同級生の、お葬式!

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 高校3年生の時、小学校・中学校が一緒だった同級生の男子が交通事故で亡くなった。彼の名は内藤。高校は違ったが、同じマンションに住んでいたので中学卒業後も、エレベーターなどで顔を合わせることは多かった。いつも明るく、健康的な男だった。


 夕方、寝ていたらいきなりCDラジカセが最大音量で鳴り響いたのだ。勿論、タイマーなどはセットしていない。壊れたか? と思ったが、幸い壊れてはいなかった。


 安堵してまた横になると電話がかかってきた。知人の石田からだった。


「今、崔君のマンションの前で事故があったんや、内藤が車に轢かれた、崔君、病院に行こう!」

「マジか? 行くわ!」


 石田の原付に2人乗り、ヘルメットも被っていなかった。当たり前だがパトカーに止められた。それはそうだろう。止められたことに対しては仕方ないと思うが、とにかく僕等は急いでいたのだ。


「知人が救急車で運ばれたんです!」

「罰金も払うし、減点でもええから、今は病院へ行かせてください」

「わかった、行け!」

「「ありがとうございます!」」


 優しい警察官のお兄さんで助かった。


 僕等が病院に着いた時には、内藤は既に息をしていなかった。僕等が呆然として待合室で座っていると、内藤の父親が話しかけてきた。お通夜や葬儀で手伝いをしてほしいとのことだった。勿論、僕達は引き受けた。翌日には小学校と中学校が同じだった知人達も集まり、受付や案内など、いろいろと手伝った。僕等が出来ることは全てやった。


 中学の時の同級生が多く集まった。僕等が案内やお茶出しなどをしていると、式場から一歩出たところは同窓会になっていた。まあ、中学以来の集まりで、みんな高校3年生になっていたのだ、同窓会状態になるのはわかる。だが、男子達は女子を口説いていた。おいおい、それは違うだろう? ナンパは結婚式の2次会でやれよ!


 僕は恐ろしかった。涙を流して手を合わせていた男女が、式場を一歩出たら笑って口説いて口説かれていたのだ。“人が死んでいるんだぞ!”僕は納得出来なかった。



 僕はその時、“僕が死ぬときは家族葬にしてもらおう”と決めた。僕の葬式を、同窓会にしてほしくない。







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同級生の、お葬式! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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