死亡フラグが見える僕が、異世界に転生して世界最強へ

孤宵

第一話 死亡フラグが見える僕

「フッ、生き残ったのは、俺とお前、だけ、か」


銃声と爆音が響き渡る、荒れ果てた大地にぽつりとある小さな塹壕の中に

満身創痍な二人の兵士がいた


「はい、さらに、敵はもうすぐそこまで」


そう、この塹壕の周りには敵が沢山、もう打開、逆転できるような状況ではなかった


「なぁ、トーマス、俺たち、この戦争から帰ったら何がしたい?」


「そうですね、俺は内地に残してきた、幼馴染がいるんで」


「いいねぇ、そういうの、じゃあ絶対生きて帰らなきゃな」


そう言って、一人の男は持っていた銃に新しい弾を装填する


「ちなみに、大佐は、生きて帰ったら何がしたいですか?」


「俺か?俺は―そうだな、、酒が飲みたい」


「喉の渇きが止まらねぇんだ」


「じゃあ、絶対生きて帰らないと、ですね」


「フッ、そうだな」


「じゃあ行くか、第七部隊、出撃」


そう言って、大佐とその部下だけの第七部隊は

敵しかいない集団の中に飛び込んでいった―――


ピッ


そして、そこでリモコンの音がして、テレビの番組が切り替わる


「ハッハッハッ、遂に完成したぞ、最強のAIが」


一人の白衣を纏った男が、デカイ機械を見ながらそう高笑う


「やりましたね、博士」


「フッフッフッ、長年の努力の結晶じゃ」


「はい、今までのAIなんて塵に見えるくらいの性能」


「これが暴走したら終わりますね、人類」


「暴走?そんなこと起こるわけがないじゃろ?最新鋭のコントロールシステムとセキュリティを搭載しておるんじゃからの、ハッハッハッハッ―――」


ピッ


リモコンの音がして、テレビの番組が切り替わる


「俺は誰も信用しない、お前らの中に殺人鬼がいるんだろう?」


「俺は自室に帰らせてもらうぜ―――」


ピッ


リモコンの音がして、テレビの番組が切り替わる


「はぁはぁはぁ、やったか?」


ピッ


リモコンの音がして、テレビの番組が切り替わる


ピッピッピッピッピッピッ


何回も何回も、色んなドラマや映画を見て、別のドラマに別の映画に切り替える


なんで、こんなことをしてるのかって?


僕は、死亡フラグが見える


これは比喩とか、そういう類の物ではない


例えば、、ほら、あのテレビに映っている男


多分、君たちの視点だと普通に見えているんだろうが


僕の視点だと、こう、黒い煙のようなものが男から出ている


そう、この黒い煙こそが、死亡フラグ、だ


そもそも死亡フラグって何?って人に説明すると


死ぬ事への伏線、人が死ぬことの予知のようなものだ


「あ、やっぱ死んじゃった」


そう言いながら、テレビを消す、そして時計を見ると丁度7時半だったので


学校に向かう、このドラマや映画の周回、これはモーニングルーティーンのようなもので


これをすることによって、死亡フラグが見えるかどうかを確認する


朝起きたら、死亡フラグが見える能力が無くなっているかもしれないからね


この能力?のせいで、俺は結構苦労して生きてきた


こういうドラマや映画の死ぬキャラが分かってしまうせいで、面白みは激減


まだアクションならいいけど、推理ドラマとか見れたもんじゃない


それに―――


(ああ、また、これか)


眼の前を黒い煙が包む、死亡フラグだ


画面を通じての死亡フラグは黒い煙の量は少ない


だが、目の前で起きる死に対するフラグ、煙は辺り一体を包むくらい多い


人がこれから死ぬのが分かっているのに何でそんなに冷静なのって?


もう慣れた


死って奴は、奇想天外で不可思議な物じゃない


当たり前に、日常のそばにある物だ


今もどこかで誰かが死んでいる


何回も、何回も、この光景は見てきた


最初は泣いたり、喚いたり、吐いたり、してたけど


今では、ああ、またかくらいの感情しか湧かない


だから、だから、気にしない


「ちょっと、何してんの、危ないよ」


女性の高い声が耳に入る、すぐ近くだ


そして、その女性の声が聞こえる方に目を向ける


(あれ?あの制服、僕と同じ学校の、それになんか見覚えが―――)


「朱音!!」


誰かの名前を呼ぶ、女性の声が頭に響く


そして、その名前、彼女が呼んでいる人の名前を僕は知っている


脳が理解する前に、反射的に僕は駆け出していた


頭の片隅にトラックが走る音が聞こえる


だが、そんな物は気にしない、ただただ、黒い煙の濃い方に走った


そして、見えた、横断歩道、赤信号、迫りくるトラック


一人の女性と、一匹の猫


一人の女性を中心に黒い煙が渦を巻いていた


そして、その女性を僕は知っていた


天城朱音アマキアカネ、17歳、成楠高校3年、剣道部


僕の幼馴染、だ


彼女には恩がある、一生掛けても返せない恩が


僕は子供のころ、友達がいなかった、信用できる大人すらも


そりゃそうだ、死亡フラグが見えるなんて気味の悪い子供に


友達なんてできるわけがない、唯一信じてくれた両親も死んだ、俺が小学生の時に


そんな絶望の渦にいた、孤独で独りぼっちだった俺を救ってくれたのが、朱音だ


黒い煙が見えるとか意味の分からないことを言っていた僕を信じてくれた


それから、僕と朱音は中学まで一緒に遊んだりして、高校で疎遠になった


なんでかって言われると、まぁ中学と高校にはとても大きな壁がある、としか言えない


けど、寂しくはなかった、一人でもなかった、朱音のおかげで出来た友達がいるから


まぁとにかく、僕は朱音に大きな大きな恩があるわけだ


だから、僕は車に轢かれそうになっている朱音と猫を助けた


代わりに、僕は轢かれた


ああ、痛い、色んな所が痛い、そして意識が消えていく


血が抜けていく感覚を味わう、死ぬってこんな感じなんだ


「一条君、なんで、なんで、凛くん!!!」


僕の名前、、声が聞こえる、ああ、懐かしい声だ、そして、とても暖かい


その声と対象に、頬に冷たい何かを感じる、流れる液体を感じる


ああ、そういう、、僕も親しい人が死ぬときは、涙を流すことが、できるのかな


ごめんね、今まで見殺しにしてきた人たち、こんなに苦しいとは思わなかったんだ


今だったら、誰の死でも、悼み、苦しみ、涙を流す事ができるかも、知れない


そんなことを考えながら、意識は着々と消えていった、そして完全に消え去った


電池が切れたように、プツリと―――


(あれ?なんだ、この感覚、僕、死んだのに)


突然、本当に突然、それは起こった


切れてしまった線が、意識が回復したのだ


(なんだ?これ冷たい、、床?)


頭が困惑しながらも、手を動かす、それは自分の物ではないみたいで


自由に動かすことができない、ただ何かに触れる事は出来た


(あ、だんだん、眼が見えて、、)


目が慣れてきた、そして、慣れない目をよく凝らし、目の前の何かをよく見てみた


「ゴブリン?」


そう、目の前にゴブリンがいた、ゴブリン、物語に出てきそうな


「え?どういう、そもそもここは?」


周りを見渡す、すると、石で出来た壁と床


さらに、黒い煙が漂っている事が分かる


そして、その黒い煙が自分を中心に渦巻いている事を理解した


「え?もしかして、俺、このゴブリンに―――」


そう、考えていた、その瞬間、目の前にいるゴブリンが手に持っていた剣を振り上げた


その剣は黒い煙を色濃く纏っていた


それを見て、俺は反射的に立ち上がった、頭の中には


(やばい、死ぬ)


としかなかった、死んだはずの自分が生きている事、そんなことはどうでもよく


死にたくない、あの痛みを、苦しみをまた感じたくない、それだけだった


振り上げられた剣をゴブリンが降ろす瞬間、何とか避ける


だが、危機一髪、恐らくいつか限界が来るだろう


そして、次の瞬間、俺の頭と体は泣き別れ、その結果、待っているのは『死』だ


「やばい、やばい、やばい、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ」


すくむ足を動かし、何とか走る


「グギャアアア」


だが、足音と声でまだ近くにゴブリンがいて、追いかけている事が分かる


とにかく、ゴブリンとは逆方向に走る、無我夢中、思いっきり


すると、この行き先に誰かいる事に気づく


そして、僕は助けてくれるかも、という思いが頭を埋め尽くす


その一瞬の油断、それをゴブリンは見逃さなかった


剣は振り下ろされる、そして、僕の背中に激痛が走る


悲鳴が飛び出る、人が発する言葉とは思えない悲鳴が


それと共に、僕は転ぶ、あまりの痛さに足が止まる


床を、地面を舐める事になる


痛い、痛い、痛い、多分、血が出てる、血が出てる?


まずい、まずい、まずい、やばい、やばい、やばい、死ぬ―――


そう思った時、僕は顔を上げ、目を道の先、先ほど、誰かがいた位置を見る


すると、まだいた、だから、僕は全身全霊、全てを振り絞る思いで


一言、呟く


「たすけて」


僕がそう言った、その瞬間、さっきまでいた、人影が消える


(ああ、逃げた、助けてくれなかったのかな)


そんな思考がよぎる暇もなく、自分の体の横を雷が奔る


と共に、とてつもない風圧を感じる、そして、次の瞬間、誰かの声が耳元を掠る


「紫電一閃」


僕が振り向くと、僕ではなく、ゴブリンの頭と体が泣き別れ


そして、その先に誰か、長髪の女性がいる事、それに気づく


「大丈夫?」


奥にいた人が近づいてきて、そう言った


サラサラとした長い白髪をたなびかせた彼女は、とても美しかった


そして、自分が助かった事を噛み締めた


だが、この危機はまだ終わっていなかった


それを、周りを取り巻く黒い煙と、彼女の奥に見える


美しい彼女には似合わない、醜いゴブリンの群れがいる事を表していた―――

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