デバッグ・クエスト: ゲーム内の救世主

頑強文熊

1話 ゲームの中の世界

青木優太は、仕事が終わるとオフィスのデスクに座りながら、最新のVRゲーム「エターナル・クエスト」のテストプレイを行っていた。彼の画面には、ゲームの中で起きる様々なエラーやバグが表示され、その修正作業が淡々と進められていた。優太は、ゲームのバグを見つけ出し、修正することが仕事の全てだった。


「このバグもまた修正しなきゃな…」と優太はつぶやきながら、メモ帳に修正箇所を書き留めた。


彼は、ゲーム内で発生する異常な動作やグラフィックの崩れを修正するため、膨大な量のコードを調査し、修正プログラムを組み込んでいた。何年もデバッグの仕事をしてきた彼にとって、これはもうルーチンワークの一部となっていた。


突然、画面が激しくフラッシュし、優太は眼前の景色がぐるぐると回転する感覚を覚えた。「なんだこれは…?」彼の心臓は急激に鼓動を打ち、視界が暗転していった。


次に気が付くと、優太は見慣れたオフィスのデスクの前ではなく、見知らぬ場所に立っていた。周囲には巨大な建物や賑やかな街並みが広がり、空には奇妙な浮遊するクリスタルが輝いている。まるで自分がゲームの中に入り込んでしまったような景色だった。


「ここは…どこだ?」優太は周囲を見渡しながら、戸惑いの声を漏らした。目の前には、ゲーム内のキャラクターたちが実際に歩き回っており、まるでゲームの中に迷い込んだ現実の世界のようだった。


その時、近くのキャラクターが優太に気付き、驚いた表情を浮かべた。「おい、見ろよ!あれは…バグ修正員か?」


優太はそのキャラクターに話しかけられる前に、自分の体がゲーム内のキャラクターたちと同じような服装や装備をしていることに気づいた。彼は自分が本当にゲームの中にいることを理解し始めた。


「これって…どういうことだ?」優太は自分の手を見つめながら、状況を把握しようと必死だった。彼の周囲には、ゲームの住人たちが困惑した様子で集まり、何かのトラブルに直面している様子が見受けられた。


「バグが発生している!」近くのNPCが叫びながら、周囲の混乱を指摘した。優太はその言葉に耳を傾け、ゲーム内で発生している問題が自分の専門分野であることに気づいた。


「ここに来たのは…もしかして、バグ修正のためか?」優太は、自分のデバッグスキルを駆使してこのゲームの世界を救う使命を感じた。彼は、まずは周囲のキャラクターたちと協力し、ゲーム内のバグを修正するための計画を立てることを決意した。


優太が歩き始めると、街の中にはゲームのバグによって発生した奇妙な現象が次々と現れていた。グラフィックが崩れたエリアや、動かなくなったNPC、誤作動を起こすアイテムなど、彼がこれまで修正してきたバグそのものが現実のものとして目の前に広がっていた。


「まずは…バグの源を探す必要がある。」優太は、ゲーム内のエラーを修正するための道を切り開く決意を固め、ゲームの世界での冒険を始めるのだった。

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