ロマンス・ファンタジック・カリヴィエーラ~転生令嬢、魔王を封印せよ~
伊藤沃雪
序章 処刑
「イルマ・ハミルトン。この者の命を聖なるラユの地に捧げん……」
暴風雪が狂ったように吹き荒れる中、処刑人が抑揚のない声で宣言をする。
わたしは……イルマは手足を拘束されて、極寒の地の断頭台の下へ平伏していた。もともと着ていた防寒着も剝ぎ取られて、貫頭衣一枚しか着ることを許されなかった。歯ががちがちと鳴り、全身が震えて感覚が無くなっている。
だが何よりイルマには、裏切られたという絶望の方が苦しかった。凍り付くだけと分かっていても、壊れた涙腺からはとめどなく涙が溢れた。断頭台のすぐ傍に立ち、イルマのことを見下ろしている、大魔女、魔族、それから金髪碧眼の身なりが良い男。
「ヴァイ、どうして。どうしてなの──」
顔を上げることすら許されず、イルマは悲痛に呻いた。ヴァイ、と呼ばれた金髪碧眼の男はちらりと一瞥するだけで応えようとはしない。ただヴァイの表情は苦悶に染まり、飛び出しそうになっている激情を呑み込まんと耐え忍んでいるようだった。
イルマとヴァイの想いが通じる間もなく、あっさりと断頭台の刃は落ちた。ごうごうと吹き荒れる暴風は、命の終わりを告げる音さえも掻き消していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます