今朝、宇宙人を拾った。
家庭菜園きゅうり。
ゴミ捨て場の宇宙人
やりがいを求めて入った会社はとんでもないブラック企業だった。
パワハラも残業もなんでもありの会社で、一日にとんでもない量の仕事をさせられ、一つでも不備や誤字があったら怒鳴り散らされる。
定時に帰ることのできる人がいないのが当たり前で、最悪会社で寝泊まりすることもある。
翌日の仕事は体をバキバキ言わせながらやるしかないのだ。
そんなブラック企業を先日辞めてきた。
だけどやっぱり三年の癖はすぐ抜けず、朝の四時半に目が覚めてしまった。
二度寝をしようと目を閉じても眠れず、結局五時になってしまった。
外も明るくなってきたし、少し散歩にでも出かけようか。
そんなことを考えながら外に出た。
夏の終わり、もしくは秋のはじめ。
きっと今の季節はそう呼ばれるのだろう。
お昼は暖かいとはいえ、やはり朝の五時は上着を羽織っても少し肌寒い。
時々行くコンビニへの道を散歩道として歩いていると、清々しい風が朝の匂いを運んでくる。
次の仕事なんて決まっていないけど、なんだか門出を祝われているような気がして少し元気が出た。
勝手な解釈だけど、些細なことでちょっと幸せになるのもきっと悪くない。
ああ、散歩も悪くないんだな。気分がいい。
そろそろコンビニだ。でも特に欲しいものもない。
どこから引き返して家に帰るべきなのか、普段散歩なんてしないせいでわからない。
だからといってコンビニまだ行ってそのまま引き返してもなんだか不審に思われるのではないだろうか。
うーむ、どうしようか。なんて考えて通り過ぎようとしたゴミ捨て場。
回収できませんの紙が貼られたゴミの隣に人がうずくまっているのが見えた。
しかも服は汚れているし、私と比べるとどこか弱々しく見える色白の肌に擦り傷も見える。
とにかく、放っておくわけにはいかないのはわかる。
「あの、大丈夫ですか。救急車、呼びましょうか。」
戸惑いながらもそう声をかけてみた。
その人はどうやら私がいることに気づかなかったようで、びくりと肩を揺らした。
「救急車、いりません、呼ばないで」
ゆるりと顔を上げて掠れた声で答えたその人は、世間では所謂イケメンの部類に入るような整った顔をしていた。
どこか儚い雰囲気を纏った彼は、このままにしておいたらきっと消えてしまうような気さえした。
ぐう、そんな音が目の前から聞こえて、ついコンビニまで走ってしまった。
「ねえっ、これ、あげる。」
普段の運動不足で息を切らした私の声に、彼はまた力のない様子でゆるりと顔を上げた。
「……ありがとう、ございます。」
おぼつかない様子でおにぎりの袋を開けて首を傾げて、やっと口をつけて食べ始めた。
一緒に渡したペットボトルの水も、飲み干す勢いで傾けていた。
「ごちそうさまでした。これ、お米でできた食べ物なんですね。」
なんて言った、今。お米でできた食べ物?
ただのおにぎりをそんなふうに言うだろうか。
「ただのおにぎりだけど……」
「おにぎり、おにぎりですか。」
なんだ、この初めて知ったみたいな反応は。
「あの建物は、お店でしたか。」
だから、それもただのコンビニだって。
なんだ、なんなんだこの子は。
「君は、何者なの。まるで初めて地球に来た宇宙人みたいだよ。」
私のその質問に彼は動揺していた。
そして、こう答えたのだ。
「僕、う、宇宙人なんです。内緒にしてください……!!」
私、宇宙人に出会いました。
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