第2話 私が魔法少女になんてなれるわけが無い!!
「11番の奏音さーん!」
薄く開いた目を擦って私は目を覚ます。
昨日…怪獣騒ぎで眠れなかったから…やっぱり眠いや…
〈起眞市総合病院〉
病院で検査をするこになった私。
この前の怪獣騒動で怪我が無いけど一応ってことで、魔法少女連合の負担で一応、来ている。
「んん…行かないと…」
「ほら!奏音!早く行こうよ!」
すると、ポケットの中から一匹のふわふわな動物のような生物が浮きながら出てくる。
「んん…そうだね…」
この生物の名前はレンレン。
レンレンが言うには、私はなぜか魔法少女になったらしいく、魔法少女とは魔法使いとなって戦う少女のことを言うらしいんだけど…
もちろん。私が魔法少女になりたいといったわけでもないし、本当はレンレンに勝手に決められたこと。
私がヒーローになるなんて荷が重いよ…
「特に何も問題ありませんね。怪我もないし、至って健康な状態です」
「そ、そうですか…ありがとうございました…」
「よかったね!!奏音!!怪我が無くて!」
病院を出ると、真っ先にレンレンはくるりと一回転、宙を舞う。
「うん…そうだね…」
怪我とかしてたら魔法少女にならなくてもよかったかな…
「そういえばさ…魔法少女ってどんなことするの?」
「え?奏音は、魔法少女を知らないの!?」
コクリと首を縦に振る。
「あ、でもニュースで、ちょこっとだけ見みてるだけで…別に全然知らないってわけじゃないよ!?その…女の子のヒーロー…的なやつでしょ?」
「ん〜…ちょっと違うかな…そもそもまずヒーローを理解しないとだね…」
近年、異世界人とか怪獣とか違法研究所とか超能力者とかが増えているんだ。
そのせいで、世界的な平均犯罪率がぐんと上がった。
そのせいで、
だから、警察以上、自衛隊未満の武装組織、
そこには、いろんな能力者とか、超能力者とかが居て、敵勢力、まとめて
「そ、そういう組織だったんだ…でもそういうのってどういう風にヒーローたちを集めるの…?」
「そうだね…例えば、スカウトとか、後は試験とかから、なれるよ!」
「じゃ、じゃあ魔法少女は…?」
「それはね、スカウト制かな!魔法少女って所有権のないステッキをセンスのある人が持つことによって魔法少女になれるんだ!魔法のステッキには精霊の力が宿っていてね!実は魔法のステッキにもランクがあるんだ!ちなみに、僕は特級の魔法のステッキなんだ!」
「そ…それじゃあ、私の魔法が強いのって…」
「そう!僕のお陰!!奏音が魔法のステッキに馴染めばもっと強い魔法が出せる様にもなるし!!これから魔法少女として、頑張ってこ!!」
「わ…私!!魔法少女…っていうか、ヒーローになんてなりたくない!!!だって…他の人の命を守る仕事なんて…荷が重いよ!!!」
するとレンレンは、困った様に眉に皺を寄せる。
「で、でも…奏音は強いから、ここでヒーローを辞めちゃうと…これから救われるはずの命が救われないかもしれないんだよ…!?」
「で…でも!!!」
「だって!!実際に奏音は昨日!一人の命を守った!!魔法少女にならなかったら…奏音も昨日の女の人も…死んじゃってたかもしれないんだよ!?」
「そ…そうだけど…」
「とりあえずさ…一回、魔法少女連合の本部に行ってみない?もしかしたら何かあるかもだよ…?」
「ま、魔法少女連合…?」
「うん!全世界の魔法少女を統括してる場所なんだ!ちなみに、今は魔法少女は全世界に500人いるんだよ!」
「そ、そうなんだね…」
もしかしたら…そこだったら…魔法少女になるのを辞めさせてくれるかな…
私は拳を強く握る。
うん!言う!!私は魔法少女になんて…ならないって!!
「わ、わかった…行こう…魔法少女連合の本部に!」
「そう来なくっちゃ!」
そういうと、レンレンは小さな腕を少し振って、「きらきらり〜」と雰囲気だけは魔法の様な言葉を唱えた。
その瞬間、私たちの踏んでいる地面に魔法陣の様なものが刻まれると、その魔法陣から光が放たれ、私とレンレンは光の中に包まれる。
「こ、これは!?」
「これは転移魔法だよ!これで魔法少女連合の本部、イギリスに一瞬で行けるんだ!!!」
「魔法少女連合の本部ってイギリスなの!?」
「そう!!イギリスに魔法少女連合の本部があって、そこから世界の魔法少女を管理しているんだ!!もう少しで着くよ!!」
その言葉から1秒ほど経った瞬間、光が一気に周りへと散らばった。
強い光の中から解き放たれた私は、目の前の景色に唖然とする。
「ようこそ!!ここが魔法少女連合本部、
目の前に広がった大空間。
ショッピングモールの様に、真ん中は筒抜けになり、100mほど真上に太陽の様に照らす、一つの大きな電球の光。
直径100mほどはありそうな電球の光柱を囲むように、建てられた石像の通路が100階以上は並ぶ、大きな塔の様な場所。
「な…何ここ!?」
すると、入場口の様な壁に立っていた自分に一人の女性が近寄る。
「HELLO。こっちの言語で大丈夫でしょうか…?」
私は明らかに目の堀の深い女の人に少しだけ不安を覚えていたが、日本語で言葉を話され少しだけ安堵する。
「え…えっと…私…」
「やっほ〜エリス!ちょっとジェーニンに会いたいんだけど良いかな?」
「れ、レンレン様!?し、失礼しました!!!今すぐジェーニン様をお呼びいたしますので、もうしばらくお待ちください!!!!ほら、あなたたち…あの方を客室へ…」
エリスと言われた人物は、部下の人たちを私たちに付かせると、部下の人たちは迷うことなく、隣のエレベーターの様なものに私たちを案内する。
数百万円は使われていそう、装飾に目を奪われながらも、私は最上階のエレベーターが表示する最上階の100階へと到達した。
エレベーターの扉が開くと、真っ暗な闇だけが現れる。
「え…こ、これ…」
「さあ、お進みください。それと、これを首に付けてください。よろしくお願いします。」
そう言われると、一つの金属の輪っかの様なものを渡される。
「は、はぁ…」
私はその金属の輪っかを首につける。
喉あたりをひんやりとした鉄の温度を感じる。
「これは…」
「これは魔法少女の証。この本部に存在するためにはこの首輪が必要となります。」
「ま、魔法少女の証!?」
「そうだよ!奏音!あの
「そ、そんなの困るよ!!私…まだ魔法少女になったつもりじゃないのに…!!!」
「え?魔法少女ではないのですか?」
「わ…私は、魔法少女にはなりたくなくて…」
「ですが、レンレン様が既に憑いているみたいですが…」
「魔法少女を辞めたいだってぇ?」
大きな怒号が暗闇の中から響いた。
低い重量のある怒り混じりの声は私のことを戦慄させる。
「あ!ジェーニン!」
レンレンが自身の尻尾を振り、にっこりと笑った。
今の登場でなんでそんなに余裕なの!?
「魔法少女如きが主導権を握るとは、なんと愚かだ!!!!」
暗闇の中から現れたのは、身長が3mほどのスーツを纏い、指にはいくつもの指輪をはめ、そして、何よりも、皺を寄せて血管の浮き出た男だった。
怖い…足が震え、呼吸困難になりそうになる。
でも…ここで言わなきゃ…何も進まない…
「もう一回言ってみろ!!!!お前は先ほど、何を言った!?」
「わ、私…魔法少女を辞めたいです!!!!!」
「なぜ!!!!!」
今度は、怒号…と言うよりも静寂にしかし、圧をかけて言う。
私は圧に負けて頭から押し潰されそうだけど、その圧に耐えながらも、
「私は!!!!命を救えないかもしれないからです!!!!!」
「命を救えない?それはつまり、自分が弱いと言いたいのか?」
「はい!!!!私は心が弱いです!!!だから、命を救うとか、ヒーローになるとか…私には…到底できません!!!!!!」
「ほう。だが、残念だったな。貴様が魔法少女を辞めることは不可能だ!!!!」
「え…ど、どうして…?」
不可能という言葉が信じられなかった。
いや、まだ方法があるかもしれない…
信じていればきっと!!!
「その首輪が、魔法少女の証であり、呪いだからだ。」
「の、呪い…!?」
「ああ。その首輪、外そうとしたら魔法で主を殺し、魔法少女として活動しないと、その首輪は主を殺す。そして、私の指に掛けられている指輪にちょっとした操作をするだけでも、魔法少女を殺せる。つまり、魔法少女に逃げ道はないということだ!!!!」
「え…うそ…」
「嘘じゃないよー?ジェーニンが許さない限り、魔法少女はやめられないんだよ〜」
「それって…」
ジェーニンとレンレンの声が一致する。
「「逃げられないということ」」
「そ…そんな…」
私は足の力が抜け、膝が地面に着く。
「どうして…なんで…」
「ごめんね…今、魔法少女連合や、秩序保安委員会は新たな高レベルのヒーローを求めている。だから、奏音みたいなレベルの高い人材を安安とは見逃せないんだよ…」
私のレベルを測定器にかけたところ、どうやらレベルは18らしい。
レベル18。
それは世界に9人いると言われているトップレベルのヒーローと同じくらいのレベルに位置すると言う。
世界のトップヒーローは20レベルのシャイニーと言うヒーロー。
TVで見ていた存在と肩を並べるように、まで私は来てしまったらしい…
だからって…だからって…
「ならば、こうしよう。君がこの世を平和にしてくれたなら魔法少女を辞めても良い。」
「それって…」
「現在の全世界の平均指定特殊駆除対象の出現率は年間、500万程度。それを1000程度まで引き下げられたら魔法少女を辞めても良いものとしようじゃないか。」
「ジェーニン…流石にそれは無理があると思うけど…」
「無理を超えてることができるのが魔法だ。魔法少女とはそう言うものだ。」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。本当だ。約束しよう。ついでに契約書でも書こうじゃないか。」
そういうと、ジェーニンさんは、手のひらからマジックの様に急に契約書の様なものを取り出した。
「ここにサインしてくれれば約束しよう。」
でも、よく考えてみるけど…トップヒーローでもできないことを私ができるだろうか?
「まあ、奏音なら、伸び代がまだあるかもね。」
「え?それって…」
レンレンが宙を舞いながら、「まあ、もしかしたら、できるかもって話。犯罪=確実に逮捕ってな感じだったら確実に行けるね。秩序を保つ、その柱になれば良いんだよ!!」
「私が秩序の柱…」
腰にぶら下げていた魔法のステッキを見る。
私なら…いけるのかな…
でも…私なんかが人の命を背負うなんて…やっぱり到底無理かも…
「さあ。サインをするんだ。」
ジェーニンにペンを握らされると、手が震えてきた。
「奏音…怖いの…?」
「だってやっぱり__」
私が言いかけた瞬間、
「ジェーニン様!!!!大変です!!!!」
と大きな声が暗躍の部屋の中に響いた。
「こんな時に…どうした!!!!」
「日本の起眞市にレベル18相当の怪獣が出現しました!!!!!」
「レベル18だと?」
「秩序保安委員会より直ちに坂間絵里を出撃させろとのことです!!!!」
日本のトップヒーローは坂間絵里。彼女の最高レベルは16。
「やむを得ん!!!!魔法少女、奏音!!!今すぐ起眞市に行き、指定特殊駆除対象を討伐してこい!!!!」
「え!?わ、私ですか!?」
「もはや、レベル18と互角に戦えるのはお前しかいない!!!早く行くんだ!!!!」
「で、でも私じゃ…」
私じゃ…できないかもしれない…
他のヒーローたちに任せた方が賢明なのかもしれない…
「お前しかいないんだ!!!!!!史上最高の坂間絵里の代わりとなり、坂間絵里を超える存在はお前しか居ない!!!!!」
「そうだよ!!奏音!!!早く行かないと!!!救える命も救えないよ!!!!!」
私じゃ何もできないかもしれない…
でも…
もしかしたら…何かできるのかもしれない…!!!
「わかった!!!協力を要請しておく!!!!起眞市在住の魔法少女を派遣しろ!!!!」
「りょ、了解です!!!!」
「お前と共同で行動する様に言っておく!!!!さあ!!行くんだ!!!!!」
「んんんんんんんんん!!!!!!!!あああああああああもう!!!!!わかったよ!!!!!!!行くしかないんでしょ!!!!!!」
私は髪をぐしゃぐしゃに掻きながら言った。
「そうこなくっちゃ!!」
すると、レンレンは私を光の柱の中に呑み込ませる。
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「今日…奏音来なかったな…」
俺、最上霧矢は学校の帰り道、とぼとぼと一人だけで帰り道を歩く。
住宅街の家々のコンクリの道を通り帰る。
道のりを通るのは一人で、行き先はなんの変哲もない、ただの自宅。
最近、怪獣被害とかひどいらしいし、何もないと良いんだけど…
と、ここでふと、空を見た。
空には細い雲がいくつも通っており、そこに太陽の光が反射して、良い塩梅に綺麗な景色を作っていた。
俺はポケットからiphonを取り出し、その空の景色をカメラの中に収めた。
すると、細い雲に混じって、白い光の様なものが流れてくる。
「ん?隕石?」
隕石の様なものは、こちらの方へ、地面へと向かって降ってくる様に見える。
「ん?あれ大丈夫か!?!?」
次の瞬間、光は数キロ離れた先の地面へと堕ち、ともに激しい爆発と光を放出する。
俺は襲いかかる爆風によろけながらも、顔をガードするように両腕をクロスする。
「な、なんだあれ!?!?」
光の放出が止まると、住宅街の家の向こうに居たのは赤い皮膚を纏い、口を大きく広げるまるで恐竜の様な見た目をした怪獣だった。
「あれは!?」
「グアアアアアアああああああああ!!!!!!!」
大きな雄叫びを吐き、鼓膜が破れそうになる。
そして、その赤い怪獣は、何やら口から赤い光の様なものを漏らすと、ボォウ!と赤い大きな火柱が怪獣の口の中から広がり、あたりを一気に真っ赤な火で埋め尽くす。
「え…えぐ…」
住宅街が一気に火によって燃やされ、全て焼き尽くされると、怪獣は少し移動する。
「そこの君!!早く逃げてください!!ここは被害範囲内です!」
後ろから声がしたので、踵を返すと、そこに居たのは、ファンシーなドレスに身を包んだ少女…って、え?
「ん?もしかして…霧矢くんですか?」
「Vさん!?」
そこの居たのは、ヒーローの魔法少女の格好をした、部活の先輩、Vさんの姿があった。
「参りましたね…まさか知り合いがいたとは…」
Vさんは住宅街の屋根に乗り、右手には魔法のステッキ、左手には魔法のホウキの様なものを持っていた。
「あまりこのことは誰にも言わないでくださいね!!!特に部活の後輩とかには!!!」
そう言うとVさんはホウキに乗って、怪獣のところへと向かって行った。
「ま…まじか…V先輩が…魔法少女…」
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目を開けると、光は無くなっていて、いつもの風景、起眞市に戻っていた。
でも、一つだけ違ったことがあった。
それは赤い鳥型の怪獣が起眞市の住宅街を火の海にしていたことだ。
「そ…そんな…!!あれを倒さないとなの!?」
「そうだね…難しいかもだけど…きっといけるよ!!!!奏音なら!!!」
私なら…行ける?そんなことあるのかな…
前回よりもレベルの高い怪獣。
そんなのを相手にできるかはわからない。
でも、魔法少女として、仕事を遂行しなければ、私は死んじゃうし、それにこれからもっと死者が出てしまうかもしれない。
私がやらないとなんだ!!!
「わかった…行こう!!!」
私は覚悟を決め、魔法のステッキを握る。
「奏音、その意気だよ!!」
魔法のステッキを頭上に掲げ、「変身!!」
魔法のステッキが光を放つと、魔法少女の衣装へと一瞬で変身する。
まるでどこかのお姫様の様な衣装を身に纏うと、レンレンが、「あ!」と空を指さした。
「あれが先輩の魔法少女って人?」
私が言いながら空を見上げると、真上に、魔法のホウキを乗りこなしながら地面へと近づいてくる人影があった。
そして、地面へ着地すると、その人は慌てた声で、「私は魔法少女連合、所属のヒーロー、Vです!援護に向かいましたって…奏音ちゃん?」
なんと、そこにいたのは、美術部の先輩。Vさんだったのだ。
「ぶぶぶぶ、V先輩!?な、なんでここに!?」
私は驚きのあまり、空いた口が塞がらない。
「か、奏音ちゃんこそ!!何故ここにいるんですか!?早く避難を…」
「待って待って!!この奏音がレベル18の魔法少女だよ!!!坂間恵留の代わり!!」
「れ、レンレンさん!?何故、奏音ちゃんに!?」
「わ、私…その…魔法少女になったの…ついさっき…」
「そう!!奏音は魔法少女になったんだよ!!!それより早く!!!」
レンレンは自分の頭も掻けなさそうなの小さな手で赤い皮膚の鳥型の怪獣の方向を指さすと、早く早く!と私たちを急かす。
「ううううん!!!!!この話はまた今度!!!早く怪獣を仕留めましょう!!!!私のホウキに乗ってください!!!!」
「え!?あ、はい!!!」
Vさんはホウキを横に浮かして、バイクに跨ぐようにして乗る。
Vさんはホウキの先端を握り、私はVさんを後ろから抱いて固定し、乗った。
自転車で二人乗りをするようにして二人が乗ると、Vさんは「しっかり捕まっててください!!!!」と言うと、とんでもない勢いで、まるで打ち上げ花火のように真上へと急上昇する。
「ぐあああああぁぁぁあぁあぁぁぁああぁ!?!?!?!?!?」
ああああ…目がぁ…目がぁ…
「奏音ちゃん!!気をしっかり!!!!」
「う…うぅ…って…うわあああああああああ!!!!!!」
気づくと私は、100m程だろうか。
足がすくむくらいに上空へと飛び立っていた。
ビル群と並びながら空中を飛び回る。
「さらに高度をあげます!!!捕まってください!!!!!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいよー!!!!!!!」
ぐん!!とまたもや重力が襲いかかりながら、ビルの屋上よりも高い位置で飛んでいた。
「無理無理無理無理無理ですよ!!!!!!!!!!!」
「もう来ちゃったんです!!!!!行きますよ!!!!!!!!」
さらに速度を上げて、飛行機に乗っているかと錯覚させるくらいに圧力が掛かる。
「アババババババババ!!!!!!!!!!!!!」
目の前から来る風が口の中に勢いよく突撃し、口が閉じれなくなった。
「居ました!!!!!特定怪獣!!!!秩序保安委員会の名付けた名前では、黄昏の
そんなふざけた名前つけてないで他のヒーローとか派遣してよ!!!!!!!
見ちゃいけないものだと思うけど、下を見ると、高さを感じて足がすくむ。
でもそれよりも、赤い怪獣の周りの地面から火が巻き上がる方に驚きを隠せなかった。
黒く染まった地面が1キロ程広がる、焼け野原となった住宅街は、怪獣が居る所為で消防車も近寄れず、逃げ遅れた人がいたら多分やばい。
「ひ、酷い…」
「これは1000人ほどは被害が出ていそうですね…」
「そ、そんな!?」
「ですが…私たちが来なければ、もっと…下手すれば1万は死んでいたかもしれません…早く駆除しましょう!」
「で…でも私…」
住宅街を踏み躙りながら、トワライトフェニックスは移動しながら火を吐く。
Vさんはその怪獣の頭上を回りながら、蜂のように飛び回る。
「うわあああああああ……………た、高い……」
怖い…呼吸が…息が…できなくなりそうだ…
圧に耐えられない…そのことを考えてしまえばしまうほど…
怖くなる…
「奏音ちゃん。手が震えてますよ。」
「え?」
Vさんは私の、Vさんに抱きついている手を握りしめる。
その手は優しく暖かかった。
「大丈夫です。私がついてますから。例え奏音ちゃんが落ちたとしても、私がいる限り、死なせはさせません。」
「でも…」
「大丈夫…大丈夫です。息を整えて…」
はぁはぁはぁはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…
すぅー…はぁー
「お、落ち着いてきました…ありがとうございます…」
「私に捕まっていてください!!!振り落とされないように気をつけて!!!」
すると、Vさんは一気にホウキを角度をつけて、右へと曲がる。
空中バイクに乗っているような感覚を味わいながら怪獣の頭の横を通り過ぎると、怪獣、トワライトフェニックスは、「グアアアアアアアア!!!!!!!」
と雄叫びを上げて、翼を広げる。
威嚇するように翼を広げたトワライトフェニックスは、辺りに爆風を広げて飛び立った。
「まずいです!!!!!トワライトフェニックスが飛び立ちました!!!!」
「え!?」
「グアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
「さらに速度を上げます!!!!!前傾姿勢になってください!!!!!」
Vさんの言葉を合図に私はまるでスポーツ選手が空気抵抗を減らすようにして前傾姿勢になる。
後ろを振り返ると、そこには30mほど後にトワライトフェニックスの姿があった。
「奏音さん!!!今です!!!!撃ち落としてください!!!!!!」
「で…でも…!」
「奏音さん!!!あなたならできます!!!自分を信じて!!!!」
自分を…信じて……
「わかりました!!!やってみます!!!!」
「ガアアアアアアア!!!!!!!」
狙いを付けて…今だ!!!!!
「メルトシンギュラリティ!!!!!!!」
私が、魔法のステッキを後ろから迫り来るトワライトフェニックスに向かって放った。
呪文後詠唱後、即座に魔法のステッキから光と共に灼熱の熱線が放たれる。
灼熱の熱線、メルトシンギュラリティは一直線に魔法の魔法のステッキの向く方向へと放たれたが、少しずれた所為で、トワライトフェニックスには掠りもしなかった。
「駄目!!!!できない!!!!」
「諦めず、もう一度!!!!」
そうだ…まだ…まだできる!!!!
まだ死んでいない…!!!!!私が生きてる限りまだ!!!!
「メルトシンギュラリティ!!!!!」
放たれた熱線、しかしトワライトフェニックスが危険と感じたのか、いきなり、トワライトフェニックスは高度を急に下げ、そして熱線を回避した。
「ん!!!!!知能がある!!!!」
すると、トワライトフェニックスの口の中が徐々に赤く光始める。
まずい。攻撃が来る!!!!!!!
「メルトシンギュラリティ!!!!!メルトシンギュラリティ!!!!!!」
私は何度も唯一の攻撃、メルトシンギュラリティを放ったが、空中戦ということもあって、1発も掠らない
当たれ!!!当たれ!!!
「メルトシンギュラリティ!!!!!!」
駄目だ…当たらない…
「もう駄目かもしれないです…」
私が涙ながらに言うと、すぐにVさんは「タイミングです!!!」と言った。
「奏音ちゃん!!!!!何事も、大事なことがあります!!!!!!今の場合、それはタイミング!!!!!今から私のホウキは高度を上げていきます!!!!なので、トワライトフェニックスは必ず、首の向きの関係から上へ向かおうとするはずです!!!!その高度を挙げている時に撃つんです!!!!翼でも胴体でもどこでも良い!!!撃つんです!!!当たればきっと、確実にトワライトフェニックスは墜ちます!!!!!!!!」
た、タイミング!!!!!
「今から高度をあげます!!!!奏音ちゃんは確実に落とせるように狙ってください!!!!!」
「は、はい!!!!!」
私は自分の脇から視線を通し、トワライトフェニックスの胴体を狙う。
ちょっとずつ高度が上がっていく。そして、それに釣られてトワライトフェニックスの高度も。
どうやらトワライトフェニックスはもう準備万端のようで、口から少しだけ火を漏らした。
「もう少し…もう少し…」
「グアアアアアア!!!!!!!!!」
もう少し…もう少し…
バサリバサリとトワライトフェニックスの翼を空気が持ち上げる。
そして、一瞬だけ、トワライトフェニックスの翼がピタリと止まった。
滑空の瞬間。
やるなら…今!!!!!!!
「メルトシンギュラリティ!!!!!!!!」
強力な光を放ちながら、熱に包まれた灼熱の熱線が魔法のステッキから放たれると、その熱戦は、トワライトフェニックスの翼に向かって一直線に向かい、そして、トワライトフェニックスの翼を貫通。
追加で、トワライトフェニックスの貫通した場所からクラスター爆発が起き、トワライトフェニックスは「ギャアアアアアアアア!!!!!!!!!」と泣き叫びながら雲の下へと消えた。
「や、やった!!!!!!!やりましたよ!!!Vさん!!!!!私やりました!!!!!!」
私が喜んでいると、トワライトフェニックスの最後を見ていたVさんが少し苦い顔をする。
そして、その顔は段々と焦りの顔へと…
「まずいです!!!!!もしかしたらまた、生きたまま街に墜落してしまうかも!!!!!追いましょう!!!!!!!」
「はい!!!」
魔法のホウキに乗った私たちは急下降し、トワライトフェニックスを追うといつの間にか起眞市に戻ってきた。
それも、燃やされた住宅街の周りへと。
「まずいですね!!!!!もしかしたら逃げ遅れた人たちのところに行ったのかもしれません!!!!!」
「そ、そんな!!!!!!!!」
「最高速度で行きます!!!!!!!しっかり捕まって!!!!!」
「へ、へぇ!?!?」
__________________________________________________
起眞市立高等学校、体育館内。
まさか…避難所がこことは驚きだった。
「さっき帰ろうとしたばっかなのに…また戻ってきてしまった…」
起眞市には対怪獣用の特設避難所がまだないため、避難所(震災時などの)として起眞高の体育館が用いられているわけだけど…
いまいち、俺はこの体育館に信頼性を置いてない。
なぜなら、この体育館、至る所からGの死骸が出るし、なぜか前は体育の授業にネズミが出て大騒ぎしたし…ぶっちゃけ古いと思っている…
「そろそろリフォームしねぇのかな…」
体育館以外は普通に新しい校舎な訳で、そこに関しては文句はない。
なぜなら最高だからだ。
だが、ここが避難所となると流石に話は別。
Gやらネズミやらが出るところで一日、泊まるなんてそれこそ無理難題な訳で…
ドオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!
次の瞬間、体育館の一つの壁が破られ、天井から、血まみれの先ほどの赤い怪獣が現れる。
「え…?」
「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」」」」」
悲鳴が体育館に鳴り響き、先程まで座っていたくつろいで居た人たちが急になだれ込むように壊された壁の反対方向の出口に向かって走り出す。
「あれは…!!!か、怪獣!!!Vさんは!?」
「グフゥゥゥゥ…」
そう言いながら、火を口から漏らす鳥型の怪獣。
足が動いた人は良かったと思う。
俺は違った。
足が動かず、それどこか足に力が入らなかったので、尻餅をついてしまった。
「逃げなきゃ…」
小さく呟くも本の力は入れられない。
怪獣は、口を大きく開けると、口の喉の中に火の強大なパワーを溜め始めた。
逃げなきゃ…
そして、最大値に達したようで、パワーの溜まり方が止まる。
し、死ぬのか?俺は…
こんな所で!!!
くそぅっ!!!!!!
どうせなら…みんなに一言くらい…言ってから死にたかった!!!
俺は覚悟のつもりで、目を瞑ろうとしたがその時、怪獣の前に一人のピンク色のドレスを纏い、黒髪ロングヘアーで、とても奏音に似ている人が立っているのが見えた。
あの人。
危ないな
そう思った瞬間。
女の子の手元から、一つの白い光が放たれた。
そして次の瞬間、戦車の砲撃の如く、一本のビームが放たれる。
体育館全体に爆風を撒きあげると共に、ビームは一直線上にあった鳥型の怪獣の喉を突き刺し、血飛沫を上げさせる。
そして血飛沫が地面に着くよりも先に怪獣に追い討ちをかけるように、ビームが貫通された箇所が、大きな爆発を起こし、先程まであった筈の怪獣の首が吹っ飛んだ。
体育館に怪獣によって遮られていた太陽の光が差し込む。
そして怪獣が現れた時とは違う新たな光によって、俺は目を薄める。
怪獣が現れた時、放たれた光からは絶望しかなかった。
しかし、今のひかりはまるで希望を示唆しているようで…
「ひ、ヒーロー…」
俺はあることに気づき、何故か大声で
「ヒーローだぁぁぁ!!!!!!!!!」
と体育館全体に響き渡す。
すると、「ヒーローだ!!!ヒーローだ!!!!!!」と喜びの声が至る所で連鎖した。
「ヒーローが助けに来てくれたんだ!!!!!!!」
「つ、強すぎだろ!!!!!!!!!!!」
「良いぞヒーロー!!!!!!!」
そして、次の瞬間、横から体育館の横を何かが過ぎ去るようにして、そのヒーローはどこかへ消えていってしまった。
「ふう…緊張した〜…」
「お疲れ様です。奏音ちゃん。」
そして、突如として現れ、18レベルの巨大怪獣を一撃で倒したヒーローは後にこう呼ばれることとなった。
「とりあえず…救える命は救えて…よかった…」
『魔法少女、
トワライトフェニックス レベル18
死者、637名
怪我人、2042名
戦死者、0名
突如として住宅街のど真ん中に出現した鳥型の巨大怪獣。
あたりを燃やし尽くす火を口の中から発射可能であり、広範囲による被害を出すことができる。
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