社会人女性VTuber、身に覚えのないデマで炎上する!~炎上しても特異体質でピンチを乗り切ります。後悔しても、もう遅い!!!!~【短編】
琴珠
短編
「じゃあ、今日はこの辺りで配信を終わりにします!」
社会人の女性がパソコンの前で元気に挨拶をする。
それと合わせるように、画面右下に表示されたイラストが動く。
そう、この女性はVTuberなのである。
~コメント欄~
・おつ!
・今日もかわいかったよ!
画面のコメント欄には、【
いや、違うか。
本名は上記の通りだが、VTuberとしては【カミリン】という名で活動している。
ファンも多く、中々に人気のVTuberである。
だが、翌日事件は起きる。
◇
「何これ!?」
本日は日曜日。
楽しい休日が始まると思っていたのだが、そうはいかないようだ。
『VTuberカミリン! まさかの不倫!? 2股をかける女性だった!』
このような記事が、SNSであるエーックスに投稿されていてバズっていたのだ。
勿論、神未はそのようなことはしておらず、全くのデマ情報だ。
「嘘……」
思わず、彼女の特異体質が発動しかける。
だが、それを必死に抑える。
しかし……。
・カミリン最低……
・クズだな
・グッズ売るわ
・前からそんな感じはしてた
そんなコメントがエーックスに並んでいるのを見ると、自分の力を抑えられない。
「許さない……!」
彼女は幼稚園の頃、自身の特異体質に気づいた。
その特異体質とは、【怒りを力に変える】といったものであった。
最初は力をセーブできなかったが、小学校入学する辺りで力をセーブすることに成功する。
その後はなるべく怒らないように、例え怒ってもその体質による能力が発動しないように努力をしてきた。
だが、今回は流石に我慢の限界だったのだ。
「許さない……許さないっ!! たああああああああああああああああああああああっ!!!!」
彼女は叫ぶと、周囲の空気中に青白い電気がバチバチと弾けていた。
能力を発動すると、あまりの力に周囲の空気に稲妻が走るのだ。
「潰す!」
神未は、エーックスの誹謗中傷をしてきたアカウントの内の1つに、意識を集中させる。
「お前……っ!」
「だ、誰ですか!?」
彼女にはもう1つ能力がある。
それは、SNSのアカウントを通じて、そのアカウントの持ち主の元へと瞬間移動をするというものだ。
神未の前には、おそらく社会人であろう、ごく普通の男性がパジャマ姿で座っていた。
「お前、私の悪口書いたよなぁぁぁぁぁ!?」
「な、なんのことですか!? というか、貴方は一体……!? それに、その空気に稲妻を走らせる程の力……一体どこで!? ただ者ではないと思いますけど!?」
「私はカミリンだ」
「カミリン!?」
「ああ。お前が私に誹謗中傷をしたのは知ってるんだ!」
「誹謗中傷!? だ、だって事実ですよね!? 貴方は浮気をした!」
「してない! してなあああああああああああああああああいっ!」
神未は更に怒りを解放させると、床が凹み周囲の家具がボコボコに潰れる。
「ひ、ひぃぃぃ!」
「お前もこうなりたくないなら、すぐに投稿を消すんだな!」
「わ、分かりました!」
このような感じで、誹謗中傷した者の元へと瞬間移動しまくり、投稿を削除させていった。
かなりの時間がかかったが、閲覧数の多い誹謗中傷投稿は、大体削除させることに成功した。
そして、今回の黒幕が判明するのであった。
「お前か」
瞬間移動をした神未は、銀髪ロングの男性……今回の事件の黒幕とされる人物を睨みつけた。
「へっ! バレちまったか! ここじゃなんだ、場所を変えるぞ!」
2人は、人が寄り付かない廃工場へと場所を移した。
「へっへっへ! それにしてもすげぇな! 誹謗中傷の投稿を消しちまうなんてな!」
「そんなことはどうでもいいだろ。さっさとあの情報がデマだと拡散しろ!」
「へっ! そう怒るなって!」
銀髪ロング男性は、神未を挑発するように笑った。
この男こそが、今回の事件の黒幕のようで、本人もそれを否定しようとはしない。
それはいいのだが……
(妙だな……)
神未は違和感を覚えた。
なぜ、今の神未を見ても驚かないのだろうか?
(他の奴らは驚いたんだけどな)
と、そんな神未の心を読んだかのように、黒幕は口を開く。
「俺も能力を持ってるんでな!」
「能力を!?」
「ああ! お前は見た感じ、【怒】が力の
「くっ……!」
完全にバレているようだ。
「俺の力の源は、【楽】だ! そして能力は! 超スピード!」
その瞬間、神未の目の前から黒幕は姿を消した。
神未から見て右側に、黒幕は立っている。
ただし、距離は遠い。
「こっちだ! どうだ? 動きについて来れるか?」
確かに、いくら神未だろうとあそこまで早くは移動できない。
「何も答えないってことは、無理ってことだよなぁ!? だよなぁ! いくらお前の怒りで身体能力を上げても、俺より早くは動けねぇ!」
「ああ、お前の言う通りだよ」
黒幕はポケットからナイフを取り出す。
神未は黒幕に背を向けた。
「降参かぁ!? もう遅いんだよ! てめぇはここで殺す!」
「それはこっちのセリフだ。後悔しても、もう遅い!」
「負け犬の遠吠えって奴だなぁ!」
神未の背中に向かって、黒幕が物凄いスピードで接近する。
「死ねえええええええっ!」
このままでは、神未は背中を刺されて死んでしまう。
だが、そんな状況でも彼女は怯えずに、クールに
「カイザー……キック!」
カイザーキックとは、特撮番組である、【仮面カイザー】の必殺技のことである。
それを真似し、後ろ回し蹴りで、黒幕の顔面にカウンターキックを食らわせた。
「ぐはあああああああああああああっ!!」
黒幕は大きく吹き飛ぶと、壁に叩きつけられ、座るような体勢でぐったりと倒れるのであった。
「俺のスピードに……ついて来れただと……!?」
「確かに、お前と同等のスピードを出すことはできない。だが、お前の動きを見切ることは私にもできる」
「そう……い……う……こと……か……よ……」
黒幕は顔をガクリと落とし、気を失った。
◇
あれから数日が経過した。
黒幕は無事に逮捕され、何もかも元通りの日常が戻って来た。
職場から帰宅すると、いつも通りパソコンを起動し、配信をスタートさせる。
挨拶を済ませた後、改めて皆に言う。
「皆! これからも応援よろしくね!」
~コメント欄~
・こっちこそ、一生推していくぜ!
・何事も無くて良かった
・カミリンの元気な声を聴けて嬉しい
「ふふっ、皆……ありがとね!」
VTuber活動だけでなく、ネットで活動をするというのは常に炎上と隣り合わせだ。
突然、自分のファンが敵に回ることもある。
だが、信じてくれる仲間もいる。
それを改めて実感した、神未なのであった。
社会人女性VTuber、身に覚えのないデマで炎上する!~炎上しても特異体質でピンチを乗り切ります。後悔しても、もう遅い!!!!~【短編】 琴珠 @kotodama22
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます