パラドックスぶるーす
@shidandan
第1話
『パラドックぶるーす』
「ピンポーン」
朝から不快な音だ。ガチャ
「どちら様ですか?」
私より少し背の高い青年が立っていた。
「私が死ぬためにあなたを殺しにきました」
「は?」
いきなり何を言い出すんだ、頭がイカれてるのか。
そう思い、ドアを閉めようとすると、
「ガッ」青年の足が挟まる。
「少し話を聞いてください、おじいさん」
何を言ってるんだ、俺はまだ23だ。
やっぱり頭がおかしい。それとも変な夢でも見ているのか。
「帰ってくだ、、」言い終わる前に青年が、
「僕は自分の人生に飽き飽きしてしまったんです。だから死のうと。でも、痛いのは怖い。だったら僕の先祖を殺せばいいじゃないか。そう思ったんですよ。ちなみにここまで言えばわかりますよね?僕はあなたの孫です。未来から来ました。」
頭が追いつかない。冷静でいられるはずもないが、そんな中でも自分は誰と結婚したのかが気になってしまった。我ながら危機感がない。
「つまり君は僕の孫っていうことなのか?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃないですか。話が長くなって情を持つのも嫌なので、もう殺して良いですか?」
「いやいや、待ってくれ!俺、つまりおじいちゃんには会ったことあるんだろ?少しは躊躇してくれよ!」
青年の目に光がなくなるのを感じた。
「躊躇?どの口が言ってるんだか、あなたのせいで、僕たち家族がどれだけ不幸になったか知らないでしょ、もう良いです。殺しますね」
青年は持っていたカバンから鈍い黒光りしたものを出した。
拳銃だった。未来でも形は変わらないのだな、そんな下らない考えが頭をよぎった。
「では、さようなら」
今まで聞いたことがない空気が張り詰めるような音が聞こえたと同時に、意識が遠のいていくのを感じた。
「・・・」
「・・・・・・」
「・・ピンポーン」
朝から不快な音だ。長い夢を見ていた気がする。
朧げながら、思い出す。客人が来ていることも忘れて。
自分の孫という人物が未来から来て、孫が死にたいから先祖の俺を殺す。そんな夢だ。考えてみたら俺を殺したら孫は生まれない。
結果俺を殺しにくる孫も来ない。つまり俺は死なないんじゃないか。下らない。
所詮夢の話だ、こんなに考えることもない。
「ピンポーン」あぁそうだった。客人を待たせていた。
「はーい、どちら様ですか?」
「あなたを殺しに来ました」終
パラドックスぶるーす @shidandan
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