第2話
カーテンを開けて外を見ると、うぐいすのさえずりが聞こえてくる。
窓から射し入る朝日が、何とも鬱陶しくて、私はカーテンを閉めた。
あぁ、今日もまた眠れなかった、そんな風に思いながらベッドに顔をうずめる。一年前までは元気だった。こうして病院に閉じ籠もっている必要なんてなかった。小さい頃から体の強かった私は、風邪も滅多に引かなかった。最近いつ風邪を引いたかと聞かれると、高校二年生の時だ。大雨の中、「馬鹿だから風邪引かない!」なんて言いながら傘も差さずに帰って、次の日見事に熱を出した間抜けなエピソードが思い出される。そんな私だから、「死」なんて気にせずに生きてきた。
約一年前、ちょうど大学受験が終わり、晴れて大学生になれることが決まった矢先、それは突然にやってきた。
「癌、ですか?」
母の抜けた声が診察室に響く。
「脳の神経細胞に癌が見つかりました」
その言葉が私に向けられたものであることは、到底理解できなかった。少し歩きづらさを感じて、病院に来たら、突然検査が決まって。突然癌だと言われたのだ。
「でも、癌はもう治る病気だって言われてるし、この子だって…」
「娘さんの脳に出来ている癌は、脳幹部に出来ているため、手術で除去することが出来ません」
「じゃあ、この子はどうしたらいいんですか、死ぬしかないってことですか」
「放射線治療をすれば、多くの患者さんで症状の改善が見られています。治療をして、様子を見ていきましょう」
こうして私の闘病生活が始まった。放射線治療は幸い副作用があまり出なくて、調子はどんどん良くなっていった。二ヶ月の治療を終えると、少し動かしづらかった足も、自由に動かせるようになった。予後が最悪だと聞いていたが、「もう治ったんだ、案外楽勝じゃん」と勝手に思っていた。
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