魔法少女、魔法が強すぎて無敵すぎた件

最悪な贈り物

第1話 私は魔法少女!

この世界は、欲望で渦巻いている。


悪人たちが、好き勝手に暴れ、他の人よりも己の有利な物を勝ち取って言いる。


金、権力、土地。


全てに置いて、武力を使い弱い者を虐げ、強い物は有利に立ち回る。


どれだけ根性が腐っていても、力さえあれば、どうにかなる。


そんな世界を変えてくれたのは、ある、たった一人の少女だった。


その少女は人類からこう言われた。


魔法少女、と。





「はぁー…可愛い…」

スマホの画面の中には、1匹の猫。

私の名前は小林奏音コバヤシカノン


くるりくるりと床を寝っ転がって地面を存分に満喫している。

私はそんな子猫ちゃんに一目惚れしていた。


「奏音ちゃん何それ?」


「ん?これ?これはねぇ〜猫ちゃんだよ?」


私の席に集まっていた、私の親友、アズリア・ラングレーが私のスマホを覗き見る。

アズりんは、頭の両サイドに作っている髪の輪っかをゆらゆらと揺らしながら、顔を、画面に近ずけた。


「ん〜アズりん見えないよ〜」


「奏音ってそういうの見るんだな。」

横の席から私に話かけた男の子は、最上霧矢モガミキリヤくん!!!

片目が髪で見えないっていう、すごい髪型の人!!


「奏音もそういうのは見るっしょ。最近の女の子なんだしな!」

そして、霧矢くんの後ろにいた男の子が、卜部隆一ウラベリュウイチくん!

いつも明るくて、元気な子!!


「私だってこういうのくらい見るよ!それに、可愛いでしょ?なんか、まったりしてるところが、アズりんに似ててさ!」


「アズリアに?そうか?」


「え〜隆一くん、私の良さってわからないの〜?」


「アズリアの良さっつったら、やっぱり…まったりしてるところとかか?」


「それって良さなのか?」


「まあ、可愛いんだし!いいんじゃないかな?ねぇ〜、アズりん!」


私はアズりんの顎を撫でる。


「んふふ〜」


キーンコーンカーンコーン!


「あ!やべ!!授業が始まる!!!」


「先生に怒られる前に早く自分の席に戻らないとだね〜」


なぜか、隆一くんは、素早く移動したが、アズリアはその後を追うようにして、ゆっくり、マイペースに自分の席に戻った。


「それじゃあ、授業を始めるぞ〜」


先生の声が響いた後、日直の人の声も響いた。

1限目の授業が始まった。


ん?


私はふと、外を見ると、流れ星のような物が落ちるのがうっすらと見えた。


「ん?なんだろ…あれ。」


「どうかしたか?」


霧矢くんが、私の独り言に気づいたようで、私は、窓の外の流れ星のような光を指差して、「霧矢くん!あれって…」


「ん?え、どれだ?俺には何も見えないけど…」


「え?そう?」


「ほら小林〜、座れ〜」


「あ、はい!!」


先生に注意され、私は座ると、ひそひそ声で霧矢くんに、あの流れ星だよ!!と、行ってみるが


「流れ星?そんなのあるか?俺には、見えないけどな…」


え?見えるのは私だけ?

と考えていると、いつの間にか、流れ星は、消えていた。


「あれ?なんだったんだろう…」






放課後…


今日は久しぶりに、喫茶店のバイトも部活も休み!!!


家帰ったら何しようかな〜


私はそんなことを考えて、ビル群の中を通り抜けていく。

歩道が整備され、ビルには、カラオケやスナック店などの看板。


まさに都会を表すような、街並み。


並木を眺めながら歩く私は、家に着いたら何をしようか、想いを馳せてみる。


ドオオオオオオオオオオン!!!!!!!!


すると、唐突に、目の前のビルが、いきなり崩れた。


「え!?な、なになになになになに!?!?!?」

いきなり崩れた瓦礫の山の下には、多分だけど、通行人がいたと思う。


「グワァァァァァァ!!!!!!!」


すると、ビルを破って出てきたのは、黒い毛で包まれ、赤い目が輝き、鋭い爪を持った大きな怪獣だった。


「に、逃げろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


周りの通行人の人達が、怪獣と反対方向に逃げて行く。


「うわ!!」

私は、必死になって流れ込んでくる群衆にぶつかり、地面に腰が打ち付けられた。


「痛!」


「グァァァァァァァァ!!!!!」


怪獣は、再び咆哮を周囲に響かせると、あまりの振動にビルのガラスが砕け散り、目の前に居た人たちにガラスの破片が刺さった。


「ぐはっ!!!!」


「痛っ!!!!」


私は、腰を抜かして、低い姿勢になっていたことから、他の人にガラスがあたり、運良くなのか、私にはガラスの破片が刺さることは無かった。


「だ、大丈夫ですか!?」


そ、そんな!!!


私には、ガラスは刺さらなかったが、その代わり、周りにいた人たちから、大量の血液が飛び散る。


「痛ぁ…!!!」


目の前に倒れた女性は、脇腹を押さえて、傷だらけになってうずくまっている。


「あ、あ!!!」


女性は私の後ろを指差し、目を大きく広げ、あっぽん口を開けていた。


それままるで、恐ろしいものを見て怯えているかのように…


「うわぁぁぁぁぁ!!!!」


後ろには、赤い目をこちらに合わせて見つめる大きな怪獣。


そして、怪獣の足には、ガラスの破片によって逃げられなくなった人だったのだろうか。


下半身がなくなり、目の輝きを失っている。


し、死んでる…


恐怖が背中を走った。


体の震えが止まらない。


まるで、蛇に睨まれた蛙のように。



「グァァァァ……」


怪獣の吐息が正面から吹きかかる。


怪獣は口を広げると、口の中の牙が光ったのが確認できた。


動いて!!!!

お願い!!!!!


私、動いて!!!!!


なんで!!!!

なんで動かないの!!!!!!





ボォォォォォォン!!!!!!





次の瞬間、とてつもない風圧と共に、怪獣が真横にに吹っ飛び、ビルへと衝突した。


目の前には、怪獣の姿はなく、そこには壊れ果てた、道路があった。


「え?」


「あ!よかった!!!無事だったんだね!!!」


声のする方向を見ると、そこにはピンク色のファンシーなドレスを身に纏い、短い手鏡のような、丸い鏡がついているステッキのような物を持った、女性が居た。


「グ…グァァ…」


あれは…ヒーロー…?


「大丈夫ですか!?」


すると、今度は後ろから、黄色のドレスを着た、女性が駆け寄ってくる。


「あ、はい…だ、大丈夫です…私は…あ!この人が!!!」


「うわ!!すごい傷ですね…待っててください!!いますぐ治療しますので!!!」


そういうと、いつの間にか私の腕の中で気絶した女の人を、こちらもまた手鏡の様なステッキを使って、「ヒール」と言いながら緑色の光を放つ。


「これって…」


「魔法です!!!!私たちは、秩序保安委員会の物です!!!」


「秩序保安委員会…!」


秩序保安委員会。


それは、異能力や、DNA改造。そして、異星人や、凶悪武器などを使って、世界の秩序を壊そうと企む連中に裁きを下す。

いわゆる、正義のヒーローの様な存在らしい。


「あなたたちが…!!」


「もう!!私らが来たからには安心してください!!あの、怪獣は、レベル3…彼女は、レベル7まで討伐可能の、超エリートヒーローです!!私たち、魔法少女連合1の実力者!!あの方にこの場は任せて、私たちは早く逃げましょう!!!!」


「わ、わかりました…!!!」


黄色のドレスの人が、治療を終え、気絶した女の人を背負うと、「早く逃げましょう!!!!」と行って、怪獣から離れようと、走る。


私もその背中を追うようにして、足を動かした。


「あの人って、もしかして、坂間絵里さんですか…?」


坂間サカマ絵里エリ

それは、魔法少女連合の抱える最高戦力の魔法少女。


噂に聞いたことがある。

どんな怪物も、その少女の手にかかれば、全て灰になるだろうと。


「はい!!!そうです!!!だからあの人は無敵なんです!!!私の尊敬している人でもあるんです!!!!だから!!!きっと大丈夫です!!!!」


「そうなんですね!」


目を輝かせて言う女性は、とても、希望に満ちた表情をしている。


きっと大丈夫なんだ!!!

この人が言うんだったらきっと!!


私は後ろを振り向く。


そう。この声援を届けるために。


「が、がんば…」

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!


ビルの割れる音。


とてつもない轟音の後に、町の中に立っていたのは、怪獣と、怪獣の手のひらの上で倒れている、坂間絵里の姿。


「え…」


その絶句の言葉を漏らしたのは、私ではなく、黄色のドレスを包んだ女性。


そして、倒れた坂間絵里を口の中に入れ、口の中の牙を使い、坂間絵里の肉体を食いちぎると、怪獣の口の中が、赤い血に染まった。


「え?絵里…さん?」


黄色の女性は、背負っていた女性を、一度、その場に下ろす。


「え?そ、そんな…だって…レベル3だって…」


すると、電子音が黄色の女性から流れだす。


『分析結果。レベル9…10…11…レベル上昇中…レベル14。分析結果レベル14。戦闘につれて、レベルが上昇している様です。退散を推奨します。』


「ど、どうすれば…」

逃げる?

いや、私が走って逃げれる訳がない…


「……ッ!!!!私がここで食い止めてみせます!!!!早く逃げてください!!!!」


「で、でも!!!!」


「良いから早く!!!!」


女性は、強めの口調で、言うと、魔法のステッキを目の前に掲げ、怪獣の赤く光る目を睨んだ。


「わ、わかりました!!!!!」


女性は、ニコっと笑うと、笑顔で、

「ありがとうございます。」

と言った。


「ふぅ…うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」


グチャア!!!!!!!


液体と、物質が潰れる様な音。

さっきまで女性が居たところには、怪獣の手。


人間が虫を叩き潰す様な、圧倒的無力感。


睨まれる私。


震える足。


目の前で消えた無意味な命は、無惨な肉塊にとなり、ペンキを落としたかのように、赤い液体が道路上に散らばっている。


「あ…え…」


死んだ…

ど、どうすれば…


周りを見る。


少し遠くの方に、坂間絵里が使っていた物だろうか。

手鏡サイズの魔法のステッキが転がっていた。


あれだ!!!!!


あれ?足が動かない…


まだ…怖がっている…


人が死んだのに…


私たちのためだけに2人もが死んだのに…


私は怖くて動けないまま…


人の生きた意味を…無駄にはさせたくない!!!!



動いて!!!!私の足!!!!


地面に磁石のように重たい足を、持ち上げ、一歩を踏み出すと、私は、その勢いを殺さずに、足を動かした。


あともうちょっと!!!!!!


怪獣は、うまいこと、私のことをずっと見つめている。


どうやら、気絶したあの人には、見向きもしていないよう。


帰って都合が良い。


ここだ!!!私は、地面に落ちた魔法のステッキを、取ると、魔法のステッキは、持ち手の先についた、ハート型のアクセサリーが輝き始める。


あれ…そういえば、どうやって使うんだろ…


「ほわ〜…よく寝たなぁ〜…って?あれ?エリは?」


え?だ、だれ…?


すると、ステッキからふわふわの獣のような丸い生物が、出てくる。


丸い生物は何故か宙に浮いていて、その場をくるくると、回っている。


「え…あなた誰!?って…そんなことは良いや、このステッキの使い方を教えて!!!!!」


「うーん?なんだ?えりじゃないな〜エリはどうしたの?」


「え、えっと…そ、それより早く良いから!!!魔法のステッキの使い方を教えて!!!!!」


「え?じゃあ、エリがどこに行ったのか教えてくれたら、こっちも教えてあげるよ〜」


「え、え…エリさんは…今、死にました…」


「え?ど、どういうこと?」


「この怪獣に、殺されました…」


「そ、そんな…エリが…?」


私は黙って頷く。


「そ、そんな…うぇぇぇぇぇぇん!!!!!そんな…エリが!!!!!」


「な、泣いてる暇ないんだって!!!!早くこのステッキの使い方を!!!!って!!うわあああ!!!!」


ドオオン!!!!!


怪獣が手を振り下ろし、こちらへと攻撃してきた。

私は運よく、回避することができたが、瓦礫が鳩尾に当たって、激痛が走り、目の前に昼ごはんを吐き出してしまう。


「ぐはぁ…」


「あ!!!!だい、大丈夫…?」


「早く…使い方を教えて……!!!」


獣は、泣いていた涙を、拭き取る。


「そ、その魔法のステッキは…魔法少女に認められた人しか使えないんだよ…」


「え?選ばれた人だけ!?」


「うん…」


獣は、残念そうに言うと、何かに気づいたようで、「あ!君には、魔法少女の素質があるみたい!!!使用できるよ!!!!」

と告げる。


「え?ほんと!?じゃあ、どうやって…」


その時、目の前にピコン!!と音を立てて、異世界物によく出てくるステータスウィンドウの様な、物体の掴めない透明なまな板の様なものが目の前に出てきた。


そこには、文字が刻まれていた。

『魔法、メルトシンギュラリティを獲得しました。魔法名を発言することによって、発動することができます。』


「こ、これは…?」


「えっと…どうやら魔法を獲得したみたい…君が本当に魔法少女として認められたんだね…」


「グアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」


すると、急に怪獣が、怒りを見せるようにして、いきなり手を振り下ろしてくる。


死んじゃう…!!!!!!


私は急なことで、目を瞑り、覚悟した。


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン


目の前は真っ暗で何も見えない…


ついに、死んじゃったらしい…


ごめんね…霧矢くん…アズりん…隆一くん…


私もう…戻れないよ…


「ねえ!!!君!!!!!」


「え?」


私は暗闇から解放された。


どうやら少しの間、気絶していただけだったようだ。


目を開けると、そこには、両手に握られていた魔法のステッキと、私の目の前でドロドロになって溶岩の様に溶ける、怪獣の姿だけだった。


怪獣は、巨大な大砲を撃たれたかの様に、私の目の前の部分だけが、丸くくり抜かれたように溶けていて、とても威力の強い何か、ビーム光線の様な物が命中した様に見える。


「こ、これは…?」

尻餅をつきながら、獣に向かって問う。


「な、なにを言ってるの…?君がやったんじゃん!!」


「え?私?」


「どうやら、君が新しい魔法少女みたいだね!!!」


「え?わ、私が…?」


「推定レベル28の魔法少女だよ!!!!」


推定レベル28…?


それって…


「敵なしの魔法少女だよ!!!!!」


「え?そうなの…?」


こうして、私の魔法少女、人生が始まった。

よくわからないふわふわの獣、レンレンとの新たな戦いが今、始まったのだ。





レベル19、ブラックモンスター

死者、34名

怪我人、154名

戦死者、2名


秩序保安委員会の抱える最高戦力の一つ、坂間絵里を捕食し、都市を壊滅させる能力を保持していると推測された怪獣。

どこから出現したのか、出現理由、その他諸々不明とされている。


何かのエネルギーを追い求めて活動し、エネルギーを摂取することによって、徐々に強力化することが確認されている。

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