海に寄せる詩

藤堂こゆ

あたしは海の中に住んでるんだ

漠とした海の中

深い、深い海の中

もがいても叫んでもびくともしない

だけどあたしは腕をかく

ぶくぶくとあぶくを吐き出しながら

少しずつ、少しずつ

息を整え

何食わぬ顔で地に上がる

あんたに会うために


あたしは人魚

日本列島は沈没中

みんなは知らない

だれもが溺れかけてることを

少しずつ、少しずつ

息を詰め

何食わぬ顔で地を歩く

人の津波は地をさらう

ひそひそひそひそ……

囁きの海はアクロバティックに

亡霊の海は仲間を求め

新たな人間をさらいに行く


今日も

あたしは何食わぬ顔で

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る