第10話 からくり

調査の手始めとして、記憶喪失の三つ子に会うことにした。


 プティング家の車で事件現場の別荘に着くと、服装も、髪形も、もちろん顔もそっくりな三つ子が出迎えてくれた。


 見分けがつかないなんてものじゃなく、同じものに見える。


(誰が誰だかわからないと、話しにくいな)


 そんな僕をよそに、


「また、あなたたちは、同じ格好をして」


 ミルフィーユは三つ子を見分けられるらしい。


(このガキ、只者じゃない?)


 僕が驚いていると、三つ子のひとりが、


「これです」


 手首を指さした。


 見ると、黄色い布のような物が巻かれている。他の三つ子も、それぞれ違う色の物を手首に巻いていた。


(そういうことか)


 僕はからくりがわかって安心した。 


「私が考えたのよ」


 ミルフィーユが得意げに胸をそらしたが、


(こんなの、誰でも思いつくだろ)


 特に斬新なアイディアだとは思わなかった。

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