戦。


 アーケオはすぐさま魔物に斬りかかった。その傍らでマシュロが彼をサポートするように魔物を討伐する。


視界の端から蛇の姿をした魔物が牙を向けてきた。剣を構えた瞬間、魔物の首が切断された。ブレド・ローゼンが切り落としたのだ。


「脇が甘いな。愚弟」


「兄さん!」


「援軍が来るにしてもこの数を何時間も捌き続けるのは無謀だぞ」


「ならやることは一つ。魔王を倒す」

 アーケオは禍々しい空気が漂っている巨大な蔦の塔に目を向けた。剣を握りしめて、従者と兄と共に魔王城に向かった。


「ガアアア!」

 黒い影のような魔物達が奇声をあげながら、襲いかかってきた。


「邪魔だ!」

 アーケオはマシュロとブレドと目を見張るような速度で討伐した。視界の端で何か光るものが見えた。夜明けの翼の隊員が銃を向けていたのだ。


 銃弾を間一髪で交わして、その隙にマシュロが相手の喉を掻っ切った。


「まだまだ!」

 残党達が次々と銃弾を打ち込んで来る。


「どうして魔物と手を組んでいるんだ! 人類の敵のはずだ」


「ローゼンに比べたらマシだ!」

 隊員が引き金に指をかけた。アーケオが交わして、叩き斬った。


「魔物が隊員を襲わないのはレックスがそうさせているからだろうな」


「そうか。魔王と結びついたから魔物を操れるんだ」

 アーケオは改めて、事の重大さを再認識した。それから道中で次々と襲いかかって来る魔物と『夜明けの翼』の残党を倒した。


 そして、王城の目の前に着いた。城は巨大な蔦に絡め取られているような形になっていた。近くで見た蔦で出来た塔は遠くで見たよりも巨大で、禍々しい空気感を漂わせている。


「よし。行こう」

 アーケオは息を飲んで、城に入ろうとした時、遠くの方から殺気を感じた。殺気は徐々に強くなり、やがてその主の正体が分かった。巨大なコウモリのような魔物だった。


「あれは!」

 マシュロが目を見開いて、剣を構えた。


「三皇魔。最後の一角。アクロバルカン」

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