ルルちゃんは、私の手を引いてソファから立ち上がらせた。私はその手に、混乱したまま従った。積極的に従いたかったというよりは、物を考える余裕がなかったという方が正解だろう。はじめてのひとに振られたばかりだったし、レズビアンのひとに会ったのははじめてだったし、かわいいと言われたのもはじめてだった。

 ルルちゃんは、私を奥の部屋に連れて行った。そこは寝室で、ダブルベッドが真ん中に置かれていた。そのベッドもやっぱり白とピンクで、天蓋までついていて、とてもかわいらしかった。

 ベッドに座らせられた私は、どうしていいのか分からない気分で、目の前に立っているルルちゃんを見上げた。ルルちゃんの色の薄い両目はやっぱり真剣で、物言いとのギャップにやっぱり私は戸惑う。

 「かわいい。」

 そう言って、ルルちゃんは私に二度目のキスをした。私は頑なに、そんなの嘘だ、と思ったけれど、口には出さなかった。出したらもっと惨めになる気がした。

 「大丈夫。怖くないから。」

 ルルちゃんがそう言ったのだから、私はきっと、怯えるような表情をしていたのだろう。

 力抜いて、と、ルルちゃんは私の二の腕をさすってくれた。その細くて白い手が、胸の方に伸びてきても、嫌悪感はなかった。ルルちゃんがきれいだからだろうか、と、私はぼんやり思った。

 そうやって私がぼんやりしているうちに、ルルちゃんは手際よく私の身体を開いていった。元彼としたとき、セックスは痛くて憂鬱なものだった。セックスをしないでも恋人でいられればいいのに、と思っていたくらい。でも、ルルちゃんとのセックスは、痛いどころか気持ちが良かった。私の身体がルルちゃんに向かってするすると開かれていくのが分かる。

 かわいい、と、ルルちゃんは何度も言った。私は目を閉じて、少しだけ泣いた。元彼に、そう言われてみたかったな、と思った。全然かわいくないわたしでも、それくらいの願望はあってもいいだろう。

 「泣かないで。」

 ルルちゃんの温かくてつるつるした舌が、私の涙を舐めとってくれた。ルルちゃんの身体はどこも、温かくてつるつるしていて、やわらかくてどこまでも指が沈むみたいで、触っているのか触っていないのか分からないくらいだった。

 かわいいひとは、身体の感触までかわいいんだな、と思うと、涙が止まらなくなった。ルルちゃんは、辛抱強く、夜明けまで私の涙を舐め続けてくれた。

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