第2話 恵琉の計画②
そこで考え付いたのが『自らが男同士の恋愛を補助する役割を担う』ことだった。男同士の恋に発展できるように、自分が男を育て上げればいいのではないか、という結論に至った。
とても良いアイデアだと思った彼女は、さっそく行動に移すことにした。そのための第一歩が結婚だった。すでにこの時点で恵琉は25歳。結婚を考えてもいい時期だった。自分の遺伝子を後世に残したいとは思わなかったが、イケメンの遺伝子は残したかった。
自らのアイデアにより、恵琉は自分がこの世に生まれた理由を見いだした。神様は、自分にイケメンの子供を産めと言っているのだ。恵琉は自分がろくでなしのクズだという自覚はあったが、やめるつもりはなかった。
こうして、恵琉は夫となる幸(ゆき)と出会うことになった。恵琉は今まで男性と付き合ったことはなく、幸が初めての男だった。結婚相談所に通い、理想の男性と出会うことができたのは幸運だった。幸の人生を変えてしまうことに多少の戸惑いは覚えたが、それ以上に、自分の計画がどこまで現実世界に通用するのか試したいという思いのほうが強かった。
彼女が考えたシナリオに特に複雑な点はない。手順としては簡単だ。
①イケメンの男性と結婚。彼との間に子供をもうける
↓
②夫の相手となる男性を探す
↓
③夫と相手の男性との恋をサポートする
↓
④頃合いを見て、離婚を求める
↓
⑤子供の親権を夫に渡す
↓
⑥夫と相手の男性との愛に満ちた生活を陰ながら見守る
実は、恵琉は子育てするBLカップルの話が結構気に入っていた。しかし、たいがいの場合、どちらか片方の男性の子供を二人で育てている。それだと、もう片方の男の遺伝子はそこで潰えてしまう。創作の問題点を改善すべく、どちらにも子供がいるように仕組む必要があった。
そのため、夫の相手となる男性は、子持ちのシングルファザーが適任だ。互いの子供を男性二人が育てるというシチュエーションを作るためには欠かせない条件だ。もし、条件に合う男性がいない場合は、相手の男と子供を作ることも恵琉は視野に入れていた。
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