2話 バグの発生

優太は、ゲーム内の街を歩きながら、周囲の混乱をじっくりと観察していた。かつてはコードの中でしか見たことがなかったバグが、現実の世界として目の前に広がっている。彼はその異常を修正するために、まずは情報収集から始めることにした。


「こんにちは!」優太は近くのNPCに声をかけた。NPCは驚いた様子で優太を見つめ、すぐに怯えた表情を浮かべた。


「あなたも…バグ修正の人?」NPCが問うと、優太は頷いた。「そうだ。ここで何が起きているのか、詳しく教えてくれ。」


NPCはホッとした様子で、街の広場に集まっていた人々を指差した。「広場の周りで、バグが発生しているんです。いくつかのエリアではグラフィックの崩れや動かないオブジェクトが発生して、私たちが困っています。」


広場に向かうと、そこにはいくつかの問題が発生していた。特に目立つのは、巨大な石像が不自然に浮かび上がり、周囲の景色とぶつかり合っている状態だった。また、町の一部では、住人たちがまるでパラレルワールドに迷い込んだかのように、互いに通じない会話をしていた。


優太は、デバッグの直感を働かせながら、まずは浮かび上がった石像を調べることにした。彼はゲーム内のコードが崩れた結果、物理的なオブジェクトが不安定になっていると考えた。


「この石像の浮遊は、物理エンジンのバグが原因かもしれない。」優太は周囲のNPCに説明した。「これを修正するためには、まずコードのどこが問題なのかを突き止める必要がある。」


優太は、ゲーム内で使用されているデバッグツールにアクセスし、リアルタイムでエラーを検出する機能を利用した。彼は石像の浮遊現象を引き起こしているバグのパターンを特定し、修正のためのパッチを作成する。


「これでどうかな?」優太がパッチを適用すると、石像の浮遊現象がゆっくりと落ち着き、正常な位置に戻った。周囲のNPCたちは歓声を上げ、感謝の意を示した。


次に、町の別のエリアに移動し、住人たちが異常な会話をしている原因を調査した。優太は、会話のデータベースが破損していることを発見し、その修正を行った。住人たちは正常な会話を取り戻し、町の雰囲気も改善された。


「これで、かなりのバグは修正できたはずだ。」優太は安堵しながら、広場の中心に立つ。周囲のNPCたちは彼に感謝の言葉をかけ、彼のスキルに感心していた。


その時、一人のNPCが優太に近づき、耳打ちするように言った。「実は、もっと深刻なバグがゲームの内部で発生しているんです。広場の外にあるダンジョンで、恐ろしいバグが出ていると聞いています。」


優太はその情報に驚きながらも、すぐに行動に移す決意を固めた。「ダンジョンの中のバグ…それなら、早急に対処しなければ。」


優太はダンジョンに向かうため、準備を整え始めた。ゲームの中での冒険は予想以上に危険であることを感じながらも、彼は自分のデバッグスキルがこの世界を救う鍵であると信じていた。

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