第6話 少しずつ近づく距離

新学期が始まり、クラスの雰囲気も少しずつ落ち着いてきた頃、教室では初めてのクラス役職決めが行われることになった。掲示板には学級委員をはじめとした役職の説明が貼り出され、生徒たちはそれぞれの役割について話し合い始めた。


担任の先生が教室に入ると、静かな教室にその声が響いた。


「それでは、まず学級委員を決めましょう。推薦する理由も含めて、候補者を挙げてください。」


静まり返る教室の中、和真が手を挙げた。彼は自信満々に立ち上がり、教室全体を見渡して言った。


「俺は、勇斗と美月さんを学級委員に推薦する。」


その言葉に、クラス全体が驚きの声を上げた。和真の提案は予想外だったが、彼は続けて説明を始めた。


「勇斗は責任感が強いし、美月さんは細やかな気配りができる。二人ならクラスをうまくまとめてくれると思うんだ。」


花音もにっこりと笑いながら頷き、和真の意見に賛成の意を示した。


「私もそう思います。二人ならきっと素晴らしい学級委員になるでしょう。」


クラスメートたちはその言葉に納得し、頷いたが、勇斗は突然の指名に戸惑いを隠せなかった。立ち上がり、少し焦った様子で言った。


「ちょ、ちょっと待てよ!絶対無理だって!俺が学級委員なんて…!」


その言葉に、クラス内が笑いに包まれた。和真は肩をすくめながら、にやりと笑って言った。


「じゃあさ、俺と花音が補佐するから安心しろよ。お前らが困ったら、全力でサポートするから。」


勇斗は驚いた表情で和真を見つめたが、彼の言葉に少し安心したようで息をついた。美月も静かに笑みを浮かべ、和真と花音に感謝の意を示した。


「ありがとうございます。二人がサポートしてくれるなら、安心です。頑張ります。」


「でも、俺はそんなまとめ役なんてやったことないし。」


和真はにっこりと笑いながら言った。「いいじゃんか!四人で一緒にやるんだし、楽しい思い出を作る機会だと思ってさ!」


こうして、勇斗と美月が学級委員に、和真と花音が補佐役に決まった。クラス全体がその決定を祝うかのように拍手を送り、教室の雰囲気は一気に明るくなった。


役職決めが終わり、クラスメートたちは次の話題に移った。担任の先生が再び前に立ち、次の課題を発表した。


「さて、次は体育祭の役割分担を決めましょう。リレーのメンバーを決めてください。」


教室内が再び賑やかになり、生徒たちがそれぞれのやりたい役割を話し合っていた。和真はすぐに手を挙げ、明るく言った。


「リレーは俺たち四人でやろうぜ!チームワークもバッチリだろ?」


勇斗は少し呆れたように見ながらも、和真の提案に笑みを浮かべて頷いた。「まあ、リレーならやってみたいし、楽しそうだな。」


花音も元気に頷き、美月も静かに同意の意を示した。「そうですね、みんなで一緒に頑張りましょう。」


こうして、四人は体育祭のリレーメンバーに選ばれた。クラスメートたちもそのチームに期待を寄せ、クラス全体が一体となって体育祭に向けた準備が始まった。

クラスが徐々に一つにまとまり始め、勇斗と美月、そして和真と花音も、これからの学校生活に対する期待を胸に抱きながら、新しい一歩を踏み出していった。

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