人とリボン

天川裕司

人とリボン

タイトル:人とリボン


最近、『人とリボン』って本が人気爆発だった。

はじめは電子書籍だったのだが

その売れ行きがあまりにも良かったらしく、

このたびめでたく書籍化されたとか。


私はもともと読書好き。

この本は恋愛小説で、作中に登場する主人公の男性が

本当にかっこよく、多くの女性読者の心を虜にしていたようだ。


私もとりあえず買ってみた。

「…ふーん、結構、面白いかな」

結構いろんな本を読んできて目が肥えていた私。

だからか皆が騒ぐほど、

それほど面白いとは思わなかった。


「てか普通の恋愛小説じゃん」


でもその直後に不思議なことが起きたのだ。

街中を歩いていた時。

「きゃあ!」

「おわっ!あ、大丈夫!?」

「もう〜どこ見て歩……あ、だ、大丈夫です…」


向こうから走ってきた人と

ぶつかってしまい私は派手に転んだ。

そして起き上がろうとして彼の顔を見た途端、

私は恋に落ちた。


その彼、あの『人とリボン』に登場する

男性主人公に激似だったのだ。

ライトノベル調に仕上げられたその本だから、

中に挿絵のようなものが付いていた。

その写真はかなりリアルに描かれており、

そこに描かれた男性は今目の前にいる…


(後日)


彼「はい!アイスクリーム買ってきたよ♪」

「あ、ありがとう〜♪」

私とその彼は付き合うことになった。

私の方から付き合ってくださいなんて

そんな雰囲気に持って行っちゃったんだ。

一目惚れってあるんだ、ってその時本当に思った。


そしてある日、私はついに彼の部屋へ行くことに。

彼「さ、どうぞ♪上がって」

「♪お邪魔しま〜す」

私はもう嬉しくてたまらない。

まだ初恋の人の部屋に入った気分♪


とその直後、部屋の床が抜けて暗闇の中に吸い込まれた。

「きゃあ」と言う間もなく、私は礼儀正しく人形のように、

暗い部屋の中にたたずんでいたらしい。


周りを見ると、私の他に何人も女の人がいた。

彼女たちも私と同じように礼儀正しく、

ロボットのように整列している。


そして時間が来ると皆その部屋から出て行って

書店へ行き、あの『人とリボン』を買うのだ。

そしてこの部屋にまた戻ってくる。

買った本はこの部屋の中で消えるらしいけど、

売れ行きだけはあの現世で残されるみたい。


どうりであの本が売れてるわけだ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=0Z86eoLpVdw

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人とリボン 天川裕司 @tenkawayuji

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